インド一人旅
2008年7月30日 水曜日
ずっと横になっていると腰が痛くなってくる寝台。
眠りながらもエアコンの冷気が毛布の下から入り込んで寒く、結局毛布にくるまって眠っていた。
起きると喉がやたら痛い。
エアコンの乾燥でやられたか、まさか風邪は勘弁してほしい。
外は好天、6時過ぎだが平地に家が点在するインドの大地には早くも人がチラホラ。
朝のインドの車窓から眺める景色はなかなか面白く、噂には聞いていたが野糞をしている姿も散見された。
列車のほうを向いてやっていたり、列車にケツ向けてやっていたり。
野糞よりも興味深かったのが担架を豪華に飾りつけてお祭りのように練り歩いていた集団がいたこと。
担架の膨らみからすると恐らくは葬列と思われる。
アグラでも1度このような光景を見たが、どちらも賑やかにワイワイやっていた印象。
輪廻が信じられているインドでは葬列は湿っぽい儀式では無さそうだ。
定刻の7:30に列車が駅に着いた。
インドの列車は遅れるものだと思っていたので本当にヴァラナシなのか信用できなかった。
隣の乗客に聞いてみると確かにヴァラナシだという。
ヒンドゥー教徒が目指す聖地ヴァラナシ。
そもそも何故ヴァラナシがヒンドゥーの聖地なのか。
まずはガンジス河がヒンドゥー教徒にとって聖なる河として崇められている。
日本人にとっての富士山のようなものらしく、それ自体が信仰の対象となっている。
そのガンジス河で沐浴をすれば罪が全て洗い流されて正しい輪廻が出来ると信じられているという。
そしてその長大なガンジス河がヴァラナシでは南から北へ流れている。
それが「天に昇る」ということと繋がり、ヴァラナシが聖地とされる所以だとか。
インドといえばガンジス河、ということで少しだけ勉強して得たにわか知識。
ともかく到着したヒンドゥーの聖地、「ようこそ!"ヒンドゥーの聖地"ヴァラナシへ!」みたいなアピールがあっても…
もしかしたらヒンドゥー語ではあったのかもしれないが。
相変わらず駅構内でもリキシャーがアレコレ話しかけてくるがまずはトイレに行きたかった。
入口でお金を払うヴァラナシ駅のトイレ。
相場が分からなかったので黙って5Rs(15円)出したら何も言われなかったので問題ないのだろう。
有料とは思えない汚さのトイレ。
和式風のトイレの個室、さっさとやってさっさと出ることしか考えられない。
心配していた大はやや軟ではあったがしっかりと排泄。
逆に日本にいたときよりも量が多く、健康的にモリモリと出た。
紙は当然置いてなく、日本なら紙がある位置にチョロチョロと水が出ている。
インド式トイレの処理方法はそのチョロチョロ水を使って左手で。
さすがにそこまでやる度胸はなく、日本から持参した紙を使ってしまった私はインドに染まることが出来ないだろう。
一通りの処理を終えて出ようと思ったが、トイレのどこにも流す仕組みが無い。
便器の中は常に少量の水が流れているが、私の屈強な大は頑として流れようとしない。
チョロチョロ出ている水を手ですくってかけて流そうと試みるが焼け石に水。
このまま大を放置して行くわけにもいかない。
目に付いたのは飲料用の水が入ったペットボトル。
2リットルの半分以上がまだ入っている。
背に腹はかえられぬ、勢いよくペットボトルの水をぶっ放したら一応大は見えなくなった。
このタイミングしかない!後は知らない!ゴメンナサイ!
