トルコ一人旅
2007年7月21日 土曜日
時間は16時過ぎで外はまだ充分に明るい。
荷物で不要なものは整理して部屋においておき、町…ではない村へ出る。
まずはカッパドキアからイスタンブールへ戻る手段を確保しておかねばいけない。
行きは飛行機を予約しておいたが、帰りは夜行バスでイスタンブールへ戻ろうと思っていた。
トルコはバスの交通網が発達していて、長距離バスの旅が主流だという。
ギョレメの中心部にはバス会社の簡易オフィスが並んでいるところがある。
事前にネットで調べておいたバス会社へ行き、「Tomorrow night bus to Istanbul」と聞くと空席アリ。
夏の観光シーズンなのでもしかしたら取れないかもしれないという一抹の不安を抱いていたが杞憂だったようだ。
イスタンブールまで35YTL(≒3,500円)、飛行機に比べれば格段に安い。
チケットを発券してもらい支払い…になってトルコリラが殆ど無いことに気がついた。
前日に合計で約110YTL(≒11,000円)を両替しておいた。
しかし食費・観光地の入場料・交通費で綺麗にお金が無くなる計算だった。
クレジットカードで払えるか聞いてみると「Turkish cash only」だと言う。
仕方ないので少し待っていてもらい両替をすることに。
ギョレメに着いたばかりなので両替の出来る場所が分からない。
ツーリストインフォメーションへ行くと銀行の場所を教えてくれたのでそこへ向かう。
銀行を見つけて入ろうとするとどうにも人の気配が無く、ドアも開かない。
あ、今日は土曜日だった。
途方にくれていると目に入ったのが銀行のATM。
見るとVISAカードのマークもついている。
クレジットカードでキャッシングという手があった。
試しにカードを入れてみると言語選択画面が出てきた。
さすがに日本語は無かったので英語を選択。
暗証番号を入れるとどうやら引き出せそう。
希望の光が見えてきた。
引き出せる通貨もドル、ユーロ、トルコリラと豊富。
とりあえず50YTL(≒5,000円)あればバス代には事足りるので引き出してみた。
最後に暗証番号を入力すると…なにも起こらない。
2回同じことをやってみても結果は同じ。
希望の光が消えていく。
もう1枚持っていた別のクレジットカードで再チャレンジ。
同じ手順で50YTL(≒5,000円)引き出しボタンを押すと明らかにATM内で動きがあった音がした。
そして出てきた50YTL(≒5,000円)札。
やった!引き出せた!!
ただATMから金を引き出せただけなのにこの感動。
こんなの海外で切羽詰ってないと味わえない。
クレジットカードを2種類持ってきておいて助かった。
1枚が使えなくてももう1枚でなんとか凌ぐことが出来た。
(帰国後に確認すると使えなかったのは暗証番号が間違っていたかららしい、普段キャッシングなんてしないから暗証番号を誤って覚えていた)
無事に引き出せたお金でチケットを購入。
これでイスタンブールへの帰路を確保できた。
この日の目的を達したところでまだ時間は17時前。
近くにギョレメ一帯を展望できるギョレメ・パノラマなるヴューポイントがあるらしいのでそこへ行ってみることに。
地球の歩き方の地図とインフォメーションにあった地図を照らし合わせて場所を確認。
地図を眺めていると「May I help you?」と声をかけられた。
イスタンブールでの出来事から現地人不信になりかけていた私だったが声をかけてきたのはインフォメーションから出てきたオジサン。
素直に好意に甘えることにして、地図と英語で行く方向を教えてもらった。
向かう所は景色の良い所なので坂道を登っていかなければいけない。
イスタンブールでもそうだったがギョレメでも日差しが強烈。
おまけに高い建物など無いので遮るものが無く陽射しを直接浴びる。
ギョレメの中心部から10分ほど坂を上ると脇にそれる道があり、そちらへ行ってみると絶景。
看板も無く、車道でも無く、家も人も何も無い。
これが地球の歩き方に載っていたギョレメ・パノラマなのかは分からないがもうそれで良いと思わせる景色。
むしろ下手に観光地化されていなくて誰も人がいないこっちの方が良いくらい。
空気は乾燥しているので日陰に行くと意外なほどに涼しい。
日陰で休みながら絶景を眺める。
これで冷たいビールがあれば最高なのだが…。
