新・闘わないプログラマ No.43

紺屋の白袴


私の勤め先って、情報処理関連の仕事がメインの企業なんで、当然情報システム開発関連の要員が沢山いるわけですが、もちろん会社ってそれだけではなくて、人事・経理・総務といった管理部門や、営業部門で仕事をしている人たちも沢山いるわけです。
このコラムでは、コンピュータという面から見て、前者を「開発部門」、後者を「ユーザー部門」と呼ぶことにします。

うちのとこって、もともとメインフレームやオフコン(オフィスコンピュータ、最近はこういう言い方はあまりしなくなってきたかな?)での開発がほとんどでした。
余談ですけど、パソコンで育ってきた世界の人って、メインフレームの世界の(古臭い)やり方を馬鹿にする人が結構いるのですが、どうしてどうして、何十年にもわたる蓄積って実際にはすごいものがあります。パソコンのOSの辿ってきた道は、メインフレームがもうはるか昔に経験してきたことをなぞっているにすぎません(GUIなど、そうじゃない部分もありますが)。他にも(さまざまな意味での)信頼性など、パソコンはメインフレームの足元にも及びませんし。
前にも書いたことあったと思いますけど、メインフレームでの開発をやっている人って、「この人、プログラマをやっているんだからコンピュータに詳しいだろう」という幻想を見事に打ち砕いてくれます(^^;) あ、もちろん例外はありますよ、例外は。でも、メインフレームでCOBOLのアプリケーションプログラムを作る、なんて場合には、コンピュータの仕組みとかそういう知識ってほとんど(全く?)必要無いんですよね。だから、本人の自覚と意欲が無ければ、コンピュータの基礎的な仕組みとかをぜ〜んぜん知らないプログラマが出来あがります。
システム部門といってもいるんですよ、こういう人が、それも沢山(^^;)

うちの場合、情報処理関連の会社ですから、ユーザー部門が使うようなコンピュータシステム、例えば「経理システム」とか「人事システム」とか「営業支援システム」とかは、当然のごとく内製しています。要するに自分のとこのシステム部門が作っているわけですね。
でね、ここからが問題なのですが、こういった内製しているシステムがことごとく使い勝手が悪い。それでも昔は、ユーザーは疑問も感じずに使っていたらしいのですが、今のように皆がパソコンでいろいろなアプリケーションを自由に触れるようになると「なーんで、この営業支援システムは、こんな面倒な操作しなければいけなんだよ」とか言い出すようになるわけです。
このあたりが問題になりはじめたのは、確か5〜6年くらいまえのことだったと思います。うちの場合、この時点で、ユーザー部門には一人一台のWindows 3.1のパソコンがLANで接続されている環境があったのですが、システム部門はまだそういう環境が無く、十年一日のごとく、紙に手書きで仕様書を書いて、メインフレームの端末でプログラミングする、というスタイルでした。だから、システム部門の人間は、新しいユーザーインターフェースとはどういうものなのか、なんてことも体験する機会も無かったわけですね。
メインフレームを使ったシステムは信頼性が高いのが長所なのですが、柔軟性に欠け、また開発・運用コストが高いのが短所です。
私もユーザー部門にいたことがあるのでわかるのですが、システムのちょっとした修正を依頼しただけで、期間が3ヶ月、費用が500万円、とか言われて・・・・いや、だからね、私は経理システムが出力する請求書の項目をちょっと変えて欲しかっただけなんですけどね。それで500万円も取るの?
「もういい、あんなシステム使わん」とか言い出すと、「いや、それは困る。あのシステム、これからも売ろうと思っているんだから、モデルケースとしてうちで使ってもらわねば」なんて話になったりして。「だったら、根本的に直さないとだめですよ」「いやぁ、そんな開発費、出ないんだよね」
今どき、分析やシミュレーションの機能を、一所懸命システムの中に作り込んでいて、しかもそれが恐ろしく柔軟性が無く使いづらい。そんなの、データをダウンロード出来るようにでもして、Excelかなんかでユーザーにさせた方がはるかに便利なのに、とか思っても、「いや、それは大幅なシステム変更を伴うので、1000万円以上かかる」とか言われて、唖然ととしてしまったことも。
要するに、最初の設計段階でそういうことを考慮に入れていない、設計者は、表計算ソフトなんて使ったことも無いし、だから、たとえばシミュレーションをやるなら、そういう機能を作らねば、という発想しか浮かばないんですよね。
まぁ、最近はかなり状況も変わってきましたけど、そういう古いシステムはまだ沢山残っているからなぁ・・・・。

そんなある日、グループ会社の人と雑談しているときに、その人はこんな話をしました。
「こんどうちの会社でもパソコンLANを導入しようと思って、おたくのシステム部門に相談に行ったんですよ。でも、話が全く要領を得ないんですよね。こちらも解る範囲で下調べして行って、疑問点とか質問したんですけどねぇ・・・」
「それで、おたくの総務の○○さんのところに行ったら、すごく親切に教えてもらえました。あの、こう言っては失礼かもしれませんけど、システム部門の方って、本当にコンピュータのこと知っているんですか?」

所詮、こんなもんかも知れませんね・・・私も「システム部門」の一員として(^^;)

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