日経BPのやっているIT Proというサイトで、「IT Pro 記者の眼 : 大切なのはトラブル・ゼロよりトラブル後」という記事がありました(注:この記事は会員登録(無料)をしないと読めないようです)。私も同じようなことを前々から思っていたし主張していたわけですが、なかなかこういう考え方は主流にはならないみたいですね。その中に、
IT Proでシステム・トラブルに関する記事が掲載された際,「原因分析が甘い。なぜそうなってしまったのかをもっと追求すべき」「ソフト業界はバグという言葉を安易に使い過ぎ」といった読者からのコメントをよくいただく。
とありますが、これが一般的な認識なのでしょう。確かに「そりゃねーだろ、もっとちゃんと原因と責任を追及しろよ」という事例もよくあるわけですが、その記事にあるように「予想できないものは防ぎようがない」場合も多いわけです。もしくは、予想は出来なくは無いけど、そこまで信頼性を高めることは費用や期間の面で現実的ではない、ということもありがちです。
その記事では「システムの安定稼働と顧客の信頼は別」ともありますが、もっと別の観点から「障害が発生しても、その損害を最小限に食い止める」という面も必要かな、と思います。
先日、丸紅がやっている「丸紅ダイレクト」という通販サイトで198,000円のPCを19,800円と表記して発売してしまった、という事件(?)がありました。2ちゃんねるなどでいわゆる「祭」になったようですが、詳しい経緯はここにまとまっています(っていつまで存在しているかはわかりませんが)ので、興味のある方はそちらをご覧下さい。
いま現在(2003年11月9日)、その「丸紅ダイレクト」のトップページには「お詫びとお知らせ」と題して、下記のような文章が載っています。
平素は丸紅ダイレクトをご利用頂きまして誠にありがとうございます。
先般198,000円で販売すべきパソコン「NEC VALUESTAR F PC-VF5007D」の価格を誤って19,800円と表示してしまいました。弊社での価格登録間違いにより、お客様各位に多大なるご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。
現在、丸紅ダイレクトサイトではサイトを閉じ、注文受付を停止いたしております。皆様には多大なご迷惑・ご不便をお掛けいたしますが、 今後、業務の体制を見直し、同様の事態が発生しないよう徹底致しますので、何卒ご諒解の程よろしくお願い申し上げます。
というわけで、通販サイト自体を慌てて閉じてしまったようです。
さて、ここで「祭」に便乗して19,800円で注文したほうのことはさておき、丸紅側として、こういうトラブルを防ぐという観点からは、
などというあたりが気になるところでしょうかね。しかし丸紅のような商社には、不特定多数の個人客相手に商売するときのノウハウが蓄積されていないのかも知れない、などとも思ってしまいます。
それはそれとして、とりあえず実勢価格20万程度のPCを19,800円で1500台も受注してしまったわけですが、こういうトラブルが起こってしまった以上、今度はその後の対処をどうするか、というのが重要になってきます。よくチラシなどで商品の値付けを間違ってしまって客に「なんだよ、○○円って書いてあったからわざわざ来てやったのに、『それは間違いでした』だあ? いいから○○円で売れよ」なんていう話があるようですが、そういう事例では法的には「錯誤無効」とかいうのを主張できるらしい(法律はよく知らない)ですね。最初、丸紅はそれを主張しようとしたらしく、注文した客に対しては「今回ご注文の商品に関しましては、誠に勝手なお願いではございますがすべてキャンセルさせて頂きたく存じます」というメールを一方的に送ったみたいです。
ちょっとこの辺は拙速すぎるような対応のように見えました。丸紅ほどの会社なら弁護士等々のスタッフも揃っているだろうし、「法的」「道義的」「企業イメージ的」「2ちゃんねる対策的」(←おい)を考慮に入れて、もっと対策を練ってからにした方がよかったような気もします。結局は19,800円で売ることになっちゃったみたいで(この対処法がベストだったかどうかはわかりませんが)、そういう対応を取るハメになるのなら、最初の「注文はキャンセル」みたいな一方的メールは無かった方が企業イメージ的にはよかったのではないだろうか、と思うわけです。
しかし、198,000円で販売するつもりの商品を19,800円で1500台販売するということは、損失額としては…
(198000円-19800円) × 1500台 = 267300000円
ええと、だから…「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん、せんまん、いちおく」…え? におくろくせんななひゃくさんじゅうまんえん?