GBのアームチェアCinema見ist:夢売るふたり

夢売るふたり

夢売るふたり

監 督 西川美和
出 演 松たか子/阿部サダヲ/田中麗奈/鈴木砂羽/安藤玉恵/江原由夏/木村多江/香川照之/笑福亭鶴瓶
原 案 西川美和
音 楽 モアリズム
製 作 年 2012


日曜日、カミさん得意の突発映画鑑賞。
TVでコマーシャルやってんのね。

監督はあのディア・ドクターの西川美和。
結構切り口が面白いクリエーターだから、一寸興味あり。

怪優阿部サダヲも好きなのでおつきあいすることにした。

しかし、この監督さん、前述のディア・ドクターにしてもアクの強い俳優が好きなのかね?
そんでもって、また詐欺師の話である。

松たか子は…
特に興味を引かれる女優さんではないが…

本編では可愛いらしく、恐ろしく、そして不気味な女を演じていた。
いや、上手い…んだろうね。この人。

映画そのものは若干消化不良の感はあるが、まぁ佳作。
見始めるまで、寝るかな、と思ったが、なかなかの作品ではある。
(納得できない部分は、それ、その「感覚の違い」ってぇやつで…)

やっと築き上げた自分たちの店を火事で失い、再びふたりの城を持つために夫婦で結婚詐欺を働く話。
淡々と描かれるのでついさらっと見てしまうが…
その内容はかなりどぎつくきわどい。一言で言えばエグいのである。
一癖も二癖もある西川美和の世界…なのだろう。これは。

そんなストーリーをさらっと見せてしまうこの監督は、やはり力量がある人なのだと思う。
なにより、詐欺の実行犯の阿部サダヲが、相手の女性に対して嘘をついていないと言うのが後味が悪くない要因なのだろう。
誠実な詐欺師ってのもなんだか変だが…

カモを見つけてシナリオを書き、夫を女の所に送り出す妻…
これも凄いな。
一線級の女優がここまで演るのか、と言う演技も、凄みと、そして哀しさに溢れている。
セレブリティで品がある女優が演じてこその役だろう。

騙す方も騙される方も弱さを抱えて苦しんでいる…
そんな所が実に現実感を持って迫ってくる。

切ない、苦しい…
人を愛するってそう言うものなのかも知れない。

これ、阿部サダヲと松たか子だから成立した映像なのではないだろうか。
その他の配役陣も実に的を射た配置で、この監督の力量を感じさせる。

確か前作もそうだったような気がするが、ラスト、観客に委ねてぶん投げるような結末は、この人の得意技なのだろうか?
観る人によってどうとでも取れるよな…
どう見ても何かの伏線に思わせるシーンが回収されないままだったり…

音楽はディア・ドクターに続いてモアリズム
前編音楽が少ない静かな作品だが、要所で流れる劇伴も実に静かでシンプル。
マヌーシュ風のギター(多分デュオ)の哀愁を帯びた旋律が出過ぎず、引っ込み過ぎずに作品の味を高めていた。

ちなみにR15である。
セックスシーンもそこそこあるので、そう言ったモノが苦手な方はご注意を。


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