セラピーを受けに来て下さる方からよく聞く言葉にこんな言葉があります。
「これはわたしの性格だから、、、」
「(苦しい)原因はわたしの性格から来ているのだと思います」
この言葉を聞くと、わたしの心の中にいくつもの「?」が浮んでくるのです。はて、「性格」とはいったい何なのでしょうか???
この言葉を思わず口にしてしまう方は、その心の奥に次のような無意識の前提を持っているようです。その前提とは、
「性格は変わらないもの」
というものです。
もしあなたが今感じている辛さ、生き苦しさの原因があなたの性格によるもので、その性格は変わることのないものだとしたら、辛さや生き苦しさは永久に変わらないことになります。もしそうだとしたら、人生がこれからまだ何十年も続くと考えただけで、生きていくのが嫌になってきますね。自殺したくなってしまう人がいるのも、よくわかるような気がします。でも、本当にそうなのでしょうか?
実は、性格とは生まれ持ってきた何かで、一生変わらないものではないのです。もっとはっきり言えば、あなたの性格というのは、あなたが無意識に選びとっているものなのです。
人間は生まれてきた最初の数年間に、周囲の人たちとの人間関係の中で、どんな状況のときにはどんなふうに振る舞えばいいのか、どんなふうに振る舞えば周囲の人に受け入れてもらえるのかを無意識に選び、学習します。ほとんどの人にとって、それは両親との関係でしょう。
小さな子供にとって両親に受け入れられないということは死を意味しますから、自分ができるだけ両親に受け入れられるような反応のパターンを見つけ、学習するわけです。そして、ある程度成長して自意識が発達してきたときには、すでに、周囲の状況に対してそのパターンで無意識に反応できるまでになっていますので、自分がそのパターンを選びとったということはすっかり忘れていて、それが自分の性格だと考えてしまうわけです。
あなたの両親がある程度自分自身のことを受け入れている人であったなら、あなたはあまり自分に対して厳しすぎない反応パターンを身につけ、それほど生きることを辛く感じない人生を送っているかもしれません。一方、もし、あなたの人生がとても辛いものであるのなら、あなたの反応パターンはとても自己否定的で、いつも自分を抑えつけ、自分で自分を苦しくしてしまうようなものの可能性があります。
まずは、自分がどんな反応パターンで周囲の世界と関わりを持っているかをよく意識してみて下さい。人生の中に、いつも同じような辛い状況が起こるとしたら、そこにどんなパターンがあるかをよく見て下さい。それはあなたが子供の頃のどんな状況と関連しているかを調べてみて下さい。
あなたが子供の頃にはそのパターンで反応するしか生きていく道はなかったのかもしれません。でも、大人になった今、すべての人にそのパターンで反応するのはうまいやり方ではないでしょう。あなたは違う反応パターンを選ぶことができるのです。
過去の反応パターンで反応しそうになったとき、ちょっと立ち止まって、違うパターンで反応できる可能性を、ほんの少しでいいですから、考えてみて下さい。すぐにできなくても大丈夫です。やっぱり過去のパターンで反応してしまったとしても、そのことに気づくことだけで、とても大きな一歩になります。過去のパターンで反応しそうになったときに、そのことに気づく、ということを何度も繰り返していけば、いつかあなたはこれまでとは違うパターンで反応している自分に気づくでしょう。
そう、その時、あなたは新しい性格を選び取りました。それは、あなたが生まれ変わり、新しい人生を歩み始めるということでもあるのです。
こうして自分の内面の真実に気づき始めると、あなたはさらに深い自己探究の道に導かれるかもしれません。そこでは、「自分」という存在自体が、あなた自身が選びとったさまざまな考え方、さまざまな思い込みの集まったものにしか過ぎない、ということが見えてきます。そして、表面的な「自分」を超えたところにある、「本当の自分」「スピリチュアルな存在」に気づき始めます。すると、通常の意味でいう「性格」というものは、この世界の中であなたが意識的に演じる役割にしか過ぎないという真実に気づくのです。(【まほろば通信】vol.119掲載2007/12/19)