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■涙がとまらない■


何でもないことを見たり聞いたりして涙が込み上げてくることが頻繁にありました。空を見上げているとき、風に吹かれているとき、きれいな花を見ているとき。でも、今一番印象に残っているのは、仲良くしているカップルを見ると涙が流れてどうしようもなかったことです。これはずいぶん長い間続いていたように思います。

手を繋いであるいている二人、何気なく笑顔をかわしている二人、とにかく、この二人は愛しあっているんだなあ、という雰囲気を感じただけで、とめどなく涙が流れてきたものです。

そんな二人をうらやましいと思っていた時期もあったかもしれません。でも、妻と出会って、人をうらやましがる必要がなくなってからも、この感覚はずいぶん続きました。

この感覚にはどういう意味があったのでしょうか。

この感覚と関係あるかもしれない、とても印象に残っているもう一つの出来事がありました。ある大きな駅のコンコースの地面に一人の男性が酔っぱらって寝転がっていたのです。その人を見たときに、とてつもない悲しみが込み上げてきて、涙がとまらなくなったのです。少し大袈裟ですが、人間の根源的な悲しさに触れたようなとても深い感覚でした。

愛しあう二人を見て流れきた涙は、それほど「悲しい」という感覚を伴っていたわけではありませんでした。ただ、いつか必ず死すべきこの肉体を持って生きている人間どうしが互いを慈しみあう姿が、わたしの一番深いところにある孤独感や悲しみと共鳴しあっていたのではないかな、と今は思います。

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Written by Shinsaku Nakano <shinsaku@mahoroba.ne.jp>
Last Update: 2005/11/18