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ピアノ王子登場

(1)

@キタシロ・パパ(キタイチ)の店

キタイチ 「うーん、困ったな」
キタシロ 「珍しいな、父ちゃんが悩んでいるなんて。どうしたの?」
キタイチ 「毎年クリスマスにピアノ演奏頼んでいる人が、今年はダメになっちまってな」
キタシロ 「そりゃ痛いよね。ウチの店の好評企画なのにね」
雅希 「ちわ〜(^^)」 ←すっかり常連
キタイチ 「よう、受験生、頑張ってるか?」
雅希 「いや〜、腹減っちゃうと全然ダメっすよ」
キタシロ 「夕食はイタメシっていうのが定着してません?」
雅希 「俺、美味いものがあるところだったら世界の果てまで行くぜ」
キタイチ 「お世辞だとわかっていても、嬉しいこと言ってくれるね。じゃあ何か食わせないといけないな。雅希君はカキとかは大丈夫か?」
雅希 「Rの付く月は美味いんですよね」
キタイチ 「よし、ちょっと待ってろよ。今月のおすすめのカキのホワイトクリームのパスタを食わせてやる」
雅希 「いい子にして待ってま〜す(^^)」
キタイチ 「あ、そうだ、ダメ元で聞いてみるが、君はピアノなんか引けるかい?」
雅希 「『猫ふんじゃった』ぐらいかな…(笑)」
キタシロ 「ダメだ、こりゃ」
雅希 「どうしたんだ?」
キタシロ 「実はですね…」
雅希 「お前の学校、一応、お坊ちゃん学校で通っているんだろ。学園探せば一人ぐらいいるんじゃないか?」
キタシロ 「そういえば、ヨーロッパのピアノコンクールで入賞したって人が2年生にいて、新聞部でインタビューしようとしたら断られたって話、聞いたことあったなあ…」
キタイチ 「それだ、そいつ連れて来い!」
キタシロ 「え〜、面識もないのに…。しかも以前、取材拒否するような人だしなあ…」
雅希 「新聞部のモットーは当たって砕けろだろ。ガッツで交渉してこい(^^)」
キタイチ 「ところで、その子、顔はいいか?」
キタシロ 「詳しくは知らないけど、確かあだ名がプリンスだって聞いたから、まあ平均以上なんじゃないかな?」
雅希 「それにしても、今年はやたら「王子様」が多いな(笑)」

翌日の昼休み@学校

キタシロ 「この教室だな(覗いている)あ、あの人みたいだな。一人で机にフテ寝している。おじゃましま〜す」
プリンス 「うーん、…誰だ、お前?」
キタシロ (何だか取っ付き悪そうな人だな;)
プリンス 「貴重な睡眠時間を邪魔するなよ」
キタシロ 「す、すみません。新聞部の北城っていうんですが…」
プリンス 「新聞部はキライ」
キタシロ 「うっ…取り付く島もない(T_T)ビジュアルは申し分ないみたいだけど、性格悪そうだな;」
プリンス 「あ、電話だ。『アロー、#$%&*+!…』」
キタシロ 「何だかよくわからない外国語しゃべってるなあ;」
プリンス 「…お前まだいたの?」
キタシロ 「ムカつくな(--#」
 「あれ〜?キタシロじゃないの。2年生の教室に来るなんて珍しいね」
キタシロ 「か、馨先輩!!」ホッ。地獄で仏(^^)

馨の姿に気づいたプリンス。ちょっと意外そうな顔つきで二人を見る。
プリンス 「…お前…、伏見くんと知り合いなのか?(--*」
キタシロ 「はいっ、いつもよくしてもらってます〜!(^^)」
 「ねえねえ、キタシロ。今日は放課後ヒマだからさ、この前言ってた美味しいスイーツの店、行ってみようよ(^^)」
キタシロ 「はっ、はいはい。喜んで!」
 「じゃあ、放課後ね〜(にっこり)」
プリンス 「…あのさ…僕もスィーツにはうるさいんだ。その店とやら、評価してあげるよ」
キタシロ 「え;…一緒に行くんですか?」
プリンス 「ついでに、お前の話も、もうちょっと聞いてやる」
キタシロ 「…(--; でもまあ、一歩前進かな?」

放課後

 「ごめんね。待った?」
キタシロ 「まだプリンス…というか、鳴海さん来ないんですけど」
 「彼、ワガママなところがあるから、もしかすると来ないかもしれないよ」
キタシロ 「ドタキャン常習犯ですか(--;」
 「5分待って来なかったら行こう!」
5分経過―――
キタシロ 「…来ませんね…。あ〜あ、また交渉のチャンスが途切れちゃった」
 「行くよ!」←けっこう短気
鳴海 「なんだよ〜、今、行くところだったのに…」
キタシロ 「プリンス!」
 「時間を守らないヤツは嫌いなんだ」
鳴海 「5分ぐらい遅れたうちに入らないだろう」
 「立派な遅刻だよ!行こう、キタシロ」
キタシロ 「…え、いいんですか?」

