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プレシャス・ワン

なぜかワンコになった1年生のキタシロくんが大活躍のファンタジードラマ(全18回)

(1)

それは、キタシロ16回目の誕生日のこと―――

『キタシロくん、お誕生日おめでとう(^^) 
いつもあなたの頑張っている姿を遠くから見ています。
ぜひお渡したいものがあるので、放課後、西門に来てくれませんか? Yより 』

キタシロは、下駄箱の中にあったピンクの封筒を握り締めると、ひと気のない校舎の裏側に走りこみ、こっそりと中の手紙を読んだ。
「もしかして、これって…ラブレターかな? や、やった〜! そうだよな、世間ではヤマピーに似ているっていう僕がだよ、女の子にもてないワケないじゃん。だって、あの宇都宮部長にですら、彼女がいるんだよ(笑) 
あ…、でもどうして男子校の下駄箱にこの手紙が入っていたんだろう。まさかウチの生徒が…って、あはは…。まさかね。だって、この文面はどう見ても女の子っぽいし…(ちょっと文字はババくさいけど…)。ああそうだ、きっとその子はウチの生徒に頼んで僕の下駄箱に入れたに違いない」
楽天家なキタシロは、何も疑うことなく、放課後、指定された西門にやってきた。
「おかしいな。誰もいないなあ。あれ?紙が貼ってあるぞ」

『キタシロくんへ。ここは人目があるから図書館に来てくれませんか? Y』

「別にそんな人目のある場所とは思わないけどな。まあいいや。図書館ね。…ってことは、やっぱり呼び出しているのはウチの生徒なのか。実は僕の妹がキタシロくんに一目ぼれしてまして…って感じかな」

@図書館
「あれ?閉まっている」
司書:悠 「今週は特別整理期間だからお休みだよ。君は普段、ここをあまり使わないから知らなかったんだな」
キタシロ 「うーん、やっぱりからかわれたのかな。あ、また貼り紙だ」

『特別整理期間だって気づきませんでした、すみません、じゃあ音楽室でよろしく Y』

キタシロ 「えー、また?」

@音楽室
ナルミー 「何か用?」
キタシロ 「うーん、どう考えても、この人に呼び出されるハズはないよね。むむ…次の貼り紙だ…。え、数学準備室? ま、まさか手塚先生なんか出てこないよね」

@準備室
亮太 「何か用?」
キタシロ 「お前こそ、完全物置小屋化しているこんなところで何してんの?」
亮太 「手塚先生の思い出に浸っているんだよ」
キタシロ 「うーん、いよいよ悪戯っぽい。担がれたかな。うっ、また貼り紙だ。次は保健室…」

@保健室
キタシロ 「怪しいと思いながらも、新聞部員の好奇心に駆られてここまで来てしまった僕。…こんにちは〜…って誰もいないか。それにしても保健室で待ち合わせってシチュエーション、何かちょっとドキドキしたりして…(^^;」
ニヤニヤしながら誰もいない救護用ベッドを覗き込んでいたキタシロは、不意に後ろからシーツを被せられ、そのままベッドに押し倒されてしまった。
キタシロ 「うわあ、誰だよ〜。シーツが絡んで見えないよ」
謎の人物 「キタシロく〜ん、待ってたよ〜。さあ、気持ちいいことしよう〜」
キタシロ 「お、男だあ。うっそ〜、新春早々ハードなBLで始まっちゃうワケ? ひゃあ〜、保健のはるうさぎ先生〜助けて〜僕の花の操があ〜」
謎の人物 「助けを求めても無駄だよ。おとなしくしないとホントに食っちゃうぞ」
キタシロ 「む…その声、聞き覚えが〜。雅希さん?」
雅希 「なんだあ、ばれちゃったか〜」
キタシロ 「な、何やってんスか〜。こんなところで。しかもあなた部外者でしょ」
雅希 「何って、見ればわかるじゃん。キタシロの捕獲」
キタシロ 「ほ、捕獲う?」
雅希 「うん、悪く思うなよ。俺の今月のメシがかかってるんだから」
といって、雅希は有無を言わさずキタシロをシーツごと縛りあげた。
キタシロ 「な、なんスか〜。誰に頼まれたんスか〜;これ、フツーに誘拐じゃないっすか」
雅希 「まあな。じゃあ俺の仕事はここまでだから。幸運を祈る!」
キタシロ 「ひえ〜。雅希さん、待ってえ。俺、今日が誕生日だっていうのに厄日じゃん。誰か助けて〜」

そこへ入ってきたのは、ノッポとデブの院生コンビだった。
院生藤田 「毎度お〜、院生宅配便です。あ、これだな。じゃあ、お前はそっちを持ってくれ。ヨイショっと」
キタシロ 「うわー、どこへ連れて行くんだ。頼むから乱暴に扱わないでよ」
シーツにくるまれたキタシロは、そのまま外へ運び出された。
院生吉川 「だんな、お待たせしました」
如月 「ご苦労でしたね」
キタシロ 「え、この人は…確か会長の…」
如月 「じゃあ、ここへ入れて」
キタシロ 「まさかトランクへ? 紳士だと思ってたのに、こともあろうに誘拐犯だったとわ…(唖然)」
如月 「少しの辛抱ですよ。キタシロくん」
そういって少し微笑むと、如月は無情にトランクを閉め、運転席に乗り込んだ。

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