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九十九くんの「ひと夏の体験」



九十九は、元タカラジェンヌの母と、レストランで食事をしながら映画談議に花を咲かせていた。
「さすがヴィスコンティ監督の名作『ベニスに死す』は、画像はだいぶ劣化していたけど、ステキだったわ〜」
「マコちゃん。ずいぶん古い映画を見てきたのね」
女優・花房 鈴(ハナブサ・リン)は、息子から渡された映画んパンフをパラパラとめくりながら言った。
「映画部としては、やっぱり不朽の名作っていうのは抑えておかなくっちゃね(^^)」
「これ、確か美少年に引かれる紳士の話だったわよね」
「そうなの。ビョルン・アンドレセンという男の子。他にも少女とか出てくるんだけど、顔も体つきも飛びぬけてきれいで、その気がなかった老紳士もハマっちゃったようなのね」
「でも、プラトニックラブなんでしょ」
「それが禁欲的でよかったのよ。一回だけ少年の金髪に手を伸ばすシーンがあったんだけど、その手が震えているの(^^; 今だったら躊躇するなんてありえないかもしれないわね」
「すぐに抱きしめるとか押し倒すとか…(^o^;」
「やだ〜、ママったら。その目、何か期待してない〜?」
「マコちゃんなんか、ロマンスグレーの紳士とお似合いじゃないかしらって思ったの」←なんて母親;
「ロマンスグレーねえ。確かにパパとは違うイメージだし、ちょっと、あこがれちゃうかも〜」おいおい

その時、何か思いついたのか、母はネイルアートを施した指をピンとはじいた。
「そうだわ。社会勉強にもなるから、マコちゃん、夏休みにバイトしてみない?」
「バイト?ウチの学校。親が認めれば夏休み期間だけのバイトは認められているけど…。どこで?」
「うふふ。ロマンスグレーにも出会えるところ。あ、でも、まだマコちゃん17才だから、本気になっちゃダメよ」
「え?」
「明日、聞いてみるわね」


翌日@都内の某高級レストラン

東都学院大学の学長に就任した黒田教授は、皇居の森が見下ろせる高層ビルの最上階の会員制レストランで、人を待ちながら携帯メールを読んでいる。
黒田 「…そうか。彼が戻ってきているのか」
そう呟くと教授の目がキラリと光る。そこには犬を抱きしめた青年の写真が添付されていた。(誰〜だ(笑))
花房鈴 「先生、遅くなっちゃってごめんなさい」
黒田 「おお、鈴さん。美人さんのためなら、何時間でも待ちますよ。私はあなたが宝塚デビュー当時からファンだったんですからね」
 「まあ、光栄ですわ」
黒田 「ワインは10年もののシャトーブリアンでいいですか。あなたのお口にあわせるのは至難の業だ…」
 「先生のオススメになるものなら、何でも美味しくいただけますわ。ところでこの前、お話のあった学会事務局のお手伝いの件ですけど…」
黒田 「ああ、ウチの学生にやらせようと思ったのだが、なかなか合格ラインを超えるのがいなくてね。院生は余計ひどいし(爆)」
 「先生、ビジュアルの理想が高すぎるんじゃなくて?(笑)」
黒田 「私が仕切る初めての総会だし、世界中から大先生たちが集まるからね。失礼があってはならないんだ。といって、その筋の人材派遣で済ますなんていうのは、いかにも軽薄そうだし」
 「そうですわね。ホストクラブじゃないですもんね。それでね、どうかしら、うちの息子」←身を乗り出す
黒田 「鈴さんの息子さんは、いくつなんですか」
 「東都の三年生ですの」
黒田 「ほう…鴻池くんと同じか…」 ←なぜか知っている
 「たぶん、キャンパスのどこかですれ違っているはずですわ。まあ、ウチは外部受験はしないだろうから、夏休みはのんびり過ごすらしいけど、私もパパも仕事が忙しくて、どこへも連れて行ってあげられないし。そうだったら先生のところで社会勉強させたらいいんじゃないかしらって。…このコなんだけど」
と、鈴は携帯に保存している息子の写真を見せた
黒田 「ほう、ママにそっくりだな(^^)」
 「美形でしょ、ウチのマコちゃん。たぶん先生のお眼鏡に叶うと思って」
黒田 「しかし、そんなに面白いバイトではないですよ」
 「いいの、マコちゃんに、少し社会の厳しさを教えておかないとね。ただし…」
黒田 「?」
 「マコちゃん、大人っぽい顔しているけど、「まだ17才」ですからね。先生!」
黒田 「…は、はっは…。何をおっしゃりたいのかな…(^^;」
 「ご自分の胸に手を当てて、お考えなさいませ」
黒田 「…こ、これはこれは…;」←見透かされた
 「物好きな親だと思われているでしょ。でも、これも母の愛なのよ」←そうなのか?



