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おめでたき日々

(2001年10月)



2001年10月28日

●実篤記念館では秋の特別展「写真に見る『実篤とその時代』〜2.昭和初期から20年まで〜」が始まった(12月2日(日)まで)。会期中、いくつかのイベントが催される。
●一つは記念講演会で、今回は文芸評論家の川西正明氏による「昭和文学の流れと武者小路実篤」。11月23日(祝)13:30〜15:00に調布市東部公民館(実篤公園近く)で行われ、参加は無料(予約不要)。毎年特別展のたびに開かれている講演会だが、今回も楽しみにしている。
●もう一つは自然観察会で11月24日(土)に実篤公園で開かれる。こちらは初めての催しで、実篤公園の自然を講師の指導のもと見直してみようというものだ。同じ日に2回行われ、10時〜12時の回と13時半〜15時の回が用意されている。こちらは事前に往復はがきで申し込みが必要(11月10日必着)。各回20名、参加無料。詳しくは公式ホームページを参照されたい。
●このほかにも会期中の平日に、円本時代のフィルム上映があるらしい。つつじヶ丘駅にある記念館の掲示板に出ていたが、ホームページにはまだだと思う。こちらも調べて後日ご報告したい。

●「國文学 解釈と教材の研究」2001年1月号(學燈社)は漱石特集だったのでぱらぱらめくっていたら、「学界教育界の動向(11月10日迄到着分)」という記事があった。雑誌の論文・記事の題名が列記されているものだが、実篤の名前が2箇所出てきた。

それぞれの内容は題名等から想像するしかないが、機会があればちょっと見てみたい。

●坪内祐三『靖国』(新潮文庫)(bk1/Amazon)が図書館の新刊で入っていたので、手にとってみた。内容にはあまり興味はなかったが、ふと見ると「第9章 軍人会館と野々宮アパート」に、野島康三の名前を見つけた。軍人会館とは今の九段会館のことで、その向かい、現在住宅・都市整備公団があるところに、野々宮アパートというモダンなアパートがあったそうだ。その持ち主が草土社や民藝グループの支援者でもあった野島康三で、自宅を開放して岸田劉生や濱田庄司らの個展を開催したことも紹介されていた。メモをとるために読み直してみると「補助線を引」くことにとどまっていて目新しい事項はなかったが、挙げられた参考文献を時間をかけて読んでいきたい。
●野島については1999年3月9日号の「“あるね”ニュース」で紹介していたが、当時のメモの間違いか、名前を「泰三」としていた(父が泰二郎で混同したか?)。今回バックナンバーを修正しておく。

2001年10月20日

●岸田劉生の絵が時期を同じくして各地で見ることができる。少し調べてみたが、以前ここで書いた「美術の中のこどもたち」展(東京国立博物館平成館)の「麗子像」(1921)だけではなく、神奈川県立近代美術館(鎌倉市)の「近代日本美術史・再読」展(9月11日〜11月25日) では「童女図(麗子立像)」(1923)、愛知県小牧市のメナード美術館では「麗子微笑之立像」(1921)(「メナード美術館 コレクション−2001」 10月30日〜12月27日)、サザエさんの長谷川町子美術館(東京都世田谷区)でも「麗子立像」が公開されている(「収蔵コレクション」9月22日〜11月25日)。長谷川町子美術館のポスターには麗子像が使われていて、サザエさん(淡白な絵柄)の作者の美術館に、なぜ迫力のある麗子像?!というギャップがすごい。共通点が「おかっぱ→ワカメちゃんカット」しかないと茶化したくなるぐらい、ドキッとするとりあわせ。

9月27日の日本海新聞によると、志賀直哉「暗夜行路」の舞台となった鳥取県大山町の蓮浄院の荒廃が進み、大山町が買い取り整備を検討しているそうだ。現在は住職がいない寺のため、老朽化し崩壊の危険もあるとのこと。県も支援の意向ということなので、実現するかもしれない。志賀自体は自分の住居等が観光地化するのはあまり歓迎しないと思うが、城崎・奈良・尾道・我孫子と皮肉なことにかなり整備されてしまっているように思う。

●これも地域と白樺作家の話題。9月26日の北海道新聞によると、ニセコ中学校に寄せられた匿名の寄付で、図書館に「有島武郎コーナー」がつくられることになったそうだ。昨年夏に匿名で10万円分の図書券が送られ、検討の結果ニセコゆかりの有島武郎の小説や関連書籍70冊を買うことにし、8月下旬から有島コーナーをつくったとのこと。

10月5日の朝日新聞によると、千葉県我孫子市で同市在住の元作家の寄付をもとに、小中高校生による文芸作品集をつくることになったそうだ。古登正子(こと・しょうこ)さん(ペンネーム)の1200万円の寄付をもとに「我孫子市めるへん文庫基金」をつくり、来年夏に作品を募集。12月初旬に市の広報とホームページで優秀作品を発表し、それらをまとめた作品集をつくる予定。
●我孫子はかつて文人墨客の住んだ町なのでそれにちなんでと、実篤や志賀、柳、バーナード・リーチなども意識した動機からはじまった話のようだが、それと「メルヘン」は直接関係はない(寄付者の希望か?)。「未発表で夢があふれるものならジャンルは問わない」そうなので、我こそはと思う全国の小中高校生は、ぜひ応募されたい。

●これらの情報は、インターネットの検索から得ている。実際に使っている検索方法をリンク集のページに掲載したので、興味のある方はそちらをご参照願いたい。「フレッシュアイ」という検索エンジンで、1週間以内に新規作成されたり更新されたWebページだけを検索している。

●「白樺」とは直接関係はないが、松本哉(はじめ)氏による永井荷風の評伝『荷風極楽』(朝日文庫)(Amazon)を立ち読みした。荷風自体に思い入れはないが、松本氏の楽しげな語り口とイラストがとても心地よかった。私もいずれこのような文章や(むずかしいが)絵などを書ければと思った。

●これは見つけただけで立ち読みもしていないが、北上次郎氏の『情痴小説の研究』(ちくま文庫)(Amazon)の中に、里見とん^「多情仏心」が入っていた。そのためだけに買うのもなんなので、まず図書館にリクエストしてみることにしようと思う。今月10日から調布市の図書館もインターネットで検索等ができるようになったので、試してみよう。
●その中に曰く、「情痴小説」とは、ダメ男小説だとあった。また、中年の文学だともあった。だから男女関係を云々していても、「お目出たき人」は青年の文学だから「情痴小説」には入らないようだ。そうやって見ると、「白樺」の作品の多くは「青年の文学」のような気がする。
●ちょうど講談社のPR誌「本」で三浦雅士氏が指摘していた「透谷、独歩、漱石、白樺派、そして小林秀雄という青春の文学の系譜」(「若さの時代の次に来るもの」)を思い出した。こういう視点には注目しておいてよいと思う。


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