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学 習 障 害 の 判 断 ・ 実 態 把 握 基 準(試案)


I 判断・実態把握の体制・手続き
 
 1 学校における実態把握
  ・学校における児童生徒の実態把握のために、校内委員会を設ける。
    注:校内に教育相談のための委員会等が既に設けられている場合、それを活用する
      ことも考えられる
  ・校内委員会の構成員
    校長、教頭、担任教師、その他必要と思われる者(学年主任、教育相談担当教諭、
    養護教諭、前担任教師等)
    なお、校外の専門知識を有する者が参加することが望ましい。
  ・実態把握の契機
    [1] 担任教師が特異な学習困難に気付く。
    [2] 保護者から学習障害の疑いがあるとの申し出がある。
  ・校内委員会で実態把握を行い、専門家チームに判断を求めるかどうか検討する。
  ・校長が専門家チームに判断を求める前には、保護者に十分な説明を行い了解を確認す
   る。

 2 専門家チームにおける判断
  ・専門家チームは、都道府県又は政令指定都市の教育委員会に設ける。
  ・専門家チームは、特殊教育センター等における専門家による相談機関と位置づける。
  ・専門家チームの構成員
    以下の者のうち学習障害に関する専門的知識を有するもの
     教育委員会の職員、特殊教育担当教員、通常の学級の担当教員、心理学の専門家、
     医師等
  ・専門家チームの専門的意見
    専門家チームは次の内容を含む専門的意見を示す。
      [1] 学習障害か否かの判断
     [2] 望ましい教育的対応の内容


II 判断・実態把握基準と留意事項

 1 校内委員会における実態把握基準と留意事項
  (1)実態把握のための基準
   A.特異な学習困難があること
    [1] 国語又は算数(数学)(以下「国語等」という。)の基礎的能力に著しい遅れ
     がある。
     ・現在及び過去の学習の記録等から、国語等の評価の観点の中に、著しい遅れを
      示すものが1以上あることを確認する。この場合、著しい遅れとは、児童生徒
      の学年に応じ1−2学年以上の遅れがあることを言う。
       小2,3年     1学年以上の遅れ
       小4年以上又は中学 2学年以上の遅れ
      なお、国語等について標準的な学力検査の結果があれば、それにより確認する。
     ・聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のいずれかに著しい遅れ
      があることを、学業成績、日頃の授業態度、提出作品、ノートの記述、保護者
      から聞いた生活の状況等、その判断の根拠となった資料等により確認する。
    [2] 全般的な知的発達に遅れがない。
     ・知能検査等で全般的な知的発達の遅れがないこと、あるいは現在及び過去の学
      習の記録から、国語、算数(数学)、理科、社会、生活(小1及び小2)、外国
      語(中学)の教科の評価の観点で、学年相当の普通程度の能力を示すものが1以
      上あることを確認する。
   B.他の障害や環境的な要因が直接の原因ではないこと
     ・児童生徒の記録を検討し、学習困難が特殊教育の対象となる障害によるもので
      はないこと、あるいは明らかに環境的な要因によるものではないことを確認す
      る。
     ・ただし、他の障害や環境的な要因による場合であっても、学習障害の判断基準
      に重複して該当する場合もあることに留意する。
     ・重複していると思われる場合は、その障害や環境等の状況などの資料により確
      認する。
     
 (2)実態把握に当たっての留意事項
    [1] 学習障害と疑われる状態が一時的でないことを確認する。
     ・概ね1学期間は、対象児童生徒の行動観察、就学時の資料の検討、保護者との
      面談など専門家チームの判断のための基礎的な資料の収集に努めるとともに、
      対象児童生徒の学習の進捗状況に十分な注意を払う。
     ・なお、小学校1年生時は、1学期間では不十分な場合もあり、1年程度かける
      必要がある場合が多いので、原則として、基礎的な資料の収集に留めることと
  
