抹消登記の登記権利者についてメモ

手続法上の登記権利者とは、登記の実行により登記簿上利益を受ける者をいう。

1、所有権移転仮登記の抹消登記

仮登記義務者が原則、登記権利者となる。

仮登記後に、所有権が移転し、移転登記もされている場合、仮登記義務者であった者でも、

その者から所有権移転登記を受けた者(現在の所有権登記名義人)でも、どちらでも登記権利者となれる(利害関係人として)。

現在の所有権登記名義人が原則的な登記権利者だと思う。上記の例で仮登記義務者であった者については、疑義あり。取引に際し、移転と仮登記抹消の申請代理人が異なる場合、登記の後先により、登記簿上の権利者が異なってくるケースがあるため、どうなのか気になるところである。

仮登記後、抵当権設定登記を受けた者等も登記権利者となりうる(利害関係人として)。

2、抵当権の抹消登記

現在の所有権登記名義人が登記権利者となる(前登記名義人では不可)。

後順位の担保権者も、登記権利者となれる(先例)。

(後順位抵当権者は、先順位抵当権の消滅による抹消登記につき、登記権利者の関係に立つべく、その抹消を申請することができる)

抵当権設定者の死亡後に抵当権が消滅したことによる抵当権抹消の登記の申請は、右設定者について相続登記を経ることなく相続人の一人がその全員のために登記義務者と共同してすることができるが、申請書には登記権利者の表示として相続人全員の住所・氏名を記載することを要する(登記研究)。ただし、有力反対意見(相続登記を経てからすべきだ)あり。

嘱託登記

嘱託登記で、官公署が登記義務者である場合、登記権利者の表示はどうなるのか。原則、登記名義人の表示と同じである必要があると思われるが、官公署が把握していない権利移転があったり、名義人の住所変更等があり、その登記がされている場合、嘱託書に記載されている登記権利者と、登記名義人が異なってくるケースが出てくる。裁判所からの差押え登記抹消の場合は、差押え当時の権利の登記名義人でよいという先例があるが、滞納処分による差押えの場合や、その他の場合どうなるのか。取引に際し、嘱託による登記がからんでくると権利者の表示が登記名義人と異なってくるケースが生じる(登記の後先によって)。嘱託による場合は、形式が緩和され、登記の前後により権利者が確認できる場合はOKとされるのか?

抵当権抹消(義務者 財務省)

抵当権設定者が登記権利者。現在の所有権登記名義人?

強制競売に関する

民事執行法(裁判所)による、差押えの登記後に第三者のために差押にかかる権利の移転登記がされている場合であっても、取下又は取消決定による差押えの登記の抹消の嘱託書に記載すべき登記権利者は、差押の登記当時の権利の登記名義人である。

滞納処分に関する

税務署・国税局(財務省)による、差押えの登記後に第三者のために差押にかかる権利の移転登記がされている場合の、差押えの登記の抹消の嘱託書に記載すべき登記権利者は?。原則、所有権登記名義人。差押え登記当時の権利の登記名義人は?

登記義務者単独申請(可)の場合、登記権利者の表示は、「登記簿上の表示と合致していなければならない」というのは、「前後で一致していれば良い」という具合に緩和してほしい。

抵当権抹消などのように共同申請の場合はそうはいかないだろうが。

 

その他

国税局長の嘱託によってされた差押登記につき、その抹消の登記を管下税務署長の嘱託によって行うことができる。