五木寛之と言えば知らない方は無いほどの有名作家ですのでわざわざ紹介することも無いのですがあまりにポピュラーであり近年は四季シリーズなど小説が限られているようですので、若い読者で、五木に馴染みが無い方々を対象に書かせていただきます。「さらばモスクワ愚連隊」「青年は荒野をめざす」など初期の作品群は語り尽くされておりますので、ちょっと毛色の変わった作品や私の記憶にいつまでも残っているものを紹介します。まず、「凍河」ですね。精神的弱者の女性が住まう施設を舞台に、主人公の心に映るものを丹念に活写した作品です。無垢という言葉の意味が悲しみを持って理解できます。単行本の表装の絵が内容を良く現していることが読後理解できます。続いて「戒厳令の夜」です。真実を追い求める事の辿り着く先にあるものは?とにかくサスペンスとしても良く書かれた作品です。前後巻をあっと言う間に読みきってしまうあたりが五木寛之のエンターテイナーたる所以でしょう。
続いて目先を変えて「
疾れ、逆ハンぐれん隊」、深夜の高速を走る黒塗りのベンツ、250Kを優に越えた速度で横新を疾走するその車に追いすがるミハル。快調に筆が走り、読者を興味の谷に落としこむ絶妙の語り口に時間を忘れて読まずにはいられないでしょう。通勤通学の車中で読むには最適です。さらに同系列の傑作「にっぽん退屈党」と読み進みます。抱腹絶倒間違いなし。
乗り越さぬようにご注意あれ。次に、祇園祭の山車の前垂れに始まる「
燃える秋」。凛とした「風花の人」などお好みでどうぞ。
重厚な「
朱鷺の墓」なども良いですね。「雨の日には車を磨いて」などの
中篇作品群もお手軽に楽しめます。また四季シリーズ第一作「
奈津子」を読んでみてください