トルコ一人旅
2007年7月23日 月曜日
まずは早急に今夜のホテルを決めなければいけない。
大学時代の欧州旅行ではホテルへ飛び込んで料金を聞いて部屋を見せてもらって…
といった一連のコミュニケーションが楽しかった。
今回もそれを楽しもうと思ったのが1点。
全て日本から予約して行ったのでは面白くないので冒険的な部分を残したかったのが1点。
もし夜行バスが取れなかったらこの日にイスタンブールに戻ってこられなかったかもしれないというのが1点。
それらの諸事情が合わさって今夜の宿は予約していなかった。
だけど疲れ果てている現在はコミュニケーションを楽しむ余裕なんて無かった。
とくかく無難なホテルへ行ってさっさと落ち着きたかった。
ホテルが多かったのはスルタンアフメット地区だというのは初日に分かっていたのでとにかくそちらへ。
目ぼしい所は地球の歩き方を見てなんとなく決めていた。
路面電車のスルタンアフメット駅前。
地球の歩き方に中級宿として紹介されていたホテルに飛び込んでみる。
米ドルのトラベラーズチェック払いが出来ると書いてあったのだ。
今回の旅に出るために荷物整理をしていたら6年前の欧州旅行時に作ったドルのトラベラーズチェックが出てきた。
その額は60ドルだったのでそれなりの金額。
機会があれば今回の旅で使ってしまおうと思っていた。
なのでホテル代が60ドル以下なら即決してしまうつもりだった。
フロントで英語による会話。
「予約をしていないのだが今日泊まることができるか?」「OKだ」
「米ドルで1泊いくらだ?」「55ドルだ」
「トラベラーズチェックでも大丈夫か?」「OKだ」
「OK,please.」
即決である。
55ドル(≒6,710円、1ドル122円計算)なら充分に許容範囲だった。
案外アッサリと決まったのでホッとした。
鍵を貰って4階の部屋へ。
部屋に入って窓の外を見て感激した。
ブルーモスクが綺麗に見える。
その向こうには海(マルマラ海)まで見渡せる。
飛び込んだ宿でこんなに良い部屋を割り当てられるとは思っていなかった。
凄く得した気分で疲れも回復。
やはり落ち着ける場所を得ると精神的にも楽になる。
時間は17:00過ぎ、日暮れが遅いイスタンブールではまだまだ行動できる時間帯。
この日にやらなければならかったことがもう1つ。
帰国まで48時間を切ったので帰りの飛行機のインターネットチェックインが出来る時間になったのだ。
ホテルから歩いて数秒の所にインターネットカフェの看板があった。
建物に入るとエレベータがあり、現地人の若者が乗っていた。
狭いエレベーターだったのでやりすごして階段で行こうかと思ったが若者が手招きするので一緒に乗った。
インターネットカフェのある2Fを押す。
すると若者が片言の日本語で「ニホンジン デスカ?」と。
片言の日本語に対して咄嗟に日本語が出てこなくて「YES」と答える。
するとその若者は嬉しそうに「私は 明日 日本へ 行きます エミレーツ航空」と。
あれ?どこかで聞いたような展開だと思い始める。
2Fに着くとインターネットカフェの入口があり、その若者もついてきた。
結構混んでいた店内。
何台か端末は空いていたので店員に「Japanese Language?」と聞いてみると何やら現地語でゴニョゴニョ言った。
すると若者が「日本語 空いてない」と通訳してくれた。
どうしようかと店内で逡巡しているとまた若者が話しかけてくる。
「私の 姉は 日本で 有名な 鑑定士 です」と。
この一言でグレーが黒に変わった。
イスタンブール初日で話しかけてきたヤツが言ったセリフを思い出した。
「I'll go to Japan in 3 month」。
「My cousin is famous expert in Japan」
Expertってのは何だと聞くと「カンテイシ」と日本語で言った。
宝石やトルコ石の鑑定士らしい。
まさかイスタンブールでたまたま話しかけてきた現地人が2人とも
・近く日本に行く予定がある
・親戚が日本で有名な鑑定士
こんな偶然が重なるわけがない。
コイツも何らかの下心があって近づいてきたヤツだと断定した。
すると若者が「他の インターネットカフェ に 案内します」と言われた。
ココでついていったら初日の二の舞になる。
決断は早かった、「No problem English ok.」と言ってさっさと空いている席に座った。
ソイツは少し入口付近に立ってウロウロしていたがやがていなくなった。
