新・闘わないプログラマ No.437

倍角


「『たてばいかく』って何ですか?」
「たてばい……ああ、縦倍角ね。久しぶりに聞いたなあ、その言葉」
「んで、なんですか、それ?」
「あれ? 最近の若者はそんな用語知らないのか。昔むか〜しのワープロにあった、文字の表現方法の一つなんだよね。他にも、横倍角とか四倍角とかあったなあ」
「それで?」
「ふつーの文字を縦方向に2倍に伸ばしたのが縦倍角、横方向に2倍に伸ばしたのが横倍角、両方に2倍に伸ばしたのが四倍角ね」
「四倍角って、ようするに文字のサイズを倍にしたやつ、ってことですよね?」
「そうだね」
「なんで、そんなややこしい言い方するんですか?」
「いや、昔むか〜しのワープロでは、ビットマップフォントを使っていた関係上、文字の大きさを自由に変更できなかったし、むりやり拡大・縮小してもきれいに表示や印刷が出来なかったんだよね」
「それで?」
「縦方向や横方向に2倍にするくらいなら、それほどきたなくならずに簡単に拡大できるもんだから、昔のワープロでは、縦方向に2倍に拡大した縦倍角、横方向に2倍に拡大した横倍角、両方向に2倍に拡大した四倍角っていう、文字の表現方法が用いられていたわけ」
「自由にフォントや文字のサイズを選べなかったってこと?」
「そういうことだね。ところで、なんで縦倍角なの? いまどきそんなの使う人いないでしょ」
「それがですね、こんど来たお偉いさんのA取締役」
「ああ、あの親会社からやってきた……」
「そう、そのA取締役のところに、ある件で文書を作成して持っていったら、

「ばかやろー。文書のタイトルは『たてばいかく』にするのが常識だろ! おまえ、そんなことも知らんで仕事してるのか? いますぐ書き直してこい!!」

って言うんですよ」
「あはははは。『文書は心をこめて手書きにするもんだ!』って言われなかっただけでもよかったじゃん」
「あのですね、それで、MS Wordで縦倍角で文字を表現するのってどうすればいいんですか?」
「えー、そんなの出来たかなあ。いまどき縦倍角だの横倍角だの使っている人いないだろうし」
「それじゃあ困るんですが。親会社の人だってそうやって怒鳴られていたんじゃないかと思うし、何らかの方法があるんじゃないんですか?」
「もしかして、Aさんへの文書提出専用で昔のワープロを保存しておいてたりして」

というわけで、MS Wordで縦倍角・横倍角の出し方を調べてみました(Microsoft Office Word 2003)。横倍角は比較的簡単で、

でいけるようです。じゃあ「縦倍角は?」と言うと、Wordには横方向の倍率を変更する機能はあっても、縦方向の倍率を変更する機能は無いようです。困りました……何かいい方法は、と考えてみるに、文字サイズを倍にしておいて、それから倍率を50%にすればいいことに気づきました。

これで縦倍角になります。ちなみに四倍角は、言うまでも無くフォントサイズを倍にすればいいだけです。こんなふうにすればMS Wordでも倍角の文字を表現できるようですが……いまどき使う人いるんでしょうか、A取締役を除いて。

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