淀川をわたる電車の中で、まぶしいオレンジ色の夕日をぼんやりとながめていたら、「苦しい人よ、幸いかな」というような感じの短い言葉が心に浮かんできました。どこかで聞いたような言葉だし、オリジナルは少し違うような気もするのですけど、まあ許して下さいね。
自分を見失って、進んでいくべき道が見えなくなって、苦しんでいる人。いや、そんなふうに言葉にすることもできずに、何がなんだかわからないけれど生きているのがつらくなっている人。
自分の周囲に、そんなことは考えたこともないような顔で平気に生きている人がいると、ますます「どうして自分だけがこんなに苦しいのだろう」と考えてしまうでしょう。
でもね。わたしは思うのです。
だれの心の奥にも「生きている」という事実そのものが原因となる、不安や苦しみがあるのです。
あなたはその苦しみに、他の人よりも早く触れることができた。
つまり、まだその苦しみに触れていない人よりも、早くそこから解放されるのです。
「そんなことを言われても、この苦しみはどうにもならない!」そう思われるかもしれません。でも、心のどこかでわたしの言葉を覚えておいてほしいのです。いつか、その苦しみの先にあるものを感じることができるときまで。(【まほろば通信】vol.89掲載2002/12/18)