やはりインターネットカフェの客では無かったのだ。
それにしてもたまたまエレベーターに乗り合わせたヤツにまで声をかけられるとはイスタンブールってのはどこまで信用ならないんだ。
英語でも大丈夫だと言って端末に向かってはみたもののシンガポール航空のサイトがなかなかヒットしない。
少し経つと店員が日本語端末が空いたぞと教えてくれたのでそちらに移る。
やはり日本語だと勝手が分かっているのでやり易い。
シンガポール航空のサイトにアクセス。
今回は選択できる空席が後部座席しかなかった。
前方の座席は往路の航程で懲りている。
どうせ後ろならと最後列の席を選択し、無事にインターネットチェックインが完了。
泊まるホテルも決まり、怪しげな現地人を追い払い、インターネットチェックインも済また。
1時間ほど前には泊まるホテルすら決まっていなかったとは思えないほど今は全てが巧くいっている。
かなり良い気分でインターネットカフェを後にした。
晩飯は外で食べても良かったが、疲れていたので飯を食べる所を探すのも面倒になっていた。
ホテルにはレストランがあり、値段付きのメニューが廊下に貼ってあったが料理もビールも普通の値段。
それならば無難に安全にホテルのレストランで良いだろう。
日が暮れかけた頃にホテルのレストランへ。
最上階だったのでライトアップされたブルーモスクが綺麗に見える。
おまけに客が1人しかいなかったので殆ど貸し切り状態。
アダナ・ケバブなるピリ辛のケバブ料理を注文。
レストランにはTVがあり、見るからに政治討論番組のようなものをやっている。
前日にはトルコ総選挙があった。
現地人が持っている新聞にも「誰々勝利」みたいな記事が踊っていた。
政治討論番組みたいなのはどこの国でも似たようなものなんだな。
唯一いた客は水タバコをブクブクやりながらそのTVを見ていた。
後ろでは店員が水タバコをブクブクやっている。
ビールのお代わりを頼んでいるうちにその店員と英語で少し喋る。
どこから来たんだ、日本か、日本語でサンキューは何て言うんだ、そうか、ありがとうごじゃいますか…
トルコ語のサンキューはティッシュケレデリムだ、そうだ、上手な発音じゃないか…
何か妙に仲良くなって「水タバコを吸うか?」と勧めてくる。
タバコを吸わないからイイよと断るとタバコとは違うんだと説明してくれる。
煙を肺に入れずに口の中で味を楽しむんだと教えてくれる。
タバコで言うところのいわゆるフカスってやつだ。
しきりに勧めるので断り続けるのも悪いので吸ってみる。
硬いストローのような管を吸い込む、その管の先に水が溜まっている。
スーッ…ん、全然ブクブクならないぞ、ンーッと強く吸うとようやくブクブク鳴り出した。
りんごの香りがする煙が口の中に充満し、普段タバコを吸わない私は思わずムォホッとなり大量の煙が口から溢れ出す。
しかしりんごの甘い香りが口中に広がり、なるほど悪くない。
興味本位で禁煙パイプを吸った時がこんな感じだったような気がする。
もっと吸って良いぞとしきりに勧めてくる。
2回目は最初から力強く吸い込むと現地人が吸っているようにブクブクブクブクと。
そしてプハーッ、2回目はむせることも無かった。
悪くは無いのだが慣れていないせいか、吸うのに疲れる。
かなり力を入れて吸い込まないとブクブクならないのだ。
他にも色々な味があるぞとメニューを見せてくれる。
様々なフルーツやシナモンやミントなどのメニューが並んでいて、どれも10YTL(≒1,000円)。
味がなくなるまで楽しめるらしく、数十分〜ものによっては1時間以上持つと言うから驚きだ。
街角の喫茶店などでもメニューとして出しているらしい。
だが私は同じ10YTLならビールを2杯飲むのを選択するだろう。
お試しの水タバコも飲食代金に含まれていたらどうしようかと思ったが心配は杞憂だった。
16YTL(≒1,600円)、ビール2杯飲んでこの値段だから安い。
おまけに店員の好意で水タバコも吸わせてくれた。
20YTL(≒2,000円)払ってお釣りは全部置いてきた。
こういう時こそチップを払うべきなんだなと思った。
これまでチップ文化がある国へ行っても「まぁ礼儀なんだろ」という気持ちでしか払ってなかった。
心地良いサービスを受けたらチップを払う。
全ての旅を通して初めて心からチップを払おうと思って払った瞬間だった。
翌日は新市街へ泊まるので、旧市街の夜はこれが最後だった。