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ウィンストン・チャーチル

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男(原題:Darkest Hour)

監督 ジョー・ライトロ
脚本 アンソニー・マクカーテン
出演 ゲイリー・オールドマン/ベン・メンデルソーン/クリスティン・スコット・トーマス/リリー・ジェームズ/スティーヴン・ディレイン/ロナルド・ピックアップ
音楽 ダリオ・マリアネッリ
製作 2017/英

広告と劇場予告編で、これは観たいぞと思っていた作品。

第90回アカデミー賞で主演男優賞、オールドマンの特殊メイクを担当した日本人メイクアップアーティストの辻一弘らがメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した。

あの、ゲイリー・オールドマンが完全にチャーチルになりきっていた(決してそっくりさんになっている訳ではないが)特殊メイクにばかり話題が集まりがちだが、本作の本質はそこではない。

派手な戦闘シーンはない。
一言で言えばデブで禿げのをっさんが演説ぶちまくっているだけの映画なのだが…
そのテンポの良さ、オールドマンの力演が光る。

また、カメラワークや、色調を押さえ彩度が低い画面が多いが光と影のコントラストが効いている美しい画面、計算された構図も素晴らしく、一瞬一瞬を切り取る絵画のようで情景だけでも美しい。

ウィンストン・レナード・スペンサー=チャーチル(英語: Sir Winston Leonard Spencer-Churchill 1874年11月30日 - 1965年1月24日)は、イギリスの政治家、軍人、作家。

実際のチャーチルに関しては、名宰相の評価もあるが、戦争好きで、闘いを騎士の決闘と同等に考え人の死を顧みなかったとか、クロムウェル以来のイギリスの独裁者等と言われることもある。

本編の舞台となるダイナモ作戦でも国益のために30万人を救うため囮部隊の4千人を容赦なく切り捨てている。

本作はチャーチルの首相就任からダンケルクの作戦までの約一ヶ月を描いているが、去年ダンケルク、人生はシネマティック!(あぁ、これ、見逃してしまったよ…)と、何故今“ダイナモ作戦”なのか…ふと考える。

ダイナモ作戦は、第二次世界大戦のダンケルクの戦いにおいて、1940年5月26日から6月4日に実行された連合軍の大規模撤退作戦である。
特に何周年などの節目でもないように思える。

Attitude of never surrender!!(確かこんな言い回し)

Never!!

等と力強く言われ、何となく場の雰囲気で感動的に気分が高揚する自分がいた。
いや、危なくないか?これ。

ゲイリー・オールドマンは確かに凄い。
私にとってはレオンのあの狂った警察官ノーマン・スタンスフィールドやハリー・ポッターのシリウス・ブラックの印象が強いが、本作は全く異なる彼のイメージを作り上げた。
それは決して特殊メークの賜物ではない。

もう一つのアカデミー賞作品は「これが?受賞?」と言う物だったが、本作は確かにふさわしいかも知れない、素晴らしい出来の映画である。

しかしながら、やはり、何故今こんな強力な国威高揚愛国映画が?と言う疑問は残る。

それはさておき、原題は「DARKEST HOUR」。
邦題「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」は確かに内容を全て表し、非常に解りやすいが、もう少し原題に即した美しい日本語はなかったのだろうか?
なにかTVの安っぽい長時間ドラマのタイトルのようで、些か情けない。



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