@学園・生徒会室

九十九 「輝くんも知ってるでしょ。東都学院大学の黒田先生」
 「去年学長になった人だよね。なかなかやり手だって聞いているけど」
九十九
 「その黒田先生が、秋に某国際会議の幹事をするとかで、その事務局のお手伝いをしてきたわけよ」
かおる 「そこに九十九先輩好みの人がいたんですね!(^^)」
九十九 「そうなの。事務局で働いている人たちって、みんなキレモノのイケメンばっかり!」
かおる 「それって、黒田学長の好みじゃないのかなあ(笑)」
九十九 「たぶんね。そうそう、如月さんなんかも、あの中にいそうなタイプだったわよ」
 「やめろよ。如月はそういう男じゃない」←そうなの?
かおる 「で、どんな出会いがあったんですか!」
九十九 「その中でアタシが一番年下じゃない。だから、みんなで可愛がってくれてね」
かおる 「うわあ、意味深〜」

九十九 「そこに登場するアイテムがこれ!」
と、九十九は一枚の小さなチラシを見せた。なんてことのない、普通のお菓子のチラシだ。
 「はあ?何これ?黒田五十二万石って書いてあるの?」
九十九 「そう、裏には『若様最中』って書いてあったわ。誰かのお土産だったんだけど、最後に残った一つを、いかにセクシーに食べるか研究しようってことになって」
かおる 「何それ。大学って、そんなアホらしい研究してるんですか?」

九十九 「ふうん。そうなの。かおる君の週末は楽しかったようね」
かおる 「あれ?何だか元気ないですね>九十九先輩」
九十九 「そうねえ…」←ぼーっとしている
 「何かあったのか?」
九十九 「…何だかアタシの人生…、このしおれた花のように空しくて…」
 「このところの猛暑で確かに植物は元気ないけどね」
九十九 「アタシの心も、まるで荒れ果てた砂漠のよう…」
かおる 「あれれ、キャラが変っている;」
 「いったい、どうしたんだ?>九十九?」
九十九 「輝くん〜;傷心のアタシを慰めて!」←抱きつく
 「げえ…;離れろコラ。暑っ苦しいし、そもそも僕にはその気はないんだってば」
九十九 「あら、つれないわね。徳の生徒会長でしょ」
 「ホモだちを慰めるほど懐深くない!」
かおる 「何か心配事でもあったんですか〜?」
九十九 「恋よ…この夏、アタシ、とっても切ない恋をしていたの…」
かおる 「過去形?」
 「確かバイトしていたって聞いたけど…そこで出あったのか?」
九十九 「やはり年の差は越えられないのね…」
かおる 「お相手は熟女?…じゃないよねえ>たぶん」
九十九 「ロマンスグレーのステキな紳士よ。ちょっとお髭が暑苦しかったけど」
 「…やっぱり男か;(--;)」
かおる 「で、で!どんな夏だったんですか」←興味
九十九 「聞きたい?ちょっと刺激的なところがあるわよ」
 「18禁はダメだぞ」
九十九 「15禁ぐらいかな」
かおる 「それならウチの高校生もみんな聞けるね」
九十九 「語ると長くなるんだけどね。アタシが先生と会ったのは……」

九十九 「その実験台にアタシがなったわけよ。で、先輩たちがいろいろ注文つけながら、アタシにいろんな表情をしろって…」
 「何だか、怪しい雰囲気になってきたな…(--;」
九十九 「そのとき、急に黒田先生が部屋に入ってきたの。実は、その最後の一個っていうのが黒田先生の分だったのね。なので、みんな慌てて、無理やりそれをアタシの口に押し込んだの…」
かおる 「黒田先生のを…無理やり口にねえ(にやにや)」←おいお〜い;
 「かおるくん、品位を保ってくれたまえ」
九十九 「先生は、みんなの様子にすぐ気づいたみたいで、つかつかとアタシの方に歩いてくると、無表情のままアタシの手を取って、その指で口の周りにくっついていたアンコを拭ったの」
かおる 「食べ物の恨みかあ?最中に執着するタイプだったのかー。あの先生」
 「九十九くん、子供みたいだな…とか?」
九十九 「違うわよ。ここから先が15禁なんだってば」
かおる 「え〜、まだあるんですね!」
九十九 「先生はね、アタシの手を引き寄せると、アンコのついたこの指を口に…」
 「えっ」
九十九 「先生の舌が、アタシの指を絡めるように舐めて…」
かおる 「すごい…なんかリアル!背中がゾクゾクする」
九十九 「それから先生はアタシを見つめると、一言、『甘すぎだな』って、耳元で囁やいたの。他のイケメンの先輩たちがいる中でよ!アタシ、もう一人で立ってられなくなっちゃって…」
 「も、もうヤメろ。付き合ってられん(--*」
九十九 「あら〜輝くんって純情ね」
かおる 「もしかして、まだ続きがあるんじゃないですか!(わくわく)」
九十九 「もちろんよ。じゃウチに来ない。じっくり語るわぁ」



 「くだらない。どこが切ない恋なんだ」
如月 「輝様。お帰りなさいませ」
 「あれ?如月、来てたのか? 確か福岡に出張に行ってたんだろ?」
如月 「はい、社に戻る前に、輝様にお渡ししようと思いまして」
 「ん?お土産?」
 「あ"〜!若様最中!」
如月 「もしかしてお嫌いでしたか?」
 「い、いや…ちょっと驚いたもので(^^;」
如月 「ちょっと甘いかもしれませんが、中に大きな求肥が入っていて、人気商品のようです」
 「ははは…」
僕の口の周りにアンコがくっついたのを見たら、如月だったらどんなリアクションするのかな―――
そんなことが、ふと脳裏をよぎった輝であった。

<おわり>


当時、コミケ&乙女ロードの散策などで刺激を受けた延長線上で思いついたBL話。
これに友人が職場でもらったおみやげ「若様最中」を合わせて妄想しました。
当時は、何でもSSのネタになったんですね。

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