2000年年頭にあたって


「龍となれ 雲自ずと来たる」

 今年は辰年ですが、実篤+龍と言えばこのことばが思い起こされます。実篤記念館の公式ホームページでも紹介されていましたが、この文字が実篤の自筆で記念館の天井に掲げられています。展示室に入ってつきあたりまで進み、入口を振り返って天窓の切られた天井を見上げると、この文字を見ることができます。

「龍となれ 雲自ずと来たる」

 実篤らしい大きなことばです。

 自分は龍だと言ってるのではありません。まだものにはなってはいないが、龍ぐらいにならいつでもなれる気でいるのでしょう。そうすれば雲が湧いてくるように、周囲も自分についてくる。そういう素質は自分にもある。みんなにもある。まわりのことに思いわずらうことなかれ。自分の力をたのんで、自分を伸ばして龍になれ。そういう自負と希望と楽観を感じる、実篤らしいことばだと思います。
 自分だけが龍になれるのではない。誰もが龍になれる素質を持っているのだ。だから小さなことにこせこせするのではなく、自分が大きくなって周りをついてこさせるくらいになれ。後ろ向きなことにではなく、自分を大きくすることに意識を集中しろ。そういう風にこのことばを私は読んでいます。

 実篤記念館に行くと、ときどき天井を見上げます。良い場所に掲げられていると思います。天窓といっしょにこの文字を見上げます。「龍となれ 雲自ずと来たる」時折思い出しては、このことばに勇気づけられます。


ホームページへ戻る書庫へ戻る

(C) KONISHI Satoshi