Webを見ることができる環境の方はこちらを見て下さい。 ※現在、この箱庭の写真は公開されていません。 わたしにとっても記念すべき?最初に作った箱庭の写真です。夢分析の場合、最初の面接で取り上げられる夢は「初回夢」と呼ばれ、これから探っていくべき問題が象徴的に表現されている場合が多いです。明日から夢分析を始める、という日の夜に、非常に印象深い夢を見るということはよくあることです。この箱庭を作ったときも、前からなんだかわくわくどきどきしていたことをよく覚えています。
写真を見られない方のために、簡単に言葉で説明してみます。奥のほう3分の1が海です。真ん中に川が流れていて、海に注いでいます。手前の方は2つの丘になっていて、左側に神社、右側にお墓があります。神社には男女が参拝しているようです。左側の世界は動物たちが遊び、花が咲き、きれいな石がちりばめられた、穏やかな世界です。ところが右側の世界では海から上がってくる蛇やわにに対して、ライオンや虎、兵士が応戦している、戦いの世界です。川にかけられた橋を渡って、消防車と救急車が救助に向かっています。海には大きな石があって、その上には灯籠が置かれています。船が右の方に向かっています。ホームページに簡単な解説をつけていますので、一部内容が重なりますが、今、この箱庭を見た感想を含めて、もう一度この箱庭の内容について書いてみます。
まず、この箱庭では、箱の一番手前のところに大きな木が何本も置かれています。これは、これ以後わたしが見た多くの箱庭ではめったにないことでした。当時の感想では「まだ自分の本当の状態がよくわかっていなかったのか、あるいは、人に見せたくなかったのか、どちらかだと思います。」という書き方をしていますが、今この写真を見ると、ちょっと違う印象を受けます。
人に見せたくない、という解釈は同じですが、当時はそのことを否定的にとらえていました。今思えば、自分の内面のプロセスを、外の世界に対して、見せず、語らず、一人で味わいながらしっかり見ていくということはとても大切なことだったのです。カウンセリングの中でも、カウンセラーに対してなんでも話が出来る、ということは大切なことですが、何も話をしなくても大丈夫になる、というのはもっと大切なことです。
次に、この箱庭を全体として見ると、左側の世界が美しい穏やかな世界、右側の世界が戦いの世界になっています。それまでに本などでよく見ていた箱庭の中では、左側が戦いの世界、右側が穏やかな世界、というものが多かったように思います。一般的に箱庭の右側の部分は意識の表層の部分、左側の部分は意識の深層の部分を表わすとされています。つまり、表面の目に見えるところはおだやかで何も問題ないけれど、こころの深いところではさまざまな葛藤がある、という感じでしょうか。
しかるにわたしが初めて作った箱庭はまったく反対です。初めは、あれ?っていう感じだったのですが、少し考えてみて納得しました。
当時のわたしは内的な大変動の真っただ中にいました。ずいぶん長い期間、このまま気が狂うか死んでしまうのではないか、という不安に苛まれ続けていたのですが、ある時を境に「これで助かった」という感覚を持つようになったのです。この最初の箱庭を作ったのはそれから数ケ月後でした。
この左側の穏やかな世界は、意識の表面をおおいつくしている嵐とは無縁の、こころの一番深いところにある神聖なる場所を表現しています。
それ以降のわたしの旅の課題は、この箱庭で表現された左右の世界を統合すること、になったのです。(【まほろば通信】vol.11掲載1999/01/21)