すぐ近くに岩山がくりぬかれていて中に入れる場所があった。
明らかに人工的にくりぬかれた岩山だが、特に誰の所有物というのでもなさそう。
辺りの岩山を見渡しても窓のようにポッカリ空洞があったり、入口がある岩がゴロゴロしている。
あんな高いところにどうやって?などというのも多数。
これらは昔の人が作ったのが放置された結果なのか、それとも現在も何かに使っているのか。
私が入ってみた岩山の中は2重構造になっていて、天井に穴があってそこから更に上に行けた。
こんなものが道端に転がっているのだから凄い。
ちなみに中にはビールの空き瓶やタバコの吸殻。
どうやら考えることは皆同じらしい。
しばし休憩した後に今日の行動は終了にする。
ギョレメの中心部まで戻り、近くの売店で缶ビール500mlを2本(計5.5YTL≒550円)購入してホテルへ。
洞窟ホテルは岩造りなだけにひんやりしていて良いのだが、さすがに炎天下を歩いて帰ってきた後だとあまり効果はない。
窓を開けて気が付いたのが網戸のようなものが存在しないこと。
明るいうちはまぁ良いとして、暗くなってから窓を開けるのはかなり躊躇う。
部屋の中が明るいと虫が入ってきそう。
しかも特殊な気候の奇岩地帯、見たことも無いような虫が入ってきたらどう対処して良いか分からない。
そこで部屋にエアコンが無いことにも気が付いた。
洞窟ホテルはその構造上、あまり多くの電化製品を使えないようになっているとか。
唯一の欠点がそれだったか。
20:00過ぎ、ようやく少し暗くなってきた頃にホテルのレストランへ。
行ってみると先客が2組で、おまけにどちらも日本人カップル。
これまでギョレメでは日本人を見なかったのにこんな所で1度に2組に遭遇してしまうとは。
考えてみれば日本の大手旅行代理店のホームページで予約したのだから日本人がいることは容易に想像できた。
先述のようにこのホテルは老舗で高級の部類に入るホテル。
私のようにバックパッカー然とした1人者が泊まるホテルとは違う雰囲気。
周りが西洋人なら「それが何か?」と思えるが、周りに日本人しかいないと何故かやや肩身が狭くなる。
って何で卑屈にならなきゃいけないんだ!?
席に着くとウェイターがドリンクメニューを持ってくる。
予想はしていたがドリンクは別料金。
カッパドキア地方はワインの産地としても有名なのでワインを飲むつもりで来た。
1人でフルボトルを飲めるか不安だったが、メニューを見るとハーフボトルもあった。
ハーフボトルの方が安いし部屋に戻れば売店で買っておいたビールもある。
「CAPPADOCIA LOCAL WINE RED 350ml」を注文。
料金は15米ドルだった。
料理はコースでパン、オニオンスープ、パスタ、メイン料理、デザートと順番に出てきた。
ただ、実際に料理が出てくる時は次に何が出てくるのかが分からない。
必然的にワインを飲むペース配分もよく分からない。
メイン料理はその形状からギュヴェチという壷焼き料理だったと思われる。
ただそれがメイン料理だと分かったのはそれを食べ終わったら全ての食器を下げられたから。
アレ、これで終わりだったのかと少し物足りない感じ。
ワインも残っていたのでせめてパンくらいは残しておいた欲しかった。
全体的に量が少なかったが味は満足。
イスタンブールでの経験から外食をすると酒も含めて30YTL(≒3,000円)くらい無くなるのが常だった。
そう考えると飲み物が別料金とはいえ、宿泊代に晩飯込みと考えれば充分だった。
唯一の欠点はハエが多いということ。
クーラーが無いので外に繋がる窓やドアが開きっぱなし。
小さいのから大きいのまで常に2,3匹が飛び交っている。
最初はいちいち追い払っていたが、気にしていたら飯が食えないくらい。
ハエが多いことで有名なオーストラリアのジョークを思い出した。
・オーストラリアに来たばかりの奴は、ハエのたかったミルクを飲めない。
・1か月住んだ奴は、たかったハエを手で払ってミルクを飲む。
・3か月住んだ奴は、ハエのたかってないミルクは飲まない。
食後、酔い醒ましにテラスへ出てみると昼間の暑さが嘘のように爽やか。
空気が乾燥しているから蒸し暑さが全く無い。
星も月も綺麗によく見えた。
辺りを埋め尽くす奇岩風景といい、早くもカッパドキアは来て良かったなーと。
部屋に戻ってビールを1本、風呂上りにもう1本。
ダブルベッドに1人は贅沢だ。
えっ?寂しいって?