GBのアームチェアCinema見ist:ネオ・ファンタジア

ネオ・ファンタジア

ネオ・ファンタジア:Allegro non Troppo

監  督 ブルーノ・ボゼット
音  楽 ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
主  演 マウリツィオ・ニケッティ(?)
助  演 
製 作 年 1976/伊
シナリオ ブルーノ・ボゼット


スクリプターにフェデリコ・フェリーニが名を連ねている。
我が国で公開されたとき付けられた邦題が「ネオ・ファンタジア」。
確かに、クラシック音楽に乗せたアニメーションと実写のくり返しで描く映像表現と言う手法はディズニーの「ファンタジア」と同一ではあるが、その精神は全く異なる。
ある意味『隠れた傑作』と言えるだろう。

原題は“Allegro non Troppo”
楽譜に記載される「速度標語」で、意味は速すぎないアレグロ(軽快に。速いテンポでと言う意味に使われることもある)。
allegro ma non troppo【伊/アレグロ・マ・ノン・トロッポ】
アレグロだが, 余り速すぎないように
(ma 〈しかし〉, troppo 〈〜し過ぎないよう〉の意。)

と記載されることもある。


と言う6曲のクラシック音楽を題材にしており、現在入手可能な海外版ソフトのパッケージは一曲目のエピソードのキャラクターが使われている。
冒頭のこの話は、1人の老いた牧神が若さをとりもどすために美顔術や変装をして若い娘を迫いかけるが、所詮、老いを隠すことはできない。と言うお話で“老い”との格闘を描き、少々エロチックな表現もあるものである。
この一番目のエピソードに限らず、全編を通してかなりシニカルな表現が取られており、前述のように明るく正しいディズニーの「ファンタジア」とは根本的に異なる作品であり、少なくとも単に“表現手法が似ている”だけで比較してしまうような作品ではない。

ネオ・ファンタジア 国内で封切られたときは4曲目の「悲しみのワルツ」。〈荒れはてたビルに住む野良猫が、昔、そこで暮らしていた飼主の一家を回想する〉と言う哀しげなエピソードがメインにすげられて、ポスターやパンフレットなどもその大きな瞳の子猫が使われていた。
邦題にしてもこの媒体展開にしても、国民性というか、その方が受けるであろう宣伝戦略というか…何となく考えさせられるモノがある。
この扱いが果たして正しかったのか…。
まぁ、はっきり言ってどう見ても可愛いとは言えない冒頭のキャラクターよりもこちらの子猫の方が一般受けするであろう事は確かなのではあるが…
少なくとも邦題にディズニーもどきであるかのような題名を冠されてしまったことは、この作品にとっては悲劇と言えるのではないかと思う。


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