      する。
    [2] 専門家チームへ判断を求める前には、保護者の了解を確認する。
     ・校内委員会と保護者の見解が一致しなければ、原則として専門家チームへの判
      断の申し出は行わない。
     ・ただし、保護者が希望しない場合でも、児童生徒の学習の状況によっては、必
      要に応じて再度適宜協議し、専門家チームの判断を求めることを勧める。
    [3] 行動の自己調整や対人関係の問題が併存する場合には、次の事項にも配慮する。
     ・行動の自己調整や対人関係の問題が併存する場合もあるので、それへの十分な
      配慮が必要である。当面、行動の自己調整や対人関係の問題のみへの対応が必
      要と考えられる児童生徒も、それらの問題が一応の解決を見た後で特異な学習
      困難か明らかになる場合もあることに留意する。
     ・行動の問題が学習障害と重複している疑いがあると考える場合は、学校におけ
      る生活態度、保護者から聞いた生活態度、生育歴、環境上の問題等を記述した
      資料を収集する。
    [4] 学習障害の判断は、専門家チームに委ね、学校では行わない。

 2 専門家チームにおける判断基準と留意事項
 (1)判断基準
    次の判断に基づき、原則としてチーム全員の了解に基づき判断を行う。
     A.知的能力の評価
      [1] 全般的な知的発達の遅れがない。
       ・個別式知能検査の結果から、全般的な知的発達の遅れがないことを確認す
        る。
       ・知的障害との境界付近の値を示すとともに、聞く、話す、読む、書く、計
        算する又は推論するのいずれかの学習の基礎的能力に特に著しい困難を示
        す場合は、その知的発達の遅れの程度や社会的適応性を考慮し、知的障害
        としての教育的対応が適当か、学習障害としての教育的対応が適当か判断
        する。
      [2] 認知能力のアンバランスがある。
       ・必要に応じ、複数の心理検査を実施し、対象児童生徒の認知能力にアンバ
        ランスがあることを確認するとともに、その特徴を把握する。
     B.国語等の基礎的能力の評価
      * 国語等の基礎的能力に著しいアンバランスがある。
       ・校内委員会が提出した資料から、国語等の基礎的能力に著しいアンバラン
        スがあることと、その特徴を把握する。ただし、小学校高学年以降にあっ
        ては、基礎的能力の遅れが全般的な遅れにつながっていることがあるので
        留意する必要がある。
       ・国語等の基礎的能力の著しいアンバランスは、標準的な学力検査等の検査、
        調査により確認する。
       ・国語等について標準的な学力検査を実施している場合には、その学力偏差
        値と知能検査の結果の知能偏差値の差がマイナスで、その差が一定の標準
        偏差以上あることを確認する。
    なお、上記A及びBの評価の判断に必要な資料が得られていない場合は、不足の資
   料の再提出を校内委員会に求める。さらに必要に応じて、対象の児童生徒が在籍する
   学校での授業態度などの行動観察や保護者との面談などを実施する。
    また、下記のC及びDの評価及び判断にも十分配慮する。
     C.医学的な評価
      * 学習障害の判断に当たっては、必要に応じて医学的な評価を受けることと
       する。
       ・主治医の診断書や意見書などが提出されている場合には、学習障害を発生   
        させる可能性のある疾患や状態像が認められるかどうか検討する。
       ・胎生期周生期の状態、既往歴、生育歴あるいは検査結果から、中枢神経系
        機能障害(学習障害の原因となり得る状態像及びさらに重大な疾患)を疑う
        所見が見られた場合には、必要に応じて専門の医師又は医療機関に医学的
        評価を依頼する。
     D.他の障害や環境的要因が直接的原因でないことの判断
      [1] 収集された資料から、他の障害や環境的要因が学習困難の直接的原因では
       ないことを確認する。
       ・校内委員会で収集した資料から、他の障害や環境的要因が学習困難の直接
        の原因であるとは説明できないことを確認する。
       ・判断に必要な資料が得られていない場合は、不足の資料の再提出を校内委
        員会に求めることとする。さらに再提出された資料によっても十分に判断
        できない場合には、必要に応じて、対象の児童生徒が在籍する学校での授
        業態度などの行動観察や保護者との面談などを実施する。
      [2] 他の障害の診断をする場合には次の事項に留意する。
       ・注意欠陥多動障害や広汎性発達障害が学習上の困難の直接の原因である場
        合は学習障害ではないが、注意欠陥多動障害と学習障害が重複する場合が
        あることや、一部の広汎性発達障害と学習障害の近接性にかんがみて、注
        意欠陥多動障害や広汎性発達障害の診断があることのみで学習障害を否定
        せずに慎重な判断を行う必要がある。
       ・発達性言語障害、発達性協調運動障害と学習障害は重複して出現すること
        があり得ることに留意する必要がある。
       ・知的障害と学習障害は基本的には重複しないが、過去に知的障害と疑われ
        たことがあることのみで学習障害を否定せず、「A.知的能力の評価」の
        基準により判断する。
 (2)専門的意見の内容と留意事項  
   A.専門的意見の内容
    * 専門家チームは、(1)の基準により学習障害と判断した場合は、以下の留意点
     に配慮しつつ、望ましい教育的対応についての専門的意見を述べる。
      専門的意見の内容には、次の内容が含まれる。
       [1] 学習障害と判断した根拠
       [2] 指導を行うにふさわしい教育形態
       [3] 教育内容についての指導助言
       [4] 教育に際しての留意事項

