愚行連鎖   How To Play Ragtime Guitar

このテキストは四国の前田さんのご厚意で Acoustic Guiter Home Page より、一部編集、転載させていただきました。
(文章、内容については手を加えていません。)

 ここで使われるTab譜はテキストで書いたもので、現時点では標準的なものがありませんので、こういう形を採っています(「Tab譜について」を参照)。
 Tab譜を見るときはノンプロポーショナルなフォントを指定して下さい。

 このページでは簡単なRagtime Guitarの弾き方を紹介します。
 RagtimeやCountry Bluesをギターで弾くのはとても楽しいものですが、ある程度のレベルに達するまでは練習が絶対的に必要です。
 これはあくまで私個人の考え方ですので、必ずこうするべきであるという訳ではありませんが、参考にはなるだろうと思います。

 ご意見、ご要望をお待ちしています。

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目 次

  1. リズムが大切

  2. 簡単なメロディーを弾こう

  3. メロディーをずらせば…

  4. 色気を出そう

  5. 左手の指使い

  6. 右手の指使い

  7. 最後に


  1. リズムが大切 Topへ戻る ) ( 目次へ戻る )

     どんな音楽にも共通することですが、RagtimeやCountry Bluesなどの演奏で最も大切なものは正確なリズムとタイミングでしょう。
     特にRagtimeはその名のとおり「ずれた時間」で独特の雰囲気を作り出す音楽です。  「ずれた」というからには必ず「何かに対して」ずれる訳です。
     この「何か」がベースで作り出されるコンスタントなリズムで、これが正確に刻まれなければ「ずれる」効果が生かされないということになります。
     Country Bluesではモノトニックベース(同じベース音を一定のリズムで弾くこと)が使われることがありますが、ベース音が常に一定のリズムを刻むことによって独特のBlues感を生み出しているといえるでしょう。

     後で触れますが、ベース音を担当するのは主に右手の親指です。
     これで安定したリズムを作りだし、その上でメロディーが展開される訳ですから、親指の役割は非常に大きいと言えます。

    E|----------------|----------------|----------------|----------------|
    B|----------------|----------------|----------------|----------------|
    G|----------------|----------------|----------------|----------------|
    D|----2-------2---|----3-------3---|----0-------0---|----2-----------|
    A|3-------3-------|----------------|----------------|3-------3-------|
    E|-------(3)------|1-------1-------|3-------3-------|----------------|

     上のTab譜はオルタネートベース(交互ベース、ベース音が行ったり来たりする)を使ったベース音だけのコード循環(C→F→G→C)を表しています。
     これを確実に一定のリズムで弾けるようになることが大切です。
     Cコードのベース音で( )で示した部分は( )の付いていない音で正確に弾けるようになってから試して下さい。
     各小節の1拍目と3拍目は通常そのコードの根(ルート)音が使われます。
     Cコードであればド、Fコードであればファ、Gコードであればソといった音です。
     2拍目と4拍目はそれぞれのコード内の音が使われます。
     この時に2拍目、4拍目を強く弾くことが大切です。
     弾くべき弦の下の弦まで弾いてしまうようなつもりで弾くのです。
     こうすることによって独特のビート感と和音をイメージさせることができるようになります。

    こうしてベース音を弾きながらメロディーを歌うだけでも十分曲になります。
     実際、歌を伴う演奏の場合にも使われます。

  2. 簡単なメロディーを弾こう Topへ戻る ) ( 目次へ戻る )

    それでは先ほどのベースにメロディーを付けてみます。

    E|0---------------|----------------|----------------|----------------|
    B|--------1-------|--------1-------|0---------------|1---------------|
    G|----------------|2---------------|--------0-------|----------------|
    D|----2-------2---|----3-------3---|----0-------0---|----2-----------|
    A|3-------3-------|----------------|----------------|3-------3-------|
    E|-------(3)------|1-------1-------|3-------3-------|----------------|

    このメロディーはそれぞれのコードの中の音だけしか使っていませんが、楽しそうな雰囲気が出てきました。
     メロディーを弾くときにはそれぞれを正確に強く弾くことが大切です。
     どうしても親指の強さに負けてしまうという方がいます。
     これも後で述べますが右手の指使いで音量は調節できます。

     しっかりしたベース音を保ちながらはっきりとしたメロディーを弾くということは結構難しいことですが、ベース音をミュートする(右手の親指の付け根をベース音を弾く弦の上に軽く触れる)ことで、メリハリの効いた音を作り出すことができます。

  3. メロディーをずらせば… Topへ戻る ) ( 目次へ戻る )

     最初にも触れましたが、Ragtimeは「ずれ」が大きな意味を持っています。
     先ほどのメロディーはベース音と同じタイミングで弾かれていますから、「ずれ」てはいない訳です。

