西部さんの論文を読んで


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記載者:toshi jinnai on September 14, 2102 at 13:55:18:

元の記事:論文集のご案内 /記載者:西部明郎 on August 31, 19102 at 17:31:38:

西部さんの論文を読んで

西部さんの論文を興味深く読ませて頂きました。以下は私個人の異論であり、JIAを始めとする他の団体(建築士会、建築学会)への憤りでもあります。

Architectとは、英和辞書で、「建築家」もしくは「建築技師」と訳され、英英辞典(Longman)には、「a person who plans new buildings and is responsible for making sure that they are built properly. 」 と説明されている。ならば、architect(アーキテクト)を日本語訳した場合、出江寛氏の主張する芸術性を強調する建築家よりも、物をつくるトータル性に重きをおく建築士の方がより明解になると思います。但し、現建築士法に基づいて考えると少々矛盾が生じますが。実際、身近なAIAに所属するメンバー(architects)を知る限り、家協会(JIA)が主張する、architectとを建築家一点張りに訳すのは少々早合点のような気がします。アメリカでは建築の技術的なコーディネーターも含め、architectと称しAIAに所属しています。しかし、JIAのように構造家(Engineer)、建築史家(Researcher)などは含まれていません。また、AIAはプロヘェショナルな団体でJIAのような設計を専業とする事務所の団体ではありません。正直なところ、JIAは表看板をプロヘェショナルな団体と掲げておきながら、本音は設計を専業とする組織事務所の営利団体とも捉えられます。

現在、JIAでは会員増員キャンペーンを行っていますが、各会員のその意気はJIAの期待に反し消沈しています。勤務先の組織事務所ではそのようなお知らせもなければ、掲示もされていません。以前勤めていたシカゴの組織事務所(SOM)とは大きく異にするところです。新入社員(インターン)には、ライセンスの取得、AIAの加入の説明、手続き等の手助けをしています。残念ながら、日本の事務所にはそのような体系がありません。新入社員にはJIAは勿論、建築士会のような団体の説明もありません。実際、組織事務所でJIAの会員になっているのもその幹部で、会費も事務所の経費からでていることと思います。そのような組織事務所が大半かと思います。更に、100人近い組織事務所でもJIAに加入している所員はほんの数人です。JIAの存続も危ういのかなと思います。そのような団体(JIA)を敢えて申さて頂くならば、以前も苦言されていましたが、旧態已然として、建築家倶楽部かと思うばかりです。

JIAが現在の建築士法を何とかしょうと努力しているがよく理解できます。しかし、その背景にUIAやAPEC等の外圧があるのではないでしょうか。でなければ、今日、建築家資格制度や専攻建築士制度など、各団体の議論の対象にもならなかったでしょう。日本の建築士法が国際的に不都合が生じてくる以前に処方すべきだった。私は学生時代から、日本の建築士法には疑問を抱き、卒業後、建築士法改正の動きが見られたのも束の間だったのかと失望しました。そして、とうとう来るべき時が来たのかと思う今日この頃です。

建築士法もさることながら、日本の建築設計教育のお粗末さをいまだに痛感しています。建築教育も建築学会の既得権のようなものがあります。日本では、実務経験もない教官が学生に設計教育をしている現実があり、更に設計教育を怠っている教授さえも存在します。

「......木造の住宅の課題で、一所懸命書いた図面を一目見て「木造解ってないね」
とだけ言って講評を終えた教授もいました。......」
yahoo!掲示板 建築 VectorWorker (30歳)より

私も日本の大学でこのような教授から設計の授業を受けました。こうした一方的な教育はアメリカの大学では考えられません。そういう教育精神に欠乏する教官は学生の「教官の授業評価」(Faculty’s Evaluation)でキャンパスから追放されます。残念ながら、教育指導において日本の教官は学生の評価により職を失う危機感がありません。また、日本の大学のカリキュラムにおいてもプロヘェショナルな人材を育成する上において中途半端です。何故、国立大で芸大のみが米国のようなスタジオ中心のカリキュラムが用意され、他の大学ではそれが許されないのか。そうした議論はいまだ聞いたことはありません。日本の建築教育界もナァナァの主義で今日までやってきました。特に、最近、「環境」という学部、学科が目立ちますが、環境設計ほど曖昧な学科はないと思います。建築家(士)の育成には必ずそのような環境も含めて総合的に物の創造の過程を教育していきます。しかし、現在の大学の建築学科、建築工学科、建設工学科、環境設計科など建築に係わる多くの専攻は、学生を建築家(士)に育てるのか、あるいは環境設計士?に育てるのか曖昧なものであり、将来の職業の選択は企業任せの状態になっています。まさに国際的に認可されない時代遅れの建築教育システムであります。

