ネパール一人旅

2009年8月2日 日曜日
前日はカトマンズのチベット仏教系寺院を見たのでこの日はヒンドゥー教の寺院を見ることに。
カトマンズにはレンタサイクルがあるのでそれを借りることにする。
タメル地区のレンタサイクル屋。
タイヤの空気圧やブレーキの効き具合などを確認して1日250Rs(≒325円)のマウンテンバイクにする。
海外での自転車は9年前にタイのアユタヤを訪れたとき以来。
車通りが減った通りに出て試乗。
足も届くしブレーキも効くしスムーズに走る、問題なし。
目指すパシュパティナートはカトマンズ中心部の東。
コッチの方だと見当をつけて走り出す。
カトマンズには殆ど信号が無いため、車が縦横無尽に走り回る。
おまけに何度も書くがアスファルトがちゃんとしていないために砂埃も舞う。
前後左右の車に注意しつつも、道が悪くて窪みがあったりするので下にも注意しながら走らなければならない。
スムーズに走れはするが、周囲にも気をつけなくてはならないのでかなりスリリング。
それでも車が少ない道では風が気持ち良くて快適。
途中で現地の人に2度ほど道を聞いて30分ほどでパシュパティナートに到着。
入場券を買う窓口の脇に自転車を止めさせてもらい、500Rs(≒650円)払って中へ。
パシュパティナート寺院はヒンドゥー教徒しか入れないらしく、観光客は寺院入口手前の門までしか行けない。
インドでもヒンドゥー教徒しか入れない寺院がいくつかあった。
その辺りヒンドゥー教は厳格なのか?
高い入場料払っているわけだし、入れてくれても良いのに…と思うのは旅行者の驕りだろうか。
パシュパティナートの寺院以外の見所はなんといっても火葬場。
インド・ヴァラナシのガンジス河の支流に当たるバグマティ川が流れ、その川岸に火葬場がある。
火葬をするためのスペースが並んでいて、行ったときも2体が火葬の最中だった。
ヴァラナシのガンジス河で火葬を見るのは物見やぐらみたいな所から眺めるだけで近くには行けなかった。
しかしパシュパティナートでは目と鼻の先で火葬をやっている。
ヴァラナシでは火葬の際の撮影は厳禁だと現地人に注意された。
しかしパシュパティナートでは観光客がバシバシ写真を撮っているし咎める者もいない。
燃えている火の中に生足や黒コゲの頭などが見えてかなりリアル。
間近で火葬を見るのならインド・ヴァラナシよりもネパール・カトマンズがお勧め。
観光客も少ないし、寄ってくるガイドも少ないし、写真撮影制限などもない。
一通り散策してから次に目指したのはカトマンズ郊外にあるパタン。
過去に王宮があった古都で、印象的な建築物が数多く建てられているという。
カトマンズの中心部から南へ行った所にあるパタン。
車道は車が多くて危険なために歩道を走る。
しかし歩道もちゃんと整備されていない所が多くて走り辛い。
段差が多くてその度に一旦自転車から降りて自転車を持ち上げて段差を越えなければならない。
乗って走って降りて運んで乗って走って降りて運んで…を繰り返す。
200Rs(≒260円)の入場料を払ってパタンに入り、中心部のダルバール広場へ。
カトマンズの中心部にあるのもダルバール広場。
ダルバールとは「宮廷」という意味だとか。
カトマンズにもパタンにも王宮があったわけだからどちらも街の中心がダルバール広場で問題ないわけだ。
自転車でダルバール広場周辺をウロウロして止める場所を探す。
ガイドブックにはレンタサイクルは盗難に注意と書いてあった。
レンタサイクル屋のおじさんも確実にワイヤーロックをかけろ、というようなことを言っていた。
路駐している自転車は沢山あったがどれも現地人が乗るような古びた小汚い自転車ばかり。
傍目にも私が借りた自転車はかなり綺麗なマウンテンバイク。
こんな所に止めたらアッという間に盗まれていきそうな気がする。
人目につかないところに止めた方が良いのか、逆に人目があるところに止めた方が良いのか。
迷いつつも衆人環視の所の方が安全なような気がしたのでそこに止める。
タイヤだけでなく、近くの柵にもワイヤーロックを結び付けようとワイヤーを伸ばす。
すると手応えがあってワイヤーロックの鍵の部分がスポッと抜けてワイヤー部と鍵の部分が完全に分離した。
えっ!?鍵が一瞬で使い物にならなくなってしまい、しばし呆然。
あろうことか鍵が壊れるとは…
それっぽくくっつけて鍵がかかっているように見せることはできるが、引っ張ればすぐに抜けてしまう。
こんな状態で自転車を放置しておくのはあまりにも危険すぎる。