   B.専門的意見の留意事項
    [1] 他障害との重複の際の留意事項
     ・他障害と学習障害が重複している場合にも、必要に応じて、学習障害児として
      配慮するべき内容等を意見の中で述べる。
     ・行動の自己調整や対人関係の問題が顕著である学習障害児の場合、必要に応じ
      て、情緒障害等のための特殊学級における教育又は通級による指導を行うこと
      も考えられる旨の意見を述べる。
    [2] 通常の学級における指導が適切な場合の留意事項
     ・学習上の困難の程度に応じて、必要に応じて、担任が留意して指導を行うこと
      が適当か、ティームティーチングによる指導か適当かの意見を述べる。
    [3] 通常の学級以外の場での指導が適切な場合の留意事項
     ・通常の授業時間以外の個別指導が必要な場合には、必要に応じて、個別指導の
      方法について意見を述べる。
    [4] 専門的意見の適用期間
     ・学習障害児として通常の学級における指導又は通常の学級以外での指導を行う
      際の特別の配慮に関する専門的意見については、概ね2−3年の見通しをもっ
      て行うこととする。
 (3)専門家チームの意見に対する学校の対応
    学校は、専門家チームの意見を踏まえて適切に対応する。特殊教育による対応が必
   要な場合は、保護者の理解を得つつ、市町村教育委員会に所要の手続きを行う。
    なお、校内委員会は、必要に応じて、随時専門家チームの意見を再度求めることが
   できる。


  

   
    
     学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の
    指導方法に関する調査研究協力者


     上 野 一 彦  東京学芸大学教授
     太 田 昌 孝  東京学芸大学教授
     荻 野 一 郎  港区赤坂中学校長(-H.10.3)*
     川 村 秀 忠  秋田大学教授
     神 保 信 一  明治学院大学教授(-H.10.3)*
     鈴 木 守 次  愛知県立大府養護学校長(元愛知県教育委員会特殊教育課長)
     辻   重五郎  兵庫県立教育研修所長(H.11.4-)
     砥つか 敬 三  東京都立教育研究所相談部心身障害研究室統括指導主事
     中 根   晃  実践女子大学教授
     中 野 善 達  佐野国際情報短期大学教授
     長 澤 泰 子  慶應義塾大学教授
     野 村 東 助  大正大学教授
     原 田 美知子  三鷹市立南浦小学校長(H.10.4-)
     福 田 哲 治  世田谷区立桜木中学校教諭(H.10.4-)
     松 本 喜代子  品川区立杜松小学校長(-H.10.3)*
     村 井   和  富山県教育委員会指導課長(H.10.4-H11.3)*
     安 田 由美子  横浜市立日野養護学校長
               (元横浜市養護教育総合センター所長)(H10.4-)
[主査]  山 口   薫  東京学芸大学名誉教授   
     山 田 兼 尚  国立教育研究所教育指導研究部長(-H10.3)*
     渡 辺 幸 夫  杉並区立中瀬中学校長(H10.4-)

     (50音順、敬称略)
    [平成11年7月1日現在(ただし、*の職名は協力者当時のもの)]

 

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