◆ ビデオトラック幅編
    1.基本
      ビデオトラック幅は標準で58μm、3倍で19.2μmです。
      これはヘッドの幅ではなく磁気テープの記録パターンの規格で、ビデオトラックピッチと呼ばれます。

    2.もう少しお勉強
      販売されているVHSのビデオデッキには、4ヘッドだけでなく2ヘッドもあります。
      では、なぜ2ヘッドで4ヘッドのような3倍モードの記録ができるのでしょうか?
      それは単純に、部分重ね記録をしているからです。
      テープ速度を1/3に落とすと次の記録パターンが重なって、19.2μmのパターンを残しているのです。

      逆に再生時に幅の広いヘッドでトレースすると、当然隣りのトラックの信号も拾ってしまいます。
      しかしVHSではアジマス記録で輝度信号のクロストークをなくし、90度位相回転記録でカラーのクロストークを改善しています。
      ちなみに2ヘッドでは、58μと19μの間のトラック幅を持ったヘッドを使用しています。
      そこはメーカにより思想があるようです。
      松下製のビデオデッキでは、再生信号を監視して標準と3倍のヘッドを自動切換えし、最良の再生を任せるモードを持っているものがありました。

      では、何故4ヘッドが高画質なのでしょうか。
      これはフライングイレーズヘッド(回転消去ヘッド)を持たないデッキで考えます。
      記録済みテープは、ドラムのサプライ側に設置されたフルイレーズ(固定消去)ヘッドで全ての信号が消去されます。
      その後回転ヘッドでビデオ信号が記録されます。
      次にVHSの簡易インサート記録を思い出してください。
      最近のデッキにはなくなった機能ですが、これはビデオ信号のアフレコのようなものです。
      綺麗に前の記録パターンをなぞって新しいビデオ信号を重ねて記録します。
      サーボ技術の賜物でなせる技でしょう。
      フライングイレーズヘッドを持たない場合、音声やコントロール信号を消さないためにフルイレーズヘッドはお休みしています。
      映像信号のみ本当に重ねて録画しているのです。
      上から重ねると以前の磁気記録はほとんど消されますが十分ではなく、その画質はS/Nも悪く酷いものでした。
      それと同様に、ビデオ信号は消さずに重ねて録画した部分があると著しく画質を落とすのです。
      4ヘッドが高画質と言うより、2ヘッドの3倍モードが非常に悪い画質になってしまうのです。

      簡易インサート機能がなくなったのはコストダウンもありますが、Hi−F音声の深層記録も消してしまうからです。

    3.雑学
      ヒョウタンからコマのような話しですが、通称19μヘッドはSECAM方式から実現したというヨタ噺があります。
      日本の大手AV機器メーカーでは、国内のNTSCは勿論北米のNTSC方式、ヨーロッパのPALやSECAM方式、オーストラリアのPAL−M、アルゼンチンのPAL−N等輸出モデルやOEMモデルを手がけているところは多かったです。
      勿論現在は現地設計や現地生産もやっています。
      この中でヨーロッパのSECAM方式には、標準速で19μヘッドが使用されています。
      TV信号の規格上、カラーサブキャリア周波数やフィールドあたりの水平走査線数が異なると、ドラム径、ドラムの回転速度、テープ速度、ビデオトラック幅をうまく合わせないと長時間記録できないばかりか3倍モードもうまく完成しません。
      海外展開する場合は、コストのかかるドラムとヘッドもできればNTSC方式と共通化したいに違いありません。
      一方NTSC方式では、高画質化を狙った4ヘッドビデオデッキの3倍専用ヘッドを考えると、単純に1/3幅のビデオヘッドを使用したくなります。
      ではNTSCの4ヘッド化が先だったのでしょうか。
      どうやら4ヘッド化の前にSECAM方式ビデオデッキが輸出されていたようですから、19μヘッドは既に存在していたようです。

      ある日、技術者がSECAMヘッドをNTSCの3倍モードに使用してみます。
      そのマッチングの良さで、高画質を確認します。
      「おぉ、理屈どおりやんけ」と3倍モードは19μが普及しました。
      このようなヨタ噺を考えるのは、珍言采だけでしょうか。