     それではメロディーをずらしてみましょう。

    E|--0-------------|----------------|----------------|----------------|
    B|------1---------|------1---------|--0-------------|1---------------|
    G|----------------|--2-------------|------0---------|----------------|
    D|----2-------2---|----3-------3---|----0-------0---|----2-----------|
    A|3-------3-------|----------------|----------------|3-------3-------|
    E|-------(3)------|1-------1-------|3-------3-------|----------------|

     1小節目から3小節目まで、先頭の音の前に8分の1拍のずれができ、2番目の音が8分の1拍だけ前にきています。
     ベース音と同じタイミングで弾かれるのは最後の小節だけです。
     これだけの差でもウキウキした感じが出てきました。
     この例では同じようなリズムでメロディーの「ずれ」を作っていますが、少しずつ変化させることでバリエーションをいくつでも作り出すことができます。

  4. 色気を出そう Topへ戻る ) ( 目次へ戻る )

     単にメロディーを弾くだけでなく、様々な装飾音を取り入れることで、曲の雰囲気が変わってきます。
     ハンマーリングオンやプリングオフといった左手の技術も取り入れてやると、より複雑なメロディーを作り出すことができます。

     少し例を挙げてみましょう。

    E|0---0-----------|----------------|----------------|----------------|
    B|--4---1---------|--0---1---------|0---------0-----|1---------------|
    G|--------------1h|2---------------|------0h2-------|----------------|
    D|----2-------2---|----3-------3---|----0-------0---|----2-----------|
    A|3-------3-------|----------------|----------------|3-------3-------|
    E|-------(3)------|1-------1-------|3-------3-------|----------------|

     最初の曲からすればかなりRagtimeっぽい雰囲気が出てきたのではないでしょうか。
     この例ではメロディーラインに対する装飾音を取り上げましたが、ベースラインも同様にウォーキングベースにしてみたり、リズムを変えたりと、様々に色付けすることができます。

     それではメロディーラインをシンコペートさせてみましょう。

    E|0---0-----------|----------------|----------------|----------------|
    B|---4-1----------|-0---1----------|0--------0-----1|----------------|
    G|--------------1h|2---------------|------0h2-------|----------------|
    D|----2-------2---|----3-------3---|----0-------0---|----2-----------|
    A|3-------3-------|----------------|----------------|3-------3-------|
    E|-------(3)------|1-------1-------|3-------3-------|----------------|

     弾むような雰囲気がでてきたでしょうか?
     曲全体からいきいきとした躍動感が感じられませんか?
     Ragtimeの基本はうきうきするような楽しさだと思います。
     ただし、あまり凝りすぎると本末転倒になりかねませんから、ほどほどに。

  5. 左手の指使い Topへ戻る ) ( 目次へ戻る )

     Ragtimeも難しいものになればなるほど、左手の動きが大きくなってきますし、コードパターンから外れるような指使いが必要になることもあります。
     分かり切ったことですが、メロディーが途切れないように次のポジションを十分に考えて左指を使うことが大切です。

     また、いわゆるバレー(人差し指でフィンガーボードをまたぐように押さえること)は次のポジションに移る時の動作が大きくなってしまいますから、一部の例外を除いてほとんど使われることはないでしょう。
     そのかわりネックを握り込むようにして親指で6弦を押さえますので、親指は結構重要になります。

     小指も重要な位置を占めます。
     特に高音部でのメロディーをスムーズに弾こうとすると、どうしても小指を使わざるを得ません。
     小指を使ったハンマーリングオンやプリングオフもできるように練習しておいたほうが良いでしょう。

  6. 右手の指使い  Topへ戻る ) ( 目次へ戻る )

     多くのブルースマンはツーフィンガー(人差し指と親指)で弾いています。
     しかし、これにこだわる必要はないと思います。
     自分が弾きやすい指を使えば良いのです。

     右手で大切なことはミュート(右手の親指の付け根でベース音を弾く弦の上を軽く押さえて、響きを押し殺すこと)が自由にできること、親指が正確なリズムを刻めること、メロディーラインとベースラインのバランスを自由にコントロールできることなどが挙げられます。
     右手の指使いはリズムの正確さと音質のコントロールがその重要な課題になるわけです。

     メロディーを弾くとき、優しい音を出したい場合は指を伸ばしてすくい上げるように弾き、強くはっきりとした音を出したい場合は指を軽く曲げた状態で引っかけるように弾くといった方法で音質をコントロールすることができます。

  7. 最後に Topへ戻る ) ( 目次へ戻る )

     Ragtimeギターを弾くことはとても楽しいものです。
     このページの簡単な例を見てもおわかりになると思いますが、それぞれのレベル毎に様々な楽しみ方を見つけ出すことができると思います。

     焦らないこと、最初から背伸びをしようとしないことが大切です。
     難しい曲へのチャレンジはそれなりに意味を持っていると思いますが、音を追いかけるだけで終わってしまっては何の意味もありません。
     不正確なリズムで弾かれる複雑な曲よりは単純だけど正確なリズムで弾かれる曲の方が遙かに素晴らしいと思います。
     地味な練習になるかもしれませんが、努力は必ず報われます。


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