鳴海 「…あんな態度をとられたのは…初めてだ…」
振り向きもせずキタシロと歩いていく馨の凛とした態度に、鳴海は不愉快よりも、何か熱いものが胸の奥から湧いてくるのを感じて立ち尽くしていた。
鳴海 「…伏見馨…。単なる姫キャラだったんじゃないんだな」

 「キタシロ、そっと後ろ見てご覧。ついてくるよ、ナルミー」
キタシロ 「わ、ホントだ;」
 「1年のときに同じクラスだったけど、ワガママで一人浮いていたって事しか覚えてないや」
キタシロ 「へえ、そうなんっすか」
 「黙ってピアノだけ弾いていりゃ、ビジュアルだってそこそこなんだけどねえ…。性格は最悪。ところでそのナルミーに、何の用だったの?」
キタシロ 「それがですね。これこれしかじかでして、うちの父ちゃんのレストランでピアノの演奏を頼むつもりだったです」
 「そうだったんだ。ゴメン、馨が話をつぶしちゃったかもしれないね」
キタシロ 「…でも、後をついてくるっていうのは何か脈があるのかもしれませんよね」
 「じゃあ、店に着いたら声をかけてみるか。遅刻した罰にピアノ弾けって言ってみる!」
キタシロ 「ワガママ王子に、そういう言い方は逆効果なんじゃないっすか?(^^;」
 「まあ、任せなさいって(^-^)v」

@噂のスィーツの店

 「うわ、さすがに人気の店だけあって行列出来ているね」
キタシロ 「大丈夫っすよ。さっき、予約入れておきましたから」
 「3人分?」
キタシロ 「はい(^^*)」
 「さすがキタシロ君、気がつくね〜。一家に一人キタピーだね」
キタシロ 「えへへへ…」←馨さんに誉められて有頂天
キタシロ 「あ、鳴海さん、列の最後尾でこっち見てますね」
 「ふふふ…、キタシロ、呼んできて!」
キタシロ 「はっ、はいはい!」

キタシロ 「鳴海さん、馨先輩が呼んでますので、一緒に来てくれませんか?」
鳴海 「ふん…。じゃあ、しかたないな」
席にやってくる
 「やあ、鳴海くん。ようこそ(^^)」
鳴海 「…」←そっぽ向いて座っている
 「キタシロ、ここのおススメはなあに?」
キタシロ 「今の季節だとマロンのフロマージュか豆乳のシフォンケーキらしいっすね」
 「美味しそう。ちょっと最近疲れ気味だから両方食べてみよう。紅茶はダージリンね」
鳴海 「僕も同じものを。紅茶はプリンス・オブ・ウエールズで頼む」
キタシロ 「ラジャー」

 「さて、鳴海くん。馨たちに何か言うことない?」
鳴海 「意味がわからないな…」
 「待ち合わせ時間に遅れてきた場合は、何はともあれ謝るのが社会の常識じゃない?」
鳴海 「…」←またそっぽを向く
 「そんな常識のない人のピアノ演奏なんて、きっとお客を無視した、上っ面だけのものに違いないね」
鳴海 「な、何を言う。僕は伝統あるヨーロッパのピアノコンサートで入賞して、CDデビューの話も出ているんだぞ」
 「ふん、外国の評価なんて、単に日本人が珍しいからってだけなんじゃないの?」
キタシロ 「うわ、馨先輩、目がすわっている;」
鳴海 「聞いてもいないくせに、勝手に判断するなよ」
 「じゃあ、聞かせてよ」
鳴海 「いつでも弾いてやるぞ」
キタシロ 「ひええ〜〜、どうなるんだ?」

鳴海 「あのさ〜、あそこに置いてあるピアノ、単なる飾り?」
店員 「いえ、ディナータイムになるとミニコンサートを開くんです」
鳴海 「ちょっと弾かせてくんない」
店員 「え、…お客様が?」
鳴海 「他に誰が弾くんだよ。あんた弾けるの?」←ホントにヤなヤツだな
店員 「…ちょっと店長に聞いてきます(--;」
キタシロ 「なんだか威張ってますね」
 「お店の人、気の毒だね…(^^;」←シフォンケーキをつつきながら様子を伺っている

店長 「お待たせしました。お客様がお弾きになるんですか」
鳴海 「何度も言わせるなよ」
店長 「では、ちょっとだけですよ。ただし、店の雰囲気を壊すような曲はご遠慮ください;」
 「何を弾くつもりなんだろうね(^^;」ニヤニヤ
鳴海 「…あまり調律してないピアノだな…」
店員 「ホントに大丈夫なんですかね、店長;」
店長 「最近、ワガママな客が多くて困るよ(--;」
鳴海 「おい、新聞部、よく聞いとけよ!」
キタシロ 「そんな睨み付けなくてもいいじゃないっすか;」

