トルコ一人旅

2007年7月23日 月曜日
どうやら夜が明けているらしい。
どこかへの到着を告げる車掌の声、既にイスタンブールでアジア側のオトガル(バスターミナル)らしい。
次第に目が覚めてきてバスは大きな橋を通る。
これはボスフォラス海峡を渡っているのだと気が付いた。
橋の脇にはルメール・ヒサーリが見えた。
今回の旅に出る前に読んだ一冊の本。
塩野七生「コンスタンティノープルの陥落」
その中で主人公のオスマントルコのスルタン、メフメット2世が僅か4ヶ月で建てたという要塞。
そこからボスフォラス海峡を渡る敵船を砲撃したと言う。
期せずしてこんな形で見ることが出来るとは思わなかった。
朝早かったからか渋滞も無かったようで、バスは終点のヨーロッパサイドのオトガル(バスターミナル)に到着。
さすがにイスタンブールのオトガルは巨大で色々なバス会社のオフィスやバスが所狭しと並んでいる。
道中を殆ど寝ていたので案外アッという間だった。
これなら夜行バスを乗り継いでトルコを旅する人の気持ちも分かる。
だけど何日も続けたらさすがに疲れそうだ。
時間は7:30、ギョレメからの乗車時間はおよそ11時間。
時間的にもイスタンブールに着いた初日と同じ。
ただ違うのはもう私はイスタンブールでの行動については熟知していると言うこと(チョット言い過ぎか…)。
オトガルからメトロと路面電車を乗り継いでエミノニュ桟橋へ。
エミノニュからは各方面へ向けた船が出ている。
今日の目的はボスフォラス海峡クルーズ。
アジアとヨーロッパの狭間・ボスフォラス海峡を黒海に向けて途中途中の港に寄港しながら行く船があるのだ。
時間を調べると最初の船は10:35発。
まだ時間に余裕がある。
すぐ近くにあるのがエジプシャンバザール。
その昔、エジプトなどからの貢物が多く集められたからのネーミングだとか。
香辛料を売る店が多かったらしく、現在も独特な匂いが漂うバザール内。
開店直後の9:00すぎだったのでそれほど観光客もいない。
どこかバザール全体の目がまだ覚めていないような状況。
何だかこの辺りの行動パターンまでイスタンブール初日と同じだ。
初日は早朝に着いて開いたばかりのグランバザールへ。
今回も早朝に着いて開いたばかりのエジプシャンバザールへ。
グランバザールほど広くないエジプシャンバザールは歩くだけならすぐに終わってしまう。
方々の店を冷やかしつつ時間が過ぎるのを待つ。
10:00頃にエミノニュ桟橋へ行き、ボスフォラス海峡クルーズ船の切符を購入。
往復で12.5YTL(≒1,250円)。
10:00すぎくらいに船が到着。
待ち構えていた観光客がどっと乗り込む。
何かのガイドブックで進行方向の左側最後列に座ると船上から新市街が綺麗に見えると書いてあったような気がした。
そのアドバイスを思い出し、3層あった船の一番上へ行き、左側最後列の席を確保。
次々と乗り込んでくる人々。
地元民も利用するような船らしいのだが、殆どが観光客に見える。
10:35に船が発進。
旧市街をどんどん離れていく。
そして確かに左側に座ると新市街の海沿いの建築物が実によく眺められる。
ドルマバプチェ宮殿やチュラーンパレス、他にも何やら立派そうな建物が多数。
ただ、そうした有名な建物が見えると最初に座った席などお構い無しに観光客がどんどん押し寄せてくる。
押し寄せてきてはデジカメで写真を撮る。
アッチでもコッチでも競うように写真を撮り続けるので落ち着かない。
そこまで必死にならなくても・・・というような。
ボスフォラス大橋をくぐり、朝にバスの中から見たルメール・ヒサーリも通過。
この辺りまで来るともうそれほど見所が無くなってくる。
次第に船は落ち着き、航海が続く。
新市街側の港にとまり、アジア側の港にとまり…とジグザグに航海を繰り返して北上する船。
ボスフォラス海峡は頻繁に船が通っていて大型タンカーなどもいた。
1時間40分ほどかけて終点となる港に到着。
このまま戻ろうかと思っていたらとりあえず全員降ろされるらしい。
そして戻りの船は15:00発だと言う。
これは予想外の出来事だった。
現在の時間は12:00を回ったところ。
約3時間もこの港町にいなければいけない。
しかも15:00発ということはイスタンブール市街に戻れるのは16:30すぎということになる。
今夜はホテルすら予約していないのだ。
これは大きな時間のロスになる。
だが来てしまったものは仕方なく、とりあえずはこの港町で時間を潰すしかない。
港の周りには飲食店が乱立していて少し歩くだけで「ウチで飯を食っていけ」と客引きが付きまとう。
とりあえず港を離れて何か無いか探してみようと歩き出した。
だが少し歩いただけで例の強烈な陽射しにやられる。
ずーっと蓄積した陽射しによる日焼けがピークを迎えつつあった。
太陽にあたるだけで腕がヒリヒリ痛み、あまり行動したくなくなった。
それに加えて町の周りにもめぼしいものは特に無さそうだった。
ただの長閑な町…というより村といった感じ。
殆どボスフォラスクルーズの終着地として、帰りの船を待つ観光客の飲食代で賄っている村なのではないかと。
だからこそ帰りの船までの間に時間が空いているのではないかと邪推もしたくなる。
太陽にあたるのが嫌になってきたので声をかけてきた客引きのレストランへ。
屋根つきの2階の席に案内されて勿論ビール。
どうやらシーフードの店だったらしく、この旅で初めての魚介類を注文。
英語のメニューだったが恐らく魚の種類などが書かれた単語を見てもよく分からない。
ウェイターの言葉に適当にフンフン頷いていたら料理が出てきた。
必ず出てくるお通しのパン、サラダ、イカと貝のフライ、焼き魚はマス(?)。
イカフライと貝のフライは日本のてんぷらのような衣が付いている。
タルタルソースのようなソースにつけて食べるのだが、ヨーグルト入りなのかサワークリームのようにさっぱりしていて実に美味かった。
焼き魚も日本で食べる塩焼きの魚と全く同じで驚いた。
その焼き魚をナイフとフォークで骨を取り除いて食べるのは一苦労。
心から箸と醤油が欲しくなった私はまぎれもない日本人だ。
料理を食べ終わっても外へ出たくはなかった。
店内は空いていたので当分居座ってこれまでの旅日記の執筆など。
30分くらい前には乗船できるだろうと思い14:30には復路の船に乗り込む。
帰りの船での席は正直どこでも良くなっていた。
船が発進しても船内は全体的にどことなく気だるい雰囲気が漂う。
往路で感じたパワーが全く感じられない。
やはり皆も疲れているのだろう。
力尽きたようにベンチに横になって寝ている人も多数いた。
そういう私も復路はその半分以上を寝ていた。
夜行バスで朝一イスタンブールに着いたその足でボスフォラスクルーズ、そりゃ疲れるわ。
16:40すぎにエミノニュ桟橋に戻ってきた。
往復3時間以上の船旅と、何も無い港町で3時間の待ち時間。
予想以上に多くの時間をボスフォラスクルーズに取られてしまった。

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