建築士法といい、建築教育といい、日本の建築業界は自らの開拓よりは外圧によりやっと夜明けが来たのかと思う昨今です。日本の現建築士法が国際的に認可されるまでいろいろな問題が山積しています。その大きな障害が、機能的にも重複している各団体の派閥の問題(既得権の問題)だと思います。少なくとも所属する各会員の明確な判断・理解があれば士法の問題も多少早期に解決するだろうと念じています。しかし、現実には、何を根幹として設計事務所を経営しているの理解し難いものもあります。たとえば、基本理念を異にする士会、家協会の二重加入。これは、近年日本の社会に遭遇する出来事の一こまによく似ています。ある商店街の一敷地で大きなスーパーマーケットを建設する場合、勿論商店街の主人達は建設に反対します。商店やその主人にお世話になっている顧客や近隣も建設に反対します。一方、そうした反対者にも大きなスーパーマーケットが出きれば、今以上に容易に手に入り易くなり倹約ができ、同時に建設賛成にも同意する矛盾者もでてきます。このように賛否の段階になると、一人が複数の回答を出し結局、問題解決が遅延する場合が多々あります。この点、建築設計業界も同じようなことです。設計事務所はそのスタンスを明確にし、日本に置かれている建築界の現状を内外的に理解すべきです。

因みに、建築士会、建築家協会の双方に加入している事務所、個人として、(株)アーキブレーン建築研究所、活「野利幸建築設計事務所、轄竭q研究所、清田育夫計画設計工房、(株)観光企画設計社、褐サ代建築研究所*(代表 北代禮一郎)轄イ藤総合計画、轄イ藤尚巳建築研究所*(代表 佐藤尚巳)、清田育男計画設計工房、鞄ソ岡昌克建築設計事務所、潟戟[モンド設計事務所などなど多数の事務所、個人があげられます。
更に、北代禮一郎氏は日本建築家協会(JIA)名誉会員です。
褐サ代建築研究所、轄イ藤尚巳建築研究所は事務所として建築家協会に登録されていませんでした。
......各団体のホームページ(02/09/10)にて検索。

西部さんはこのような事務所あるいは個人の立場、見解をどのように思われますか。複数の団体加入は建築士あるいは建築家(士)の社会的地位を曖昧にし一般市民を混乱させる要因ともなっています。今月号(9月号)の「新建築」に日本建築士会連合会会長の宮本忠長氏の記事がありました。宮本氏の肩書きは、建築士ならぬ、建築家とありました。建築士と建築家をまさにゴッチャ混ぜにしているのではないでしょうか。そのような基本理念の異なる建築士会と建築家協会を同時に加入している設計事務所、個人のスタンスを理解しかねます。建築家(士)は自らの行動をもって自らの首をしめているものです。このようなことが許される限り、真の建築家(士)の職能の地位確立はありえないでしょう。Architectの地位が社会的に確立している米国には、このような曖昧な団体が存在しないことは誰もが知るところです。

最後に、私は高校時代より建築家を夢み、ひたすら建築を学び、実務に携わってきました。現在、帰国し2年が過ぎ、米国のアーキテクトに比べ日本の建築家(士)の社会的かつ職能的レベルの低さには目を見張るばかりです。同じプロヘェショナルとしての職務である弁護士さえ、指摘するところです。

「建築士の多くは業者に雇用されるか業者側から仕事を得ている関係にあり、更には建築士に強力な権限が与えられていないこととあいまって、建築士が業者の工事内容を適正に監視していく機能が遺憾ながら現状では喪失しているといわざるを得ない。」
読売新聞 97/1/15 「論点」 弁護士 吉岡和広 より抜粋

この事実は今も変わることはありません。日本の因習的な教育、資格、団体等々の基本姿勢、運営形態など、私が体験した米国に比べ、いまだ発展途上国並と言わざるを得ません。海外では日本の建築士が英語でarchitect ではなく、kentikushi と紹介されているのも理解できます。昨今、建築界の変革の兆しは自発的に生じてきた内部起因によるものではありません。しかし、国際的な外圧であろうと、これが日本の建築家(士)の変革への新たな糸口となればと願っています。


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