Children's Corner-『子供の領分』



ドビュッシーのピアノ曲のために--3



ドビュッシーとシューシューのために



その子はシューシューと呼ばれた
「キャベツちゃん」といった娘の呼び名なのだ

父は音楽家だったが いつも新しい音を捜す開拓者の十字架を
時代の五線紙の上で背おっていた

けれどシューマンもそうしたように
シューシューのために 彼もまた子供のための その心に届く
音をたぐり寄せ集め いくつかの曲をつくった

それは子供の心を持った大人のための音楽ともなった
そして新しい世代の音に窓を開いたものでもあった
聞く者の時間のなかで時を超える響きがあった

父は少女のシューシューしか知らずにこの世を去った
そしてシューシューもみじかい生をジフテリアで天に返した

残された者の悲しみは今は言うまい
(ソレガセラビナンダ)

だが父の そしてシューシューのための音楽は
今 生き続ける

そのピアノの旋律からたちあがる歌と感情は
あたらしく なつかしい




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