GBのアームチェアCinema見ist:秘密

秘密

秘密

監  督 滝田洋二郎
音  楽 宇崎竜童/主題曲 竹内まりや「天使のため息」
主  演 広末涼子
助  演 小林薫/岸本加世子
製 作 年 1999
シナリオ 斉藤ひろし
原  作 東野圭吾


秘密:単行本 1999年度日本推理作家協会賞を受賞した東野圭吾による同名小説(写真)が原作。
(この本はカバーにも「秘密」があり、カバーを外すと…。文庫本のカバーは単行本のカバーが一部…といったデザインになっている。)
本作には原作者、東野圭吾も大学教授の役でちょろっと出演している。

お話は、死んだ妻の人格を宿した娘と、彼女と奇妙な夫婦生活を送ることになった中年男の愛の行方を描いたドラマ…と書いてしまうと一行で終わってしまう。

原作の方でも少し書いたが、この映画は、広末にほとんど興味がないので意識の範疇外だった。
要するにただの可愛いだけのアイドルだと思っていたのである。
しかし、この映画の翌年、2000年には…
本作“秘密”で第33回シッチェス・カタルーニャ国際映画祭最優秀主演女優賞、そして第23回日本アカデミー賞優秀主演女優賞、更にはやはり99年の作品、“鉄道員(ぽっぽや)”で同じく、第23回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞しているのである。
ちょっとググってみたら「広末の先入観捨てて見ろ!」と言うレビューがあった。
広末ネームバリューが通用しない海外映画祭でも賞を貰っている位なので、秀作なのだろう。

そう言えば、“鉄道員(ぽっぽや)”は確かに秀作であった。高倉健の名演が印象深いが、そう、広末涼子も出ていて、なかなか良かったことを思い出した。
つまり、イメージだけで大したことはないと思いこんでしまっていたのだが、実は相当演技力のある女優さんだったのだ。
特に、本作はハイティーンと40代の人格が入れ替わってしまうと言う非常に難しい役柄である。
相手役の小林薫の巧さももちろんあるだろうが、確かに巧いし、大変魅力的な役者だと思う。

映画本編であるが、これはこの映像作品だけを見るのなら充分に秀作と評しても良いと思う。
映画には「尺」という物が存在するし、文章と映像は自ずから違う物であり、全く文章の通りを追った映像をダラダラ作っても全く意味がない。
つまり、部分を膨らませたり、全体を省略したり…(一般的には映像化の際には物語を端折ってダイジェスト化してしまう傾向があるが…)は仕方のないことである。
この映画でも、原作では娘が小学生から結婚するまでの10数年間に渡る夫婦の葛藤をたった数年間に圧縮している。
決して失敗作だとは思わないが…
原作は10数年に及ぶ不思議な家族生活に存在感があるのだ。

ただ、先に読んだ原作では泣けた私が、そら泣け!ここで泣け!のシーンでも泣けなかったのは何故だろう?
ラストも、脚色はされているものの、基本的な流れは原作と同じである。しかし、何となくエンディングに強い違和感を持ってしまったのは何故だろう?
そう、原作を読んだときには感じなかった違和感である。
この違和感は一体どこから来るのだろうか。

この“秘密”が、リュック・ベッソン製作、バンサン・ペレーズ監督によってリメイクされることになったそうだ。
ベッソンは1999年のこの“秘密”の広末涼子を気に入って、自身のプロデュース作“WASABI”の主演に抜擢したという経緯もある。今回の海外リメイク版“秘密”も広末で行くのだろうか?いくら何でも少々年を食いすぎているし、母親役には若すぎると思うのだが…
なにより、こんな地味な映画がガイジンに受けるのだろうか?疑問である。


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