トルコ一人旅

2007年7月22日 日曜日
起床は7時過ぎ、外はやはり快晴。
TVを付けてチャンネルを回しているとNHKのニュースをやっていた。
この日は7月22日の日曜日。
トルコで総選挙が実施される日だった。
NHKのニュースでもトルコ総選挙を取り上げていて、どこかで大規模な集会をやっている様子を中継していた。
政教分離だの軍の政治介入だなんだで政情不安になっているなかでの総選挙。
今回の旅の不安要素の1つではあったのだが現在までは何事もなく来ている。
このまま何事も無く過ぎれば良いが。
ニュース画面の下に英語でテロップが流れている。
ふと目に入った「decisive goal」の文字。
ん?ゴール?これはアジアカップの結果では!?
チョット待て、もう1回…。
暫くチャンネルを合わせていたらまた流れたその文字ニュース。
アジアカップ準々決勝の日本−オーストラリアは4-3でYuji Nakazawa decisive goalと。
これは雰囲気からして4-3で日本が勝利したっぽいがdecisiveの意味が分からない。
海外では無用の長物と化し、バッグの奥底にしまってあった携帯電話を取り出す。
携帯電話の辞書機能がこんなところで役立つとは。
「decisive」…決定的な、きっぱりした
決まりだ!まさにdecisive。
中澤の決勝ゴールでオーストラリアに勝ったということだろう。
非常に気分良く朝を迎えられた。
9:30、ホテルをチェックアウト。
ホテルを出て徒歩5分ほどでギョレメの中心部へ。
中心部のオトガル(バスターミナル)からイスタンブール行きのバスが出る。
夜行バスが出る20時までたっぷり時間がある。
オトガルでは荷物を預かってくれると聞いていたので乗車予定のバス会社のオフィスへ行って荷物を預ける。
預かってくれると言ってもカウンターの片隅に置いておくだけ。
仮に無くなっても大丈夫な着替え一式をまとめてビニール袋に入れたものだけを置いてきた。
それでも荷物の殆どは着替えなのでだいぶ身軽になって本日の行動開始。
最初に目指すのはギョレメ野外博物館。
岩山をくりぬいて作った岩窟教会が数多く点在する観光ポイント。
ギョレメの中心部から歩いて向かう。
午前中から相変わらずの強烈な陽射しのなか、野外博物館へ向かう1本道を歩く。
車も殆ど通らず、歩いているのもバックパッカーや現地人が僅かにいるだけ。
広大な大地はどこか北海道を思わせる。
奇岩があるか無いかの違いか。
20〜30分ほど歩くと土産物屋や飲食店が軒を連ねる所に到着。
だいたいどこでも観光地には土産物屋がつきものだ。
入場料10YTL(≒1,000円)を払って中に入る。
ギョレメ中心部からここまでに歩いている人は殆どいなかったのに中は団体客が多数。
そういえば駐車場に大型バスが何台も止まっていた。
日本人団体ツアー客もいたがその殆どが中年以上と思われるグループだった。
ギョレメ野外博物館はキリスト教徒がイスラムの迫害から逃れるために岩を掘って作った教会が数多く公開されている。
野外博物館自体の敷地も広く、広範囲にわたって歩かなければいけない。
おまけに坂も多くて実に疲れる。
既に30分近く炎天下を歩いてきたので少し歩いただけで早くも疲労。
日陰で休憩しつつ体力回復。
ツアーでない利点は好きなときに好きなだけ休めるところだな。
つくづく思ったのが人間は本当に暑いと水しか欲しなくなるということ。
常日頃から喉が渇いたらビール!と思っていたが今回ばかりは水。
ビールと水が並んでいても水を取っただろうというくらい水が美味しい。
ある程度体力が回復したら観光再開。
岩窟教会内部には様々なフレスコ画がある。
目鼻立ちがクッキリした絵が多く、見方によっては子供が描いたような絵にも見える。
所々キリストらの顔が剥げているのが多かったのは後世の人(イスラム教徒?)が敢えてやったものだろうか。
岩窟教会の中にああして書かれたからこそ価値のある物なのだろう。
他の所で見たらなんともないような代物でも、状況下によっては芸術になる。
辺り一帯の奇岩は野外博物館まで来なくてもギョレメ近郊にいくらでも転がっている。
岩をくり抜いた跡も私が前日に何の気になしに入った所からも分かるようにそれほど珍しいものではない。
やはり岩窟教会やそこにあるフレスコ画がメインの所だろう。
一通り観光した後にギョレメ中心部へ戻り、次に目指すはカイマクル地下都市。
これまで見てきたのが岩山をくり抜いて作った住居や教会だった。
次に行くところは地下を何層にも掘り進んで作った地下都市。
