ネパール一人旅
2009年8月1日 土曜日
カトマンズで迎える初めての朝。
空は雲こそ多いが太陽も出ている。
雨季だから天気は心配だったが今のところは問題無さそうだ。
前日にあてもなく歩いたことでカトマンズ中心部は歩いて回れる範囲だということが分かった。
この日はカトマンズの少し郊外にある2大チベット教の寺院へ行くことにした。
ネパールは東西南をインド、北をチベットに囲まれた国。
それゆえにインドのヒンドゥー教とチベット仏教が混在した独特の宗教観を持っているとか。
宗教が人々の生活の中にどの程度浸透しているのか、数日しか滞在しない旅人に推し量ることは出来ない。
しかしカトマンズの中心部でもヒンドゥーの神様を祭った祠もあればチベット仏教の仏塔もすぐ近くにあったりする。
その辺りを見ているとヒンドゥー教とチベット仏教が調和を保っているというのもなんとなく頷ける。
この日と翌日はカトマンズのチベット仏教とヒンドゥー教の主要施設をそれぞれ見ようと思った。
というわけでこの日のテーマはカトマンズのチベット仏教系寺院。
カトマンズを中心にして西にあるスワヤンブナート寺院と東にあるボダナート寺院。
ガイドブックによるとスワヤンブナートはカトマンズから約2kmで歩いても30分くらいとのこと。
バンコクでも2時間以上歩いたし、30分なんて余裕で徒歩圏内だ。
9:20頃にホテルを出て歩く。
地図を見るとスワヤンブナートまでカトマンズの中心部タメル地区からはほぼ1本道。
相変わらず騒々しいクラクション音と舞い散る砂埃の中を歩く。
途中で川を渡ったが、川岸が巨大ゴミ捨て場になっているらしくゴミの山が出来ていた。
カトマンズ中心部を離れると旅行者らしき人は殆ど目に付かなくなる。
1本道を歩くだけなので迷うことなくスワヤンブナートが見えてくる。
高台にある寺院なので所々で上り坂がきつい。
ガイドブックにあった通り30分ほどで入口に到着。
人が増えて客待ちタクシーが列を成しているのですぐに分かる。
到着かと思いきや入口から本堂まで長い階段を登る必要がある。
結構急勾配な石段なのに加えて高さもまばらな階段なのでかなり疲れる。
その階段を登りきって入場料100Rs(≒130円)払ってようやく到着。
ドーム型の半円形の上に仏陀の目が描かれた仏塔(ストゥーパ)が立つ。
この形のストゥーパがチベット仏教の典型的な形らしく、カトマンズの街の中心部にも小ぶりなストゥーパが立っている。
スワヤンブナートでは大勢の現地人の他にカトマンズの街では見かけなかった日本人団体ツアー客も。
高台にあるスワヤンブナートは所々に展望台もあり、そこからカトマンズの全貌を見渡せる。
東西南北どこを見ても山に囲まれており、見事に盆地だということが分かる。
盆地とはいえカトマンズは標高1,300メートルに位置する。
湿気は無く陽射しは強いが風は涼しく心地良い。
西にあるスワヤンブナートの次は東にあるボダナートへ行く予定。
その前に一旦カトマンズ中心部に戻って昼飯がてら休憩。
ガイドブックに「地元の知る人ぞ知るチベット料理の有名店」と紹介してあったローカル食堂へ。
本当に「知る人ぞ知る」らしく、店内に客は殆どいなかった。
でも往復1時間ほどかけて歩いた後なのでビールさえあればなんでも美味しく感じる。
注文したのはネパールの定番定食セット・ダルバートのノンベジ160Rs(≒208円)。
インドで食べたターリーという定食と同じように米・野菜・肉・ナン・スープなどがセットになった一品。
見た目から想像していたようにインドのターリーのようにカレー風な味付けだった。
予想以上の量が出てきてビールで流し込むのがやっとでご飯に至ってはそれでも全部食べきれない。
値段から考えても充分すぎる量。
インドでターリーを食べたときにも思ったが、こうした定番の定食があると旅行者にとっては安心。
最悪の場合はコレ頼んでおけば外れは無い、という風に思える。
ビールと食事で生き返り、改めてボダナート寺院を目指す。
午前中はかなり歩いたし、ビールの酔いもあったのでボダナートへは素直にタクシーを使うことに。
ガイドブックにはタメル地区から150Rs(≒195円)程と書いてあったのでそれを参考に。
タクシーが密集している所へ行き「ボダナート?」と聞くと「Ok,200Rs(≒260円)」と言われる。
「No 150Rs(≒195円)」と答えると向こうはアッサリ「OK」と。
一発目でアッサリOKってことはもっと吹っかけても良かったんだなと思った。
整備が行き届いていないような道路で砂埃を上げながらタクシーは走る。
30分ほど走った街中で止まり、そこを行けばボダナートだと言われてタクシーを降りる。
エッ?ココ??と思ったが料金100Rs(≒130円)払って入った門の先に見えるはまさにガイドブックにあるそれそのもの。
