「明日の自分のために」


「虎穴に入らずんば虎子を得ず」
そんな諺がある。
「価値あるものを得るためにはそれなりのリスクを負わねばならぬ」
そんな意味である。

俺は、虎の親子を不幸にしてまで財を手に入れようとは思わない。
しかし、これを命懸けの修行だと考えるのなら、意味のあることだとは思う。

昔から、「穴」は「修行の場」としての一面を持っている。
一昔前に流行したロールプレイングゲームでも、冒険の場は専らダンジョンだった。
冒険者たちは、迫りくる罠や怪物をかわしつつ、穴の奥へと進んでいく。
剣や槍が立ててある落とし穴に落ちて、串刺しにされてしまうかも知れない。
怪しい研究を覗いてしまい、激昂した魔女に蛙にされてしまうかも知れない。
それでも彼らが次々と難度の高いダンジョンへもぐっていくのは、
生活の糧を得るため、そして、自分を磨くためであったろう。

今、俺は穴の入口にいる。穴の中には何が待ちうけているか分からない。
怖い、とも思う。が、ここで躊躇していては何も始まらない。
俺は行く。自分を高めるために。



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