棚橋一晃編『木喰佛』『円空佛』


『木喰佛』
棚橋一晃編
鹿島研究所出版会 昭和48年5月30日

『円空佛』
棚橋一晃編
弘書書林 昭和63年8月30日

 松涛美術館での木喰展に触発されて読んでみた。理屈から入るのは良くないのだが、一人よがりの理解になるのもまずいので諸家のご意見を拝聴ということで、図書館にあったアンソロジーを手にする。

 『木喰佛』は木喰礼賛色が強い。さきに柳宗悦の「木喰上人発見の縁起」を読んでいたので、その亜流というか得るところは少なかった(柳のこの文章は本書の掉尾を飾っている)。独自の意見を打ち出して出色だったのは、宮本常一の「木喰行道のこと」、五来重の「異端の放浪者の勧進と和歌」の2編。木喰様様という文章の中にあって、宮本の書き出しは木喰行道(いわゆる木喰仏の作者)については関心を持ったことはなかったが、木喰応其(織豊時代の僧)については調べて感心したことがあるというつれないものだった。木喰行道を回国行者の一人と位置づけ、その姿を冷静に明らかにしようとしている。そういう学問的姿勢は五来も同じで、民芸から入った者にはない、貴重なものがあると思う。

 『円空佛』は賛否両論いりまじったものだ。冒頭の坂口安吾は円空より飛騨の名もないタクミの作のほうが優れていると言うし、飯沢匡は円空をアウトローととらえ、賛美者の神経を逆なでする。柳の文章もあるが、これは英語で書かれた海外向けの文章の翻訳で、あまりパッションが感じられない。全体としてはこちらも礼賛色が強いが、文章が発表順に並べられていて、円空受容史の全体をとらえるには良い本だと思う。
 もともとこの2冊は相前後して発行されたもので、『円空佛』の方は再刊である。


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