ネパール最大にして世界的に見ても最大級のストゥーパ(仏塔)が立つボダナート寺院。
事前にガイドブックで見ていた写真では広大な広場にドーンと建っているのかと思った。
しかし到着したボダナートは土産物屋やレストランが軒を連ねる街の真ん中。
気分も良くなりボダナート周辺をウロウロ。
スワヤンブナートが高台にあったせいか、街中にあるボダナートはやや拍子抜け。
それでも大きさから言えばボダナートはかなり大きい。
世界最大級のストゥーパ(仏塔)にしてチベット仏教の中心地というのも頷ける。
高台にあり、周囲にあまり目立つ建物が無い西のスワヤンブナート。
世界最大級のストゥーパ(仏塔)を誇るが、周囲は意外に世俗的な東のボダナート。
どちらもカトマンズにおけるチベット仏教のあり方なのかと思えばそれはそれで良いのかも。
帰りも面倒だからタクシーだなーと思ってボダナートを出るとすぐに声をかけてくる客引き。
やはり150Rs(≒195円)でアッサリ交渉成立。
インドに比べると覇気が無さ過ぎてやや物足りなく感じてしまう。
ホテルの近くではなく、カトマンズの中心部であるダルバール広場で降ろしてもらう。
ダルバール広場にある「クマリの館」。
前日に来た時には気にも留めていなかったが、あとでガイドブックを読んで考えを改めた。
クマリとはネパールの女神で、ヒンドゥー教の神様・仏教の密教の神様・ネパール王国の守護神が宿るとされる。
そのクマリの化身として崇められる少女が住むのがクマリの館。
クマリになるには特定のカーストの中から病気や怪我が無く、聡明利発の初潮前の少女が選ばれるという。
そして家族からも隔離され、ひたすらクマリになるための修行を積まされるのだとか。
現代にそうした風習が残っていることが驚き。
そのクマリが生活し、祈祷や占いなどを行うのがクマリの館。
外観と中庭しか見ることが出来ないが、とりあえず入ってみる。
ガイドブックによるとクマリの世話人にしかるべきお布施を渡すと、一瞬だけクマリが中庭の窓から顔を出してくれるという。
金を払えば生き神様が拝めるというのもまさに現金な話だ。
とりあえず中庭に入ってみると無数いるガイドが突然「No photo! Kumari coming.」と連呼しだした。
え?クマリが出てくる?
すると中庭に面した3階の窓から赤い衣装をまとった幼女が顔を見せた。
顔を出してキョロキョロと辺りを見回して数秒ですぐに奥に引っ込んでしまった。
それにしても何の気なしに入ったクマリの館で実物のクマリを拝めるとは思わなかった。
誰かがクマリの世話人にしかるべきお布施を渡したのだろうか。
どちらにせよついていた、ということだろう。
隣のガイドがクマリのために募金を、と言う。
ガイドに手渡しではなく、備え付けの賽銭箱に入れれば良いとのことだったので10Rs(≒13円)札を入れておく。
クマリの館を出るとこの旅で初めての雨が降ってきた。
大粒の雨でいかにも雨季っぽい夕立のよう。
慌ててダルバール広場の寺院軒下に避難。
ガイドブックを眺めていると現地の少年2人が覗き込んできた。
写真を指差してコレは何々だ、コレはホニャララだと楽しげ。
ガイドブックの写真を眺めながらお互い片言の単語だけでの会話だったが小さな交流。
10Rs(≒130円)頂戴、とか抜け目ない一面も憎めない。
勿論10Rsあげることはせず、持っていたミントタブレットを数粒あげてごまかす。
思わぬ雨で思わぬ交流が生まれ、ちょうど良い時間つぶしになった。
もしかしたら生き神様クマリがもたらしてくれた縁かなと思う。
1時間もしないうちに雨は上がる。
前日は闇雲に歩いたカトマンズ中心部を地図を元にちゃんと歩いておおよその街の配置を理解。
外国人旅行者が集まるタメル地区よりも、現地人が集まるインドラチョーク・アサンチョークの方が活気が物凄い。
何よりも人の数が全然違う。
小汚い建物が密集し、路上では様々なものが売られ、人が入り乱れる。
その中を時折バイクや自転車が通り抜けようとし、車まで現れてクラクション鳴らして通ろうとする。
良く言えば活気がある、悪く言えばうるさすぎる。
一国の首都の中心部がこうした状況。
まさに発展途上国ここにあり、といった感じ。
晩飯はタメル地区で目に付いた最も高い建物というレストランの屋上で。
完全に外国人観光客向けのレストランだったので値段もそこそこ。
タンドリーチキン、野菜モモ、エベレストビールで750Rs(≒975円)ほど。
夜のタメル地区を歩いていると案の定「ハッシシ?レディー?」等の危険なお誘いも。
そういえばカトマンズはヒッピーの3大聖地の1つだったということを思い出した。
→次へ
←ネパール一人旅一覧
←最初のページ