ギョレメからはバスを乗り継いで行く所だ。
バスはネヴシェヒルというカッパドキアの中心都市に向けて出発。
バスの中には車掌の役割を果たしているオジサンがいて、バス代金1.5YTL(≒150円)を払う。
ネヴシェヒルに向かうバスからでも広大な大地や奇岩がアチコチ。
所々停車しつつ町に近づく。
ネヴシェヒルはカッパドキアの中心都市なのでギョレメに比べると格段に発達している。
オトガル(バスターミナル)に到着し、車掌のオジサンに「どこへ行く?」と聞かれ「カイマクル」と答える。
そしたらバスの中で待て、と言われて車内で待つ。
バスの中を見ると私以外でただ1人残された若い男性が乗っている。
なんとなく目が合ったのでほぼ同じタイミングで「日本の方ですか?」と。
向こうは地球の歩き方を持っていたので間違いないとは思ったが一応礼儀として聞いた。
話すと彼はギョレメとネヴシェヒルの間にあるウチヒサルという所へ行きたかったらしい。
しかしバスが止まらずにここまで来てしまったと言う。
私はこれからカイマクル地下都市へ行く予定だと言うと、折角だから一緒に行くことになった。
バスの中で待っていると1台のバスが来た。
運転手に「カイマクル?」と確認すると「Yes」と言うので乗り込む。
ネヴシェヒルからカイマクルは思った以上に遠く、郊外の道をひたすら走る。
バスの中で彼と色々話しをする。
会社を辞めて次の仕事までの空白期間で旅をしていると言う。
モスクワ経由のアエロフロート航空でイスタンブールから入ってチェコのプラハから出るプラン。
トルコを出た後でチェコまでバスをメインに各国を旅するらしい。
ギョレメでは1泊10YTL(≒1,000円)の安宿ドミトリーに泊まっている筋金入りのバックパッカー。
少し話をしただけでこりゃ敵わないなーという旅歴の持ち主だった。
チュニジアやアルジェリア行って4ヶ国語辞典のフランス語で何とか乗り切ったなんて私にはとても出来ない経験。
私も見た目はバックパッカーなのだがホテルはしっかりした所に泊まっている。
飯もちゃんとレストランで食べるししっかり酒も飲む。
彼のような本物のバックパッカーに会ったときには何だか萎縮してしまう。
「どこに泊まってるんですか?」と聞かれて「日本から予約していった所なんですけどね」という時に感じてしまう劣等感。
自虐的に「いやぁ、自分は似非バックパッカーなんで」と。
まぁでもこうした旅のスタイルがあっても良いではないか。
今回の旅ではしっかり贅沢をしつつもバックパッカーがテーマなんだし(そうだったのか?)
バスは20分程で町へ入ってきた。
バスが停車して運転手が「Underground City」と教えてくれたので降りる。
多分コッチだろうと見当をつけて歩いていくと土産物屋っぽいのが連なっている。
カイマクル地下都市。
その成り立ちには謎の部分が多いらしいが迫害を恐れたキリスト教徒が住んでいたという説が有力だとか。
入場料10YTL(≒1,000円)払っていざ、地下都市へ。
入口に向かう階段を下りた瞬間に空気が一気に冷えた。
そして中はヒンヤリを通り越して涼しいくらい。
地下都市というよりも見事な洞窟。
完全に人の手によって作られたものというのが凄い。
観光できる範囲には電気が通っていたが、基本的に中は薄暗い。
人が1人通るのがやっとのような細い道(勿論すれ違えない)や屈まないと通れないような道が多数。
そうした細い道が坂になっていてさらに下層へ行ったり。
本当に映画の世界かゲームの世界かというような地下都市内部。
スターウォーズかインディージョーンズかロードオフザリングかドラゴンクエストかファイナルファンタジーか…というような光景。
奥へ行けばホビット族でもいるんじゃないかと。
順路らしき矢印が方々に取り付けられてはいるが、その気になればいくらでも迷うことができそう。
年間に何人か行方不明になっていても全く不思議じゃない。
細い路地を通ったときに脇道から縦に伸びている空洞を見つけた。
その空洞に頭を入れて上を見ても下を見ても完全な暗闇。
上下共にこの穴はどこまで続いているのかと背筋が寒くなった。
地下都市のフロアはどこも似ているので気が付くと同じところをグルグル回ったりしていた。
我々が行った時は人もあまりいなかったが、あれだけ狭い地下都市を大人数ツアーで回れるのだろうか。
気が付くと順路を2周くらいしていたのでそろそろ良いかと外へ出る。

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