自転車での移動は悪くなかったがこうした事態は想定外だった。
パタンに着いてから昼飯を食う予定だったが、自転車が止められなくては飯も食えない。
パタンはガイドブックの印象で古い建物が点在したのんびりした街かなーと漠然と想像していた。
しかし実際はカトマンズと大差なく、車がクラクションをひっきりなしに鳴らして走り去る。
古い建物もカトマンズ中心部にあるのとそう見分けがつかない(…のは私の美観の無さゆえだろうが)。
自転車を置いてゆっくり歩きたい気持ちはあったが、例えば翌日に改めてまたタクシーで来るほどの所でもない。
まぁこんなものだろうか、というのが正直な感想だった。
自転車を止められないのでカトマンズに戻ることにし、敢えて帰りは違う道を走ることに。
こちらの方向だろうと適当に走っていたらどんどん車通りが少なくなる。
引き返そうにもだいぶ走ったし戻るのはなんだか癪だ。
方位磁針見ながら北西に行けばカトマンズ中心部のはずだと確認しながら進む。
それでもなかなか大通りに出ず、次第に焦りが募る。
落ち着け落ち着け、未だ陽は高い(15:00過ぎ)、冷静になれと自分に言い聞かせる。
ようやく見かけた通行人のオッちゃんにカトマンズはこっちの方向で良いかを聞いてみる。
人の良さそうなオッちゃんがにこやかにYESと答えてくれたので一安心。
と思って進んだ先が分岐になっていてどっちがカトマンズなんだか分かりゃしねー。
とりあえず北西に向かう大きい道を目指して闇雲に自転車を走らせる。
次第に車通りが多くなり、先に信号が見えてきた。
カトマンズで信号があるというのは相当大きな通り。
行ってみると助かった、来た時に通った道に出た。
生き返る思いでカトマンズ中心部へ通じる道を走る。
するとポツポツと大粒の雨が降り出す。
これはスコール来たぞと思うやいなや商店の軒下に避難。
幸いにして進めなくなる位の雨ではない。
雨季の国へ行くので持参した折り畳み傘が初めて活躍。
慣れない国の慣れない道で傘差して片手運転は恐かったので自転車は押していくことに。
前日の例もあって小1時間もすれば止むだろうと思っていたがなかなか止まない。
次第に雨脚は強くなっていき、ドシャ降り状態に。
日焼けして痛む腕に雨水が気持ち良いのが唯一の利点。
自転車を押して進むのも辛くなってきて軒下に避難。
…しようとするも屋根があるような所は同じように避難している現地人が多数占拠。
ようやく見つけた軒下の隙間に入ってしばらく静観。
初めて雨季の国の本格的な雨に遭遇した。
不幸中の幸いだったのは帰り道が分かっていて遭遇した雨だったということ。
この雨があと数分早ければ道に迷った状態で豪雨に見舞われるところだった。
30分くらい雨宿りをしても止む気配が無い。
これは進むしかないと判断して傘を差しつつ再び歩く。
傘を差しているがそれほど大きくない折り畳み傘、下半身は完全にビショビショ。
大通りは川のように水が流れ、歩道も足首まで水に浸かるほどの状態。
こういう時はサンダルで来て良かったと思う、サンダル万歳。
どうにかカトマンズ中心部まで戻っくると雨も小降りになっている。
貸し自転車屋に着く頃にはスッカリ上がって青空まで見えている。
雨季の国の雨はこういうものだとなんとなく分かってはいても不思議な思いでいっぱい。
自転車を返却する際に鍵が壊れたことを伝えておく。
日本だととりあえずスミマセン、と言ってしまいそうな状況だが鍵が勝手に壊れただけでコッチに非は無い。
外国では謝ってしまってはこちらに非があることを認めてしまいそうだったので淡々と事実だけを告げた。
すると何度か鍵をいじくり回した後「Ok,No problem.」と意外にアッサリ引き下がった。
思わず「Sorry」と言いそうになったが、イカンイカン。
当然そうだろ、という顔をして立ち去った。
昼飯も食えない状況で道に迷い大雨に見舞われてようやくカトマンズに戻ってきた。
晩飯はガイドブックに載っていたローカル食堂。
カトマンズで定番となったモモをつまみにビールを飲んでようやく心の底から落ち着けた。
この日のようにいくらかの困難にぶつかるとその国や旅が嫌になりかける瞬間がある。
しかしそれを乗り越えて一息ついてビールを飲む時、それも含めてこの国や旅が改めて好きになっている自分がいる。
この瞬間こそまさに旅人としてのレベルが上がっているのかもしれないなと思う。
前日は方々を歩き回り、この日は方々を自転車で駆けずり回った。
そういえば今回の旅のテーマは少しゆっくりする、じゃなかったっけ。

次へ
ネパール一人旅一覧
最初のページ