ウィリアム・ブレイク『ブレイク詩集』


『ブレイク詩集』
ウィリアム・ブレイク 著
土居光知 訳
平凡社ライブラリー

 角川文庫の新刊詩集の一冊、ブレイク詩集も店頭にあったので手にとってみると、「天国と地獄の結婚」という作品にびっくりしてしまった。神秘主義というのは昔から苦手で敬遠していたのだが、ブレイクのもそういう繊細で耽美的な詩なんだろうなと思って見ると「力のみが生命であり、肉体から生ずる」というような宣言が目に飛び込んできた。柳宗悦が若い頃傾倒した詩人という予備知識しかなかったが、これは実篤にとってのメーテルリンクのような存在だと思い、ぜひ一度読んでみたいと思った。
 角川文庫版はカラー図版が入っていてきれいなのだが1,000円と高いため、図書館で土居光知訳『ブレイク詩集』を借りてきた。たしかに詩の部分は表現が難解で読みにくいところもあったが、「天国と地獄の結婚」はおもしろいものだった。あまり肉体の優越ばかりを強調すると、対立を重視したブレイクの意図を読み違えてしまうという別の解説も見たが(池下幹彦 解説・訳『天国と地獄の結婚』近代文藝社1992)、それにしても刺激的な本ではあった。訳は土居訳よりも角川文庫の寿岳訳の方が読みやすかったように思う。興味のある方は、中沢新一の「はちきれそうな無垢」という解説もある角川文庫版を一度立ち読みされるのが良いだろう。

(1999年2月20日:記)
(1999年5月5日補記)




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