新・闘わないプログラマ No.418

インスパイヤ


松下電器を「マネシタ電器」と呼ぶ揶揄はかなり昔からあります。確か私が学生のころ(=大昔)からそんな言い方があったように記憶しています。似たようなのに「盗用多」(=トヨタ)なんてのもあるそうですが、そっち方面は疎いのでよく知りません。
で、その松下電器の対極によく位置づけられるのがソニーなわけですが(トヨタの対極はホンダ?)、何と言うか、その構図自体がもう完全に過去のものになってしまった感がして久しいように思えます。私自身も昔は「え〜、マネシ……いやいや松下の製品? そんなん買うくらいなら……」と考えていたこともあるのですが、気づいてみたら、最近は結構松下製品を買っています。いや、石油ファンヒータは買ってな(以下略)。「マネシタ」どころか、松下も結構独自技術でいいものを作っていますし。
しかし、まさか自分が2台続けて松下のノートPCを買うことになるとは思いもしませんでした。世間一般のノートPCの利用法は、机・テーブル・こたつの上から移動しない、もしくは移動してもせいぜい家の中だけらしいのですが、私の場合には頻繁に持ち歩きます。そういう使い方で一番使えるノートPCが松下のやつだった(というか、他に選択肢がほとんど無かった)ということです。その特徴を挙げれば、

ってな感じで、特に軽さと長時間駆動に関しては他社の追従を許してないところがあります。一方、カタログスペック上の欠点として挙げられるところとしては、

というのがあるでしょうか。持ち歩く上で、確かにノートPCの厚みは薄いに越したことはないように思えるのですが、実際には厚みはそれほど重要ではありません。数ミリの厚みが重要になるほどぎちぎちにカバンに詰めるような状況では、ノートPCにかかる圧力も問題になってきますから、どちらかといえば詰めるカバンを見直したほうがよさそうです。で、松下のノートPCは、筐体を薄くする方向ではなく、多少厚くてもいいから強度を持たせ、なおかつ軽くする(薄くて強度を持たせると重くなってしまう)という設計思想で、このあたりも気に入っているところです。まあ、カタログスペック上からは、こういう方向性は不利なんでしょうが。

って、今回はこんな話をするつもりではありません。話はまったく変わりますが、本が絶版になったりするニュースがときどきありますよね。盗作というかパクリというか、去年流行った言葉で言えば「インスパイヤ」?
先日もブログの書き方の本(←読んでないので中身は知らないけど、たぶんそんな内容)で、他の本の内容をパク……いやいや、インスパイヤしていて絶版になったというニュースがありました。有名な作家さんの小説でもときどきそういうことがあって騒ぎになったりしますけど、こういうのって、どういう心理なんだろうか、と疑問と言うか興味があったりします。
こういう場合によく当人の弁として「以前読んだ本の内容が非常に印象に残っていて、知らずに似た表現になってしまった」というのがあります。これってどこまで本当なんでしょう。本当に「知らずに似た表現になってしまった」なんてことがありうるのなら恐いなあ、と本を書いている私も思ってしまうわけです。まあ、たぶん言い訳として言っているに過ぎないとは思うのですが。
そういえば「盗作だけはしないように注意してね」みたいなことは編集の人とかからは言われたこと無いですね。まあ「そんなの社会常識だろ」と言ってしまえば、それもそうなのでいちいち言うようなことでも無いとは思います。ただ、絶版騒ぎなんかがあると、出版社側も有形・無形の損害をかなり蒙ることになると思うのですが、どんなものなんでしょう。まあ、出版契約書には、そういう場合には損害は著者側が負担するようなことが書かれていたと記憶していますが、払えるような金額かどうか……。

さて、私が原稿を書くにあたっては、

という方針でやっています。と言うか、たいていの著者の人はそうやっていると思います。実はこれはなかなか大変で、実際にはうんうん唸りつつやっているわけです。原稿を書く段階では、ライバル書籍(?)を参照することはありません。原稿を書いた後で「○○さんは、ここの部分はどういうふうに説明しているんだろうか?」という興味で見てみることはありますが。「やっぱり、この部分の説明はみんな苦労しているんだなあ」と。
ですから、よほどの偶然の一致でもない限りは、似た表現になってしまうことは無い……はずです。

さて先日、この間発売された本を渡した相手との会話。
「これって、書くの大変でしょ?」
「うん。原稿書くのに半年近くかかったかなあ」
「やっぱりたくさん本を読んだりして書くんでしょ?」
「うーん、これはプログラミング言語の本だから、その言語の規格書がメインで、そんなに読んでないどね」
「あれ? こういうのって、あちこちの本から使えそうなところをパクってくるもんじゃないの?」

おい。

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