組織の責任と個人の責任について


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記載者:高木つねひで on September 24, 2104 at 02:48:46:


以下は、いちJIA会員としての発言であることを、最初にお断りしておきます。

「この問題を、アトリエ事務所(小規模設計事務所) VS ラージファーム(大組織設計事務所)という構図の論争にしてはならない」 住宅部会の懇談会で小倉会長はおっしゃいました。私も、まったく同感です。

今回の問題で、松原忠策理事・関東甲信越支部長の進退が取りざたされています。松原さんは、昨年松田平田設計の役員を退任し特別常任顧問として勤務しており、社内の業務の流れを知ることができないそうです。彼は、理事会あての文書の中で「JIAの規定の中で組織の責任と個人の責任についての在り方を明確にしていただきたい」と書いています。

私には、まず、設計業務の受託について責任を負えない人が、はたして「建築家」と言えるだろうか、という思いが拭えません。JIAと台東区に陳謝した中園代表取締役でさえ応札の事情を知らなかったという声も聞きますが、そんなバカなことがあるはずがないと耳を疑います。もし中園さんが知らなかったのなら、職責を受けるべき会員は中園さんではありません。

責任のあり方を考えるとき、企業役員としての社会通念上の責任と、建築家としての職能上の責任とを混同することなく考えねばいけません。

業務受託の事情を知らずに組織事務所で働いている所員に、その受託が不正だからと建築家の職能上の責任を問えるかと言えば、そんな不条理な話しはないでしょう。でも、もし彼がJIA会員であり登録建築家であったら、建築家としての責任の所在はどう考えればよいのでしょう。

これまで登録建築家やJIA会員種別についてモヤモヤして分からなかったことが、今回の「建築家の責任」に関わる実際の問題に直面していっきに表面に顕れた気がしています。

ラージファームには充分な実務能力を持っている設計者が大勢いらっしゃることは充分認めるところです。ラージファームに所属する会員の皆さんも建築家の自覚を持って仕事をしてらっしゃることと思います。しかし、業務に対し責任を負えない立場では建築家と言えないのではないか。あるいは控えめに言っても、責任を負っている人とは大変な違いがあるのではないか。それをまったく同等に捉えている登録建築家およびJIA会員種別は、根本のところでボタンをかけ違っていると思うようになりました。

誤解のないように申し添えますと、私は、ラージファームはいけないと言いたいのではありません。業務に対して責任を負っている立場の人と、責任を負えない立場の人を、いっしょくたにして、建築家という職能を論じるのは誤っているのではないかと、そう言いたいです。

登録建築家の資格基準の根拠となった「建築家実務におけるプロフェッショナリズムの国際推奨基準に関するUIA協定」UIA Accord on Recommended International Standards of Professionalism in Architectural Practice(1998/4)では、「プロファッショナリズムの原則」として、専門性Expertise、自律性Autonomy、公約Commitment、とともに責任Accountabilityをあげており、建築家は、顧客に対して行った明確・公正かつ必要があれば極めて重要な助言に対する責任と、自らの活動が社会や環境に及ぼす影響に対する責任について、自分が負うものと受容している Architects are aware of their responsibility for the independent and,if necessary,critical advice provided to their clients and the effects of their work on society and the environment と言っています。

JIAが認定する「登録建築家」のすべてが、はたしてUIAの言う「アーキテクト」の称号title of architectにふさわしいと言えるのか、はなはだ疑問と言わざるを得ません。

松原さんには、会員が求めているのは、JIA会員としての責任ではなく、自他ともに認めてきた建築家としての意志表明であることに気付いていただきたいし、中園さんをはじめラージファームの会員の皆さんには、業務について全責任を負って活動している会員との違いを認識していただくことと、皆さんが組織の中で建築家として相応の立場で働くための自らの組織改革に取り組んでいただきたい。


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