♪♪♪〜〜〜

キタシロ 「これ、何の曲?」
 「何だかよくわからないけど、クラシックだよね」
鳴海 「どうだ!」
 「今の曲、なあに?」
鳴海 「ショパン第49番ヘ長調のピアノソナタだ」 ←そんなのあるのか?
 「店長、聞いたことある?」
店長 「何だかよくわかりませんが、お上手なことは認めますね(^^;」

 「もうちょっと、誰でも知ってる曲やってよ。ねえ、キタシロ」
キタシロ 「そうっすね〜!「世界に一つだけの花」とかどうっすか?」
鳴海 「そーゆー俗っぽい曲は僕の譜面にはないんだ」
 「適当にアレンジしていいからさ。ショパンもいいけど、やっぱりみんなが知っている曲ぐらい弾けなきゃなあ…」
鳴海 「しょーがねーなー。♪世界に一つだけ〜の花〜〜」
キタシロ 「ちゃっかり、弾きがたりまで始めてますね(^^;」
 「このタイプって、おだてると木にも登ればダンスもしそうだね」

客A 「うわ〜、お上手〜」
客B 「ちょっと陰のあるイケメンの弾き語りがカフェで聞けるなんて素敵な演出ねえ(うっとり)」
客C 「アンコール! 今度は平井堅やってよ」
鳴海 「ふふふ…(流し目)」←すっかりその気

 「ふうん、けっこう芸幅広いんだ…」
キタシロ 「こりゃ、ぜひうちのクリスマスディナーでも弾いてもらわなくっちゃなあ(^^)」
店長 「お客様、もしもお時間ありますならば、夕方まででもけっこうですから、うちの店で弾き語りしてもらえませんか」 ←揉み手
キタシロ 「うわあ、ライバル登場だ〜;」
鳴海 「…出演料は高いよ…」
 「ちょいとナルミー。調子に乗るじゃないよっ;」

鳴海 「どうだい、君たち。僕の実力がわかっただろう」(えっへん)
キタシロ 「さっすが〜ですね」
鳴海 「まあ、ピアノの芸術の本質まではわからないだろうけどね」
 「へえ…馨に対して芸術論を語るだなんて、いい度胸しているじゃない…」 ←伝統芸術家
鳴海 「慣れない俗曲を弾いたら、何だか疲れたよ」
キタシロ 「あ、ケーキ来てますよ」
鳴海 「…ちょっとマロンクリームのコクが薄いな。旬だっていうのにマロンをケチっているな」 ←文句が多いヤツだ;
 「あのさ、馨はまだ納得してないからね>ナルミー」
鳴海 「馨くん、そのナルミーっていうのやめてくれないか」 ←ナルシーをもじっているのに気づいていない;
キタシロ 「けっこう可愛いと思いますけど…。うちの部長も「ウッチー」が定着したことでファンが増えたみたいですよ(笑)」
鳴海 「だけどいかにも軽薄そうじゃないか」 ←だって、そのものズバリだし;
 「あのさ、君が多才なのは認めるよ。だけどピアノの芸術性は馨には判断できないから、客観的に判断させてもらうしかないよね」
鳴海 「どういうことだ?さっきのお客の反応だけでも十分じゃないか」
 「客観的っていうのは数字で判断するんだよ。そこで提案なんだけど、今度、キタシロのパパのお店でピアノ演奏してさ、そこで君の演奏に魅かれて何人がリピーターになるか調査するのさ」
キタシロ 「おおっ、馨先輩、やる〜(^^)」
鳴海 「勝手にそんなこと決めるなよ」
 「あ、そう。自信がないんだ」
鳴海 「はぁ、誰にモノを言ってるんだ。馨くんだから黙って聞いていたけどさ。僕のリサイタルはいつもチケット即日完売なんだぞ。お客なんて倍増させてやるよ」
 「ほう〜、すごい自信だね。それが本当だったら、ナルミーのピアノ演奏の腕前を認めてあげるよ」
鳴海 「あれ、言葉で認めるだけなのか? 僕だって芸術家のプライドを賭けてやるんだよ。それに見合った具体的な評価があってもいいんじゃないか」(ニヤリ)
キタシロ 「え、何を要求するんだろう?」
 「な、何だよ、その目は…」
鳴海 「馨姫の、そのチェリーのような唇が欲しいな」
 「…うっ;;なんだコイツ;」 ←思わず引け腰
キタシロ 「え〜〜、ついにBLになってしまったのか>ここ」
鳴海 「姫、ご返答は?」

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