欧州旅日記

2月9日 金曜日
列車は7時10分発、まだ夜も明けきらぬ暗いうちにホテルを出てプラハ本駅へ。
インフォメーションでウィーン行きの列車の出るプラットホーム番号を教えてくれた。
朝早い列車だったので空いていたのが良かった。
しばらくすると車掌が乗車券の検札に来た。
乗車券を見せた際に車掌に聞いてみた「この列車はウィーンへ行くか?」と。
すると「ウィーンへ行くならこの車両ではなくてもう2つ後ろの車両だ」と言う。
車両によって行く所が違うのか?とにかく車掌の言うことを信じて2つ後ろの車両へと移動した。
しばらくすると駅員に、「Change train.」と言われた、どうやら乗り換えをするらしい。
しかし乗り換えろと言われて乗ったその列車はどう見てもローカル列車、なんと2両編成なのだ。
何かおかしいような気がした。
オーストリアの首都ウィーンへ行く列車がこんなローカル線なのだろうか。
入念に鉄道時刻表を調べた結果、どうやら我々は乗り換えさせられた駅の1つ手前の駅で乗り換えるべきだったらしいことが判ってきた。
そして現在乗っているローカル線はどうやらオーストリア第2の都市ザルツブルグへ行くらしいことも判った。
乗り換える駅を間違えたらしい、まずいぞ。
こうなったらこのままザルツブルグへ向かうことにした。
ザルツブルグはモーツァルトが生まれた街で観光都市。
観光都市ならば滞在するのに特に問題はないであろう。
それならばザルツブルグで一泊して、そこからイタリア入りすることにした。
時刻表を調べてイタリア行きの列車の有無を調べる。
どうやらザルツブルグからでも巧くイタリアへ入国する列車はある。
頭の中で冷静に状況把握し、今後の予定を練り直すことによってこの状況から脱出しつつあった。
どこかの駅でどうやらオーストリアとの国境らしく、軍人がパスポートチェックに来た。
いつものように問題なくチェック終了。
パスポートチェックを終えるとまたどこかのローカル駅で降ろされて「Change train.」だと言う。
そこのローカル駅で待っていたのはちゃんとした近代的な特急列車。
これでどうやらザルツブルグへ行けそうだ。
安心してその特急列車で眠っていた。
しばらくすると車掌の検札で起こされる。
車掌に「どこまで行くのだ?」と聞かれたので「ザルツブルグ」と答えると、車掌は怪訝そうな顔をする。
そして「ザルツブルグへは行かない」と言う。
車掌に「ザルツブルグへ行くならとりあえず次の駅で降りてザルツブルグ行きの列車を待て」と言われた。
そして次の駅で降ろされた…
駅の周りには民家しかない…
駅員が1人だけいたので、ザルツブルグへ行きたいというとザルツブルグ行きが来るのは1時間後くらいだと言う。
途方に暮れた、恐らくその列車に乗るとザルツブルグ着は夕方頃になってしまう。
それから両替をし、ホテルを探しもしなければならない。
駅の待合室にその駅の時刻表が貼ってあった。
確かにザルツブルグ行き列車が来るのは1時間後。
時刻表を眺めると多くの列車が出ているターミナル的な駅が現在いる駅の近くにある。
数分後に現在いる駅からそこのターミナル駅へ行く列車が来る。
そしてそのターミナル駅からはウィーン行きの列車も出ていることが判った。
何もない駅で1時間もザルツブルグ行きの列車を待つよりも、数分後に来る列車に乗ってターミナル駅へ行ってウィーン行きの列車に賭けてみることにした。
そう決断して数分後に来た列車に乗ってそのターミナル駅であるLinz駅へ。
Linz駅からウィーンへ行く最も早い列車に乗れば16時42分にウィーンへ着くことが判った、それだ。
Linz駅は結構大きなターミナル駅なので駅構内に銀行もあったので両替も出来た、オーストリア通貨・1シリング≒8円。
だんだん狂った歯車が元に戻ってきたような気がしてきた。
そして待望のウィーン行きの列車にようやく乗れた。
16時40分過ぎにオーストリア・ウィーン西駅に到着。
遠かった、実に遠いウィーンだった…
プラハから最初の予定通りに行っていればウィーン到着は13時だったのに…
何はともあれ当初の予定通りにウィーンに到着したわけだから当初の予定通りに行動することが出来る。
ウィーンで一泊して翌日夜の夜行列車で最後の国イタリアのローマへ行く。
明日の夜までウィーン観光が出来るので敢えてウィーンは1泊にした。
そしてイタリア・ローマで2泊して帰国の途につく。
とうとうこの旅の終わりが見えてきた。
この旅最後の国境越え列車のチケット購入、無事に寝台車のチケットを買うことが出来た。
ホテル探しをする労力はさすがになかったので駅構内のインフォメーションで紹介してもらった。
1000シリング(≒8000円)のホテル。
駅から10分ほど歩いてそのホテルへ到着。
ホテルで小休止をし晩飯を食いに行くことに。
疲れていたので何よりも生ビールが最高に美味かった。
確実にこの旅で1番波瀾に満ちた1日だっただろう。
ウィーン行きの列車を乗り間違え、修正の為に乗ったザルツブルグ行きの列車すら間違えた。
それを更に修正をして結局最終的には当初の予定通りにウィーンに到着。
180度間違ったのを更に180度間違えて結局360度で元に戻った、みたいな感じだな。
鉄道時刻表を見ながら考えたあの機転は我ながら大したもんだと思った。
こういうトラブルやそれへの対処も自由旅行ならでは、良い経験になった。

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