なぜだか死がとても身近な今日この頃です。自分の中で何かが大きく変化している感覚が続いています。
癒しへ至る道は「死と再生」の道です。それまでの自分が死に、新たな自分が生まれる。そんなプロセスを何度も何度も繰り返して、本当の癒し、自分の全体性へと辿りつくのです。
わたしがこの旅を始めたばかりの頃、こんな体験がよくありました。
ワークショップに参加したとき、自分の中で何か大きな変化が起こって、とても苦しくなってくるのです。何が起こっているのかわからないまま「苦しい」感覚ばかりがだんだん大きくなってきます。こんなに苦しいのなら、もう途中でやめて帰ってしまおう、と思ったこともありました。
でも、一番苦しいところをなんとか通り過ぎると、急に何かが変わったことに気がつくのです。感情が込み上げてきたり、身体が軽くなったり、周囲が急に明るくなったりすることもありました。
そのときは、ただ、ほっとしただけだったのですが、同じような体験を繰り返すごとに、少しずつわかってきたのです。これは小さな「死」なのだということが。
これは、セラピーを行っていても同じことが起こります。ヒプノセラピーのセッションの中で、クライアントが苦しい表情になってくることがあります。過去のつらい体験を思い出しているかもしれません。あるいは、もっと心の奥深くにある人類全体の苦しみ、存在の痛み、のようなものを感じているかもしれません。わたしもその痛み、苦しみを共有しながら、起こることに身をまかせていきます。
ある段階で、クライアントの顔がふっと緩みます。一つの死を通りすぎた瞬間です。そこに新しいものが生まれてくるスペースが生まれます。あとは、そのスペースを満たしてくるものを待つだけです。
そんなに劇的なものでなくても、人は日々の生活の中で、この「死と再生」の体験を繰り返して生きています。わかりやすい例で言えば、ちょっと体調の悪いとき、風邪ぎみのとき、何か問題にぶつかって悩んでいるとき。そんなとき、あなたは、生まれ変わる直前の苦しみを味わっているのです。
「あなたはもっと楽に生きることができる」のです。でもそのためには、自分の中で日々起こっている「小さな死」を恐れずに、それにしっかりと直面していく必要があります。それに直面することを恐れ、目をそむけ続けるとしたら、思いがけない形で「大きな死(事故や病気、さらには肉体の死」に直面させられることになりかねません。
「死」とは手放すこと。人生は手放し続けていくプロセスなのです。(【まほろば通信】vol.52掲載2000/09/30)