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心が弱い人間?


最近はブログでもいろいろな文章を書いています。「心の癒しと意識の目覚めのために」もご覧下さい。

「カウンセリングやセラピーを受けることは心が弱い人間のすることだ」と言われて落ち込んでしまう、という話を聞くことがあります。はたして、本当にそうなのでしょうか。

本当の心の強さとは、自分の弱い部分も含めて、すべての部分を認め、その存在を許すことができる力です。生きることが辛くなっている方は、周囲にいる「一見強く見える人たち」のようになろうとして、そして、そんな人たちと張り合おうとして、自分の内面の弱い部分は無意識のうちに否定し、つまり、そんな部分はないことにして、「強い自分」を演技していることが多いようです。もしかしたら、そうしておかないと、この恐ろしい世界の中では生きていけない、と感じているのかもしれません。

しかし、そうして心の奥に閉じ込められ、忘れ去れてしまった「弱い部分」は消えてなくなることはありません。一人で置き去りにされて泣き続ける赤ん坊のように、その鳴き声は大きくなるばかりです。こんなに頑張っているのに、どうして人生はうまくいかないのだろう、という感覚が大きくなってきたときには、自分の中のどんな部分を否定してきたのか、存在しないことにしてきたのか、をじっくりと見つめ直す必要があります。 弱い部分を否定して強い自分を演技するという生き方は、子供の頃の大切な人間関係(親やそれに替わる人たちとの関係)を通して無意識のうちにプログラミングされた人生への対処法といってもいいかもしれません。内面を見つめ直す作業は、無意識の内にプログラムされた人生観、それを通して世界を見ているレンズ(多くの場合とてもゆがんだレンズ)に気づいていくことなのです。

今自分が見て、体験しているこの辛い人生は、実はありのままの人生そのものではなくて、ゆがんだレンズによってそう見えているだけなのだ、ということがわかってくるときがきます。これまでそれと一体化していて、そこにゆがんだレンズがある、ということにすら気づいていなかったのが、目とレンズが少しずつ離れてきて、レンズを通さない「ありのままの世界」が見えてくるときがくるのです。それはとてつもない解放感です。

古いレンズは、それが多少(場合によってはかなり)ゆがんでいるものでも、長い間慣れ親しんでいるため、それに気づき、それをはずしていくことには、怖れや抵抗感を感じることもあります。でも、自分の人生は何かが違うのではないか、と気づき始めたとき、古いレンズをはずしていくプロセスは、本来の自分に気づき、もっと楽に生きていくためにとても大切なプロセスになっていきます。

そのプロセスを真剣に探究している人に対して、「そんなことは心の弱い人間がすることだ」と、つい否定的な言葉で反応してしまうのは、その人自身の心の痛みの表現なのかもしれません。そんな人のためにあなたができる最善のことは、あなた自身が自分の弱い部分を認め、あなたの本当の人生、あなたの本当の力を取り戻していくです。すると、あなたの変化は無意識にその人にも伝わり、特に何もしなくても、その人が自分の弱い部分を認めていくためのサポートができるのです。

カウンセリングやセラピーの中で真剣に自分自身と向き合い、本当の自分を見つけようとしている方々の勇気は尊敬に値すると感じます。そして、そのプロセスを支えている魂の力には驚くばかりです。そして、あなたの中にもその力があるのです。今必要なのは、一歩先に進もうとする、ほんの少し勇気なのかもしれません。

【まほろば通信】vol.127掲載2008/09/03)


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Written by Shinsaku Nakano <shinsaku@mahoroba.ne.jp>
Last Update: 2008/11/09