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誘惑の赤い糸 (SSが付きました・女性向け)
お前を抱いていると、私の中の何かが目覚めていくようだ
Copyright by Yomogi

(無断転載禁止)


起きろ。お前にあれを返してやる――。


コールタールの様な暗く重苦しい無意識を掻き分け頭痛を抑えつつ目を覚ましたら、消えかかっている灯の中、大理石のテーブルの上にカミュがほぼ全裸でワインにまみれて、有られもない姿で横たわっていた。
まるで真っ赤な大輪の花の様に、豊かな長い髪を散らせながら。

私は一体彼に何をしてしまったのだ!?
あわてて彼の傍により、どこかダメージを受けていないか調べてみたが、唇の端が切れている以外特に目立った傷はついていない。
白磁のような肌がほんのりと赤く染まり温かく感じるのは、きっと無理矢理酒を飲ませてしまったからだろう。
頬を軽くたたきながら呼びかけると、彼はぎょっとしたような眼差しで私の顔を見たが、すぐに私を認識したかのように安堵して、そろそろと上半身を起こした。
「私は――お前に対してまた無体な事をしてしまったみたいだな」
「えっ……?ああ、僕は平気。これぐらいは大、丈夫……です」
強い酒のせいだろうか、頬を赤く染めながらふらふらする頭を手で押さえながら、すぐにでもテーブルから下りようとしている。
「待て、そんな体で外に出るのか?今晩はここに留(とど)まりなさい」
酒まみれになったふらつく彼を抱きかかえ、沐浴場へ連れて行った。

灯をおとした薄暗く、湯気が立ちこめる沐浴場の中でカミュは気が抜けてしまったかの様に私に背中を向け、静かに湯に入っていた。放っておくと湯の中に沈んでしまいそうなので傍に居ざるを得ない。
薄暗い仄かな光が彼の肌の色を柔らかく象牙色に染め上げ、緋色の髪が体を覆う様に流れ、まるで水中花の様に湯の中で散らばっている。
「こっちに来なさい、背中を流そう」
体と髪を洗い、梳られるがままにされている美しい私のガ二ュメデス――。

『私達のだろう?』
急に私の中で、悪魔が私に囁きかけてきた。
おまえ一体何をした?
『ははっ、何尖っているんだ。ガニュメデスのつもりで酒の給仕をさせたまでの事――おまえだってやりたかっただろうに?』
だまれ、聖闘士とはいえまだ子供に酒を無理矢理飲ませるなど!
『飲ませてはない。ただ給仕させただけさ……』
息を荒げながら、あいつの体が真っ赤になって変わりゆく姿が最高の肴になったと高笑いしながら去って行った。

外では雨が静かにしのしのと降り続いている。

雨音が聞こえる位沈黙の中、何も問いかけずにサガは黙って優しく僕の髪の毛を乾かしてくれている。
いつもクールに振る舞っていると言われる僕だって、さすがに今は彼の顔を直視する事は出来ない。

彼に――黒い髪に変化したこの人に半ば無理矢理神話の時代みたいに、トゥニカに着替えさせられてお酒を注いでいたら……変わった趣向で飲ませろとワインを口に含む様に言われてその通りにして引き寄せられた挙げ句、口移しで『給仕』させられた。
あまりにも突飛で考えつかない事だったし、闇に染まっているとはいえ、敬愛するこの人からこんな風にさせられるなんて……。
僕が思いっきり身を退いたのが、気に入らなかったかどうか分からないけど、僕をテーブルの上に座らせて動けない様に首を掴まれたとたん、服をはぎ取られてその上からどぼどぼとワインを注ぎながら顔や体中を舐め尽くされたなんて、サガ自身覚えていない事なんて絶対に言えない。
何より一番悔しいのは、僕自身抵抗しきれない上に次第に、その……舌の感触にふわふわぼうっとしてきて、いつの間にか気を失ってしまったなんて!
僕は自分自身に……負けてしまった事が悔しい。
「どうしたんだ?唇から血が流れているぞ」
口の中に苦い味が広がって気付いたけど、唇を噛み締めている僕の顔を宇宙の深淵を思わせる様な瞳が心配そうに覗き込んでいる。
切れた唇の端を優しそうに触れてくれる親指の温かさに涙が出てきそうになった。
これ以上この人を心配させてはいけない――。

こんな僕に気を使って別室に床を用意して、彼は僕を寝かしつけると静かに私室に戻って行った。
暗闇の中、寝返りをうって窓に叩き付ける雨音を聴いていたら、あの時の感触が体の奥底から無数の蛇の様に、しゅるしゅると這い上がり体中に絡まって来て、嫌でも思い出してしまう。
そして、まるで僕自身が沢山お酒を飲んだみたいに体が熱くなってきて、ぐるぐると目が回りそうだ。
どんなに頭からその事を追い出そうとして、体を丸めて目をぎゅっとつぶっていても、体中を這わせてくる舌の感触が生々しくて……。
僕は一体どうしてしまったんだろう?冷静になりきれないよ。

