愚行連鎖 Recently My favorite things.


雪村いづみ

Jacket 雪村いづみ/スーパー・ジェネレーション
録音:1974年
  1. 序曲--香港夜曲
  2. 昔のあなた
  3. ヘイヘイブギ
  4. バラのルムバ
  5. 銀座カンカン娘
  6. 東京ブギウギ
  7. 胸の振子
  8. 一杯のコーヒーから
  9. 蘇州夜曲
  10. 東京の屋根の下

雪村いづみ(Vo.)

キャラメル・ママ
  細野晴臣(B.)
  鈴木茂(G.)
  松任谷正隆(Kb.)
  林 立夫(Drs.)

雪村いづみがキャラメルママをバックに従え、稀代の名作曲家・服部良一作品をカバーした傑作盤。リリースは1974年で、当時はもちろんLPだった。
本当に好きで何度も聞いたし、今でもこのLPは持っている。CDが発売されたときにはすぐに手に入れた。
その後CD文庫として廉価版に変更になり、残念なことに今では廃盤になってしまっているようだ。
この録音は日本歌謡史、日本ロック史において極めて貴重なモノだと思うのだが…
売り上げ枚数しか念頭にないわが国の音楽業界に、アカデミックではないけれど、貴重な文化の保存を期待する方が無理…何だろうな。

本作は、作曲者の息子、服部克久がストリング・アレンジ監修をしたとは言え、キャラメル・ママのカラーがかなり強く出た、各曲が最初に世に出た頃とは全く異なるアレンジにはなっている。
しかし、服部良一の「歌謡曲」は戦前に全盛期があったとは思えないほど、元々ハイカラ・ハイセンスで、ブルージーで、ジャジーで、クールでスウィングしたものばかりなのである。
(カタカナ英語を並べたが、服部良一の音楽は、まさにカタカナ英語で表現すべき音楽群なのだ)

日本全土が軍国主義の波に飲まれて、歌を歌う自由もなくなってしまったとき…
音楽は軍歌しか許されなかった頃。
ジャズやポップスは「敵性音楽」として歌うだけで逮捕拘束され拷問を受けても文句を言えない時代。
身の危険を冒しても、軍歌を歌わなかった歌手と軍歌を作らなかった作曲家がいた。
歌手は淡谷のり子、作曲家は服部良一。

そのかっこよさを受け継いで、リメイクとも言える本作ですら、既に四半世紀近くも昔の録音なのに、素材・料理ともに素晴らしい、そのサウンドには古臭さがない。
当時、まだ若かったキャラメルママの面々の演奏は実に力強く格好良く、円熟にさしかかる雪村いづみの歌は、やはり上手い。「歌手」というのは、「サイドメン」というのは、こういう人達を言うのだとしみじみ思う。
アルバム名の“スーパー・ジェネレーション”はこの組み合わせを指す物である。

キャラメルママ

1972年より細野晴臣、鈴木茂、松任谷正隆、林 立夫により結成、のちにティン・パン・アレーと名を改め、1977年まで流動的なサウンド・プロデュース・チームとして活動し、荒井由実、南佳孝、山下達郎、吉田美奈子、矢野顕子、大貫妙子などのレコードに新鮮な音楽を提供していた。
ティン・パン・アレーによる“キャラメルママ”と言うアルバムもあるので紛らわしい。

ユニット名の由来は、1968年11月21日、東大紛争の際、学生の母親たちが立てこもった学生にキャラメルを配るなどして、自重を呼びかけ、「キャラメル・ママ」と呼ばれて失笑を買った出来事からとった、と思われる。


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