僕は、雑文と自称している小説を、愛読者へ渡している。
愛読者の多くは女性だ。
長年読み続けてくれる女性もいれば、最近出会った人もいる。
場合によっては愛読者が登場することもある。
雑文の感想を述べてくれるのは、2割にも満たない。
勿論、御世辞で誉めてくれる人は多い。
自分が登場する雑文にのみ感心を示す人もいる。
でもみんな好きだ。

 雑文を読んだ女性の中で、僕の作品を片岡義男風と評する人が数人いた。
その様な場合は、”うん僕の先生だよ”とか”彼の作品を読むと僕にも書ける気がして”と答えることにしている。
では、何処が片岡風なのだろうか?
それを検証しながら、何故雑文を書くか探ってみよう。


検証1.彼は旧いライダーである。
    彼の小説には、旧メグロ、現川崎のW1が何度か登場する。
    それ以外には、あまりめぼしいオートバイは登場しない。
    彼のほとんどの文庫本を読んでも書いていなかったので正確とは言えないが、きっと免許は普通車のおまけだろう。
    僕は中型ではあるが、れっきとした試験場1発組である。
    勿論、初回の実技試験で合格した。

検証2.彼は写真の心得がある。
    彼の小説には、スライドをライトボックスの上で見る描写が何度か出て来る。
    登場するカメラは、ミノックスとおぼしきものと小型ライカらしいものもある。
    僕はニコン党である。

検証3.彼は女性に優しい
    彼の小説は、女性を騙すシークェンスが非常に旨い。
    僕が一番気に入っているのは、彼女と避暑地で待ち合わせ、ついに彼女の休暇中に到着を間に合わせなかった”缶ビールのロマンス”が一番好きだ。
    僕は缶ビールも嫌いだが、そのように女性を待たせることが先ず出来ない。
    自分に優しさの余裕がないと言ってもよい。
    僕には、女性を騙す優しさがないと言うことだ。

検証3.彼は銃に詳しい
    彼の小説には、米軍の制式突撃銃であるM16−A1が詳細にわたり書かれている。
    僕より詳しいのは、その銃を主人公である女性が組み立てている描写でよくわかる。
    しかし、僕が雑文の中にM16−A1を登場させたのは、彼より2年早い。

検証4.彼はCOFFEEが好きだ
    彼の小説には、COFFEEが重要な役割をはたす、つまり登場人物の背景描写に使われる。
    それも何故かエスプレッソが多く登場する。
    僕は小学生の高学年からサイフォンでCOFFEEを抽出して飲んでいる。
    最近はパーコレーターで飲むことが多い。
    エスプレッソは器具を4種類も持っているが、あのような描写に使うことが出来ない。
    COFFEEは、自分の世界に浸るための道具である。

検証5.彼はカタカナが好きだ
    彼の両親の一方が日系人であり、彼もハワイで多くを過ごしたせいか、小説の中にカタカナが多い。
    僕の雑文にもカタカナが多い。
    しかし僕の場合は、専門用語のカタカナである。
    英語のカタカナではない。

検証6.彼はプレスリーがお気に入り
    僕はプレスリーが大嫌いである。
    だから彼の文庫本で買っていないのは、一番最初のプレスリーのものだけだ。

検証7.彼はアメリカ人になりたい
    彼は2冊ほど訳本を出している。
    アメリカの私立探偵の活躍だ。
    活躍と言ってもアメリカンTVの乗りではなく、淡々とした物語だ。
    とてもいい物語だ。
    この本は誰にも教えたくない。
    一つ言えるのは、彼はその探偵の背景が好きだが、僕はその探偵の考え方が好きだ。

検証8.彼は強い女性が好きだ
    彼の小説には、男性から自立した強い女性が多く登場する。
    きっと好きなんだ。
    僕は、そうなりたいとじたばたしている女性が好きだ。
    最近またそういう女性を見つけた。
    僕の愛読者にしてしまいたい。

検証9.彼はカントリーソングが好きだ
    彼の小説に登場する巡業中のカントリーシンガーは、驚くほど描写が決まっている。
    だが僕は、カントリーソングそれもトーチソングが大嫌いだ。
    音楽はJAZZに限る。

検証10.彼の景色
    いい音楽、それもJAZZを聴いていると景色が見える。
    彼の小説を読んでいると、同じように景色が見える。


 さて検証結果のまとめであるが、素敵な女性達と付き合っていると、彼女達の背景が見え始め、彼女達の生きざまが景色になって見える。
そうすると、彼女達が登場する雑文に僕の景色を織り込んで彼女達に渡す。
きっと僕から見た景色が、さらに彼女達の生き方をふくらませてくれると願って。えっ? 結果が主題と違うって?
そんなことはどうでもいいさ、僕は僕、彼は彼、君は君さ。