ドアを開けると待っていた現地人がいて、すぐに私の後に入っていった。
やべっ!慌てて逃走。
マレー鉄道縦断の旅でもシンガポールのトイレで大が流れずに同じようなことをしたのを覚えている。
どうも旅先での大には因縁があるようだ。
なるべくトイレから離れようとさっさと駅の外に出る。
なるべく駅からも離れた方が良さそうだ。
最初に声をかけてきたリキシャードライバーと交渉。
ガンジス河まで70Rs(210円)と言うところを60Rs(180円)にしてもらい出発。
交渉して安くするよりもとにかく駅から離れることが最優先だった。
ガンジス河と言っても大きいのでどこへ行く?と聞かれたのでとりあえず大きなガートへと答える。
ガートとは河沿いに設けられた階段のようなもの。
ガンジス沿いにはこのガートが沢山あって皆そこで沐浴をする。
デコボコでガタガタの道路をリキシャーは走る。
15分ほど走って辿り着いたのは何故か小さなゲストハウスの前。
中からオジサンが出てきて、リキシャードライバーは「ここへ泊まると良い」と言う。
リキシャーに乗ったらドライバーが懇意にしているゲストハウスに連れて行かれるのはよくあるパターン。
「No, I just want to go Ganga!」と強く言うと案外あっさり引き下がった。
ガンジス河は現地ではガンガーと呼ばれる、以後の表記も現地に倣ってガンガーとする。
目指すガンガーはそのゲストハウスのすぐ裏にあった。
タージマハルのように行くぞ行くぞと気持ちを昂ぶらせる暇もなくいきなり目の前に現れたガンガー。
あぁこれが目指していたガンガーかーと無理やり感慨にふける。
予想していた通り大きく透明度0%の濁流で、やはり雨季だからか水嵩は多いように思えた。
階段が河の中まで続いているガート。
全身泡だらけになって身体を洗っている男がいたり、頭まで河に浸かって沐浴をしている人もいる。
ガイドブックと照らし合わせると最も有名なダシャーシュワメードガートからは離れている。
地図を見ると歩けない距離では無いし、まだ朝の8時30分過ぎで時間も充分ある。
朝のヴァラナシを歩くことにした。
路地裏と思われる道には噂に聞いた通り普通に牛がウロウロしている。
ヒンドゥーで聖なる動物とされる牛はヒンドゥーの聖地では更に聖なる動物とされているとか。
道の真ん中で寝ている牛もいたが、ある現地人がその牛の頭を触って拝む仕種をした。
初めて牛が聖なる動物たる扱いを受けているのを見た瞬間だった。
聖なる動物が普通に徘徊しているので、道には巨大な糞がたくさん。
前を歩いていた牛が立ち止まったかと思ったらその場でボタボタと、なんてシーンもあった。
ヴァラナシは牛と糞だらけという話も聞いていたがあながち間違いでもない。
歩いているとココでも声をかけてくる現地人。
ガイドじゃないと言いつつ並んで歩き勝手に喋りだす。
あの建物のあの彫刻はサンスクリットのホニャララで〜。
話を聞いてしまうとその気がなくてもガイドされたことになってしまいそう。
説明はいいから先へ行ってくれと促してようやく解放される。
一大観光地であるヴァラナシはこうして声をかけてくる連中も沢山いる。
前から歩いてきた若者がこちらへ寄ってきて声を潜めて言う、「マリファナ?ハッシシ?」
今はどの程度盛んなのかは知らないがヴァラナシはドラッグでも有名な場所。
観光客や他の現地人も歩いている場所なので恐怖は無かったが、そんなところで普通に声をかけてくるとは。
オランダのアムステルダム駅構内で同様に声をかけられたことを思い出した。
ガンガーに沿った建物沿いの小路を北上する。
開けた所に出たのでガンガーへ向かって歩く。
河へ近づくと一気に観光客の数が増えた。
ガートには物乞いが段々に座ってひたすら手を出してアピール。
日本語で話しかけて来るガイドもどきも登場。
調べるとどうやらここが最も有名なダシャーシュワメードガートらしい。
河では大勢の人がちゃんと(?)沐浴していたり、ただ水浴びに見えたり、身体洗っていたり、子供ははしゃいで泳いでいたり。
とにかく人でごった返していて「ヒンドゥーの聖地で沐浴」たる神聖なイメージは全く感じられなかった。
早朝の昇ってくる朝日に向かっての沐浴が最も神聖らしいので、そのタイミングで見ていれば違っただろうか。
とりあえず私もガートの下まで降りてみる。
可能であれば沐浴してみたいなとは思っていた。
しかし透明度0%の濁流に全身浸かり、老若男女国籍不明の人々でごった返している中で服を脱いで、どこぞのガイドもどきに荷物を預けてまで沐浴する度胸はなく。
かといってココまで来て全く浸からないのも勿体無い。
というわけでサンダルを履いたまま足をガンガーに浸けようとする。
すると日本語で「ダメダメ、ガンガーは神様だから」とガイドもどきの兄ちゃんに怒られた。
でも現地人っぽいオッサンは明らかに私より小汚い靴で河に浸かってるんだが…。
仕方なくガートの隅っこへ行き、サンダルを脱いでガンガーに入ってみる。
雨季で水が増えていて水の中でもまだ階段は続いているよう。
2,3段降りて水が膝まで浸かるくらい。
膝下までのハーフパンツの先が濡れたが構いやしない。
思ったよりヒンヤリして気持ちよかったガンガー。
だけどゴミかコケかヌルヌルしたものが足に絡まって気持ち悪い。
ガイドブックによると汚く見えるガンガーだが、"聖地"を立証するデータもあるという。
真水だと24時間生きられるコレラ菌がガンガーだと数時間しか生きられないとか。
情報の真偽はともかくとして、単にコレラ菌よりも強烈な菌がガンガーにいるからだとしか思えない水の汚さ。
いずれにせよこれで足だけは罪が全て洗い流されて正しい輪廻が迎えられることでしょう。