遺言ワンポイント

1、

「なぜ、甥姪が相続人に?」

子供がいない夫婦で、両親もすでに他界しており、夫婦水入らずの生活をしている人にとって、遺産相続には何の問題も起こらないと思いがちですが、法律(民法)では、相続人として、子供や孫(直系卑属といいます)がなく、両親等(直系尊属といいます)もいない場合、配偶者(妻又は夫)とともに、「兄弟姉妹」も相続人になるとなっています。

配偶者は絶対的な相続人

第一順位の相続人は、 子、孫などの直系卑属

第一順位の相続人がいない場合、第二順位として、両親などの直系尊属が相続人となり、

第一順位の相続人・第二順位の相続人がいない場合、第三順位の相続人として兄弟姉妹がでてきます。

例えば、夫が死亡し、当然、配偶者の妻が遺産を相続するものであると思っていても、いざ遺産相続となると相続人として「夫の兄弟姉妹」がでてきて、もめることがあります。妻としては、夫の財産については内助の功などで貢献しており、子供がおらず、夫の財産はすべて相続すると思っていたところ、そういう訳にもいかないということになります。さらに、夫の兄弟姉妹がすでに死亡している場合は、なんと、その子供(甥、姪)が相続人としてでてきます。特に夫婦で暮らしていた自宅などの「不動産」のみが遺産の場合、金銭と異なり分けることが困難なため、争いとなる確率が高くなると思われます。

このような場合、妻へ相続させる旨の「遺言書(特に公正証書遺言)を作成」しておくことを薦めます(もちろん、争いを避け、妻へ相続させたいと思うのであればですが)。

兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書の作成で、確実に妻へ相続させることができます。遺言があれば、不動産の相続登記も、他の相続人(兄弟姉妹等)の関与なしに(遺産分割協議をすることなく)することができます。遺言がない場合、法定相続分と異なる内容の相続登記をする場合、兄弟姉妹を含めた相続人全員で遺産分割協議をし、協議書に相続人全員、実印を押印し印鑑証明書を付けて相続登記をしなければならなくなります。

余談

韓国の民法では、上記のような例で、被相続人(死亡した人)に配偶者がいる場合、被相続人の兄弟姉妹は相続人としてでてきません。日本の民法では、そうなっていないため、これで相続争いが生じるケースがあります。

日本の民法は、相続につき、配偶者(夫や妻)以外は、できるだけ血族に相続させようとしています(血族主義)。

2、

「相続人がいない?」

配偶者には先立たれ、両親・祖父母(直系尊属)はすでに死亡しており、子供・孫(直系卑属)もいない場合、相続人は兄弟姉妹(もしくはその子)になります。

兄弟姉妹(もしくはその子)もいない(すでに死亡している)場合、相続人不存在となり、一定の手続を経て、遺産は国庫に帰属する可能性があります。

こういう場合も、遺言をしておけば、生前お世話になった人に遺産を譲渡(遺贈)することができます。

(兄弟姉妹の代襲相続は、その子(被相続人の甥、姪)までです)

3、

「せっかく遺言をしたのに?」

受遺者が、遺言者の死亡する以前に死亡したときは、遺言(遺贈)は、その効力を生じなくなります(原則にもどり、遺言者の法定相続人が相続することになる)ので、第二順位の受遺者を決めて遺言することもできます。このような遺言を補充遺言といいます。受遺者が高齢で、遺言者より先に死亡する可能性がある場合、検討する必要があります。