勢いよく飛び起き、体を冷やそうとして廊下に飛び出したら、サガの私室の扉がほんの少し開いていた。
そうっと覗き込むと、常夜灯に浮かび上がる天蓋が少し開いていて、そこから寝顔を伺う事が出来た。
熟睡しているみたいで、綺麗な蒼い瞳は静かに閉じられ、形が整った少し開いた唇からは、静かな寝息が聞こえている。
足音をたてないで近づいて、ベットに片足だけよじ上って目覚めないでと祈りながら、そっと首すじに顔を埋めて匂いを嗅いでみた。
清潔な仄かに甘い花の香りが、ふわっと僕の鼻腔に届いて来た。
それはまるで春の夜の霧の様に深くしっとりとして優しくて……さっきまで体の中をざわざわ蠢いていた蛇が消えてしまったみたいだ。

希望と安らぎ、そして苦痛を与える僕の天使。 
その天使の……両手一杯に抱えていてもこぼれ落ちそうなこの人の悲しみと苦しみを、掬い取って飲み込む事が出来たらいいのに。
くせのある星空の様な長い髪の毛に埋もれて指にからめながら、いつの間にか僕はうとうとしてしまったみたいで、そのまま彼を感じながら眠ってしまった。

両手一杯の思いを胸にして。 

〈完〉



ヘーゲルさんから、「誘惑の赤」CGのイメージで、かなり色っぽい「サガカミュ」SSを書いていただきました。
元ネタというか同人世界での人間関係を知らないと、ピンとこないところがあるかと思います。簡単に説明すると、二重人格者だった双子座の黄金聖闘士サガ(白黒:天使と悪魔キャラ)と、彼を信奉している水瓶座のカミュのお話です。
カミュといえばCPはミロが定番かと思いましたが、意外とサガと引っ付くのも支持される方が多いようです。「12宮の戦い」で最後まで偽教皇(黒サガ)を、いろんなしがらみがあってか裏切れなかったという設定からなんでしょうか。
「美形の実力者(年齢差8歳)が、同じく美形の誉れ高いカミュを育てた」という妄想もしやすいですしね。(追記:7/23)

今回のシリーズ。星矢仲間の友人たちと妄想チャットをやった時に「サガが、カミュのサラサラ髪をくしけずっているシーンって、すっごく色っぽいよね」というところから、「髪=糸」という発想でテーマにしてみました。
カミュの髪色は「原作は赤、アニメは碧」の二つがありますが、リクエストでは「碧髪」を希望されたので、ならばテーマは「癒し」にしようと。カミュの髪をくしけずりながら、邪悪と化した(黒)サガが、そのヒーリングによって少しずつ「善」の側に戻ろうとしているところを描いてます。
もう一つの、こちらの「誘惑の赤」は、その逆。赤い髪のカミュを抱いたことで(白:善)サガが、だんだんと暗黒の世界に引きずり込まれるといいますか。…って、「じゃあカミュって何者?」ってことになっちゃいますね。(解説がないと、知らない人には絶対に通じないテーマだな〜〜(汗;) 


赤バージョンは、あまり細かい設定を考えすに色だけ変えたのですが、誰かSS考えてくれないかなあと思ってたら、ヘーゲルさんが書いてくださったんですね! ありがとうございます〜♪
 

それにしても「碧」にしても「赤」にしても、カミュは魔性の美少年、サガはいけないおじさんになってます(笑)


《お絵かきメモ》
二つの色パターンを見ていただき、ありがとうございます(^^*  *「癒しの碧」バージョンはこちら
今回は「色遊び」をしてみました。上に描いたように、同じ絵で2種類のテーマとなっています。
「癒しの碧い糸」
「誘惑の赤い糸」
人物は同じファイルを使いまわししてます。ただ、色を変える予定のもの:それぞれの髪と目については、それぞれに調整レイヤーをかぶせて色調を変えています。描線も2種類(碧バージョンと赤バージョン)
背景はテーマごとに描きました。「癒しの碧」は、カミュならやっぱり「ダイヤモンドダスト〜★」でしょうってことで、暑中お見舞いも兼ねての涼しげなバージョンに。「誘惑の赤」は、はるうさぎさんちで配布されていた「ウエーブ素材」を、糸のイメージの延長で活用させていただきました。でも、こういう素材は使い方難しいですね(^^;

《反省点》
今回、「筋肉」を意識して描いたのですが、陰影を何度もごしごしやったせいか、なんか色がきれいじゃないですね。
髪の色もちょっと濁ってたりするし、今回は陰影のつけ方をかなり失敗しちゃいました(--;
あと、サガの横顔が不満〜〜; なんでこんなにのっぺりしちゃったんだろう。これも陰影失敗のせいもあるのですが、ホントはもうちょっと「違うキャラにしたかった」のですが、これ、どこから見ても「私」の絵の範疇を抜け出せていませんよね;
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09/07/23 SSを追加
09/06/28