「駅萌探険倶楽部」


一番、庚。西口のトイレを探険。個室にてラクガキ発見。
白いペンキでざっくり四文字。
「夜露詩句」
かなりの達筆。感心。さらに、隅の方に小さくボールペンでナナメに二行。
「駅長室で益鳥見かけた。この駅チョースゴイ!」
「駅舎の中で易者を見かけた。この駅社会テキ!」
ヤメロ。心の奥に感じる痛み。我慢できずにエンピツで付け足す。
「駅伝へ!貴殿のケーキ伝道師!」

二番、壬。売店で、本日五本目の瓶入り牛乳を購入。
ごくごくごくごくごくごくごっくん。
左手を腰に当て、一気に飲み乾した。
む。やはりそうか。この属性は、銭湯に付随するものではなく、瓶入り牛乳一般に付随するものだったのだ。すると次の研究課題は、コーヒー牛乳あるいはイチゴ牛乳ではどうなるか、というところだな。特集号の締切まで時間もないし、来週中には実験結果を出すことにしよう。今日はもうヤメ。さすがに限界。

三番、甲。プラットホームで椅子に座って読書。・・・のふりして人間観察。
望遠レンズと三脚持って、右へ左へ走りまわる男たち。ここらじゃまだ、そんなに珍しいものは見れなかろうに。まったく、ご苦労さんなことだねー。もうちょっと足を延ばせば、いろいろ見所あったのにさ。こんじょなし。ほらほらそこのキミ、女の子にカメラ向けるときは、一声かけてからにしてね。そんなんじゃ、いい表情が撮れないぞ。

四番、丙。甲の向かいのホームで、缶コーヒーを飲みながら。
ふらふらと頼りない足取りで白線の近くを歩いてくる女。白のトレーナーにインディゴのジーンズ、足元にはウォーキングシューズ、片方の肩にデイバッグ。機能性最優先、色気まったくナシのこの格好、ま、理系の大学生か大学院生ってとこだろう。それにしても、さっきから、よろよろ、よろよろ・・・って、ひょっとして、寝てるのか!? あーっ、そっちはダメだ!ダメだって!あーぁーぁー・・・。・・・もそもそ。ホームに這いあがって、何事もなかったように歩いていく。ふうぅ、近頃の女はたくましいというかなんというか。でもよう、まがりなりにも大和撫子。睡眠不足はやめて欲しいぜ。クスリ漬けになってまで、二十四時間戦わなくっていいよ。お国の宝なんだから、目の下にクマなんか作らないでくれ。楽しみが減る。

五番、戊。入場料が払えねがったから、駅前広場だぁ。
野菜の露天売りしてるおばちゃんだちと一緒に、路上ぱふぉーまのあんちゃんだちを見学してる。
ギター弾きのあんちゃんに、歌うたいのねえちゃん。聞いだことねぇ曲だから、あんちゃんだちのオリジナルなんだろな。
いい曲だぁ。いい声だぁ。こゆうの、心が洗われるってゆんだろなぁ。惚れ惚れしちまったぁ。
あんちゃんだちも、ときどき、目と目で合図さして、きンもちよさそうに演ってるさぁ。
お客さんがこれっぽっちなのは、ほんどにもったいね。みんな聞いでってくれればいいのにさぁ。
あんちゃんだち、頑張れ! 今はお金さねぇけど、しーでーさ出たらきっと買うさ!

さ、次は君の番だよ?
どんな楽しみ見つけてきたの?



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