事例1)有限会社シホウ
取締役 A
定款「取締役は株主総会で選任、取締役が2名以上ある場合は、株主総会の決議で代表取締役1名を選定する」
取締役 Aが辞任
取締役 Bが選任され就任する
株主総会開催・株主総会議事録
内容 Aより取締役辞任の申し出があったので、取締役選任が必要、Bを取締役に選任
議長 A
出席取締役 B(新任)
議長及び出席取締役が記名押印
議長 A 押印(法務局への届出印)
出席取締役 B 押印(認印でもかまわない−Aが届出印を押印しているから。ただし、就任承諾書を兼ねる場合は実印の押印が必要)
または、AとB、両方、個人の実印を押印し、印鑑証明書を添付してもよい
新任だからBの就任承諾書が必要(議事録に実印が押印してあり、就任承諾した旨の記載が議事録の記載を援用できる)
新任だからBの印鑑証明書が必要
<添付書類>
株主総会議事録
辞任届
就任承諾書
取締役Bの印鑑証明書
委任状
Bの印鑑届(Bの個人の印鑑証明書添付。この印鑑証明書は申請書添付のもの援用可、原本還付可)
事例2)有限会社ショシ
取締役 A
取締役 B
取締役 C
代表取締役 A
定款「取締役は株主総会で選任、取締役が2名以上ある場合は、株主総会の決議で代表取締役1名を選定する」
取締役Aが取締役及び代表取締役の地位を辞任
取締役Bが代表取締役に選任され就任する
取締役Aが辞任した場合、他の取締役BとCの代表権が復活するか?
原則、復活しない
ただし、上記のような定款規定で、取締役が1名になった場合は復活すると思われる(定款の趣旨より)*復活しないという考え方あり
この場合は、まだ、2名存在するので、定款は「そのうちから、代表取締役を選定しなさい」という趣旨だから、
BとCの代表権は復活しないと考える
したがって、次の代表取締役が選定されるまでは、辞任した代表取締役は権利義務承継する
株主総会開催・株主総会議事録
内容 Aより取締役及び代表取締役の辞任の申し出があったので、代表取締役選任が必要、Bを代表取締役に選任
議長 A
出席取締役 B
(取締役 Cは欠席)
議長及び出席取締役が記名押印
議長 A 押印(法務局への届出印)
出席取締役 B 押印(認印でもかまわない−Aが届出印を押印しているから)
または、AとB、両方、個人の実印を押印し、印鑑証明書を添付してもよい
就任承諾は不要(すでに取締役としては就任承諾しているから)
Bの印鑑証明書は不要
<添付書類>
株主総会議事録
辞任届
委任状
Bの印鑑届(Bの個人の印鑑証明書添付、この印鑑証明書は原本還付可)
事例3)有限会社サカイ
取締役 A
取締役 B
代表取締役 A
定款「取締役2名以内を置き、取締役の互選により代表取締役1名を置く」
取締役Aが取締役及び代表取締役の地位を辞任
取締役Aが辞任した場合、他の取締役Bの代表権が復活するか?
この定款は、取締役は1名もしくは2名置き、2名置いた場合は互選で代表者を選ぶが、1名の場合は当然その者が代表者となるという趣旨と解される。したがって、定款の趣旨よりBが当然に代表者となりえる
定款を添付
(定款の規定により異なるので、代表権付与の決議をしておいた方が無難か)
事例4)有限会社ジムショ
取締役 A
取締役 B
代表取締役 A
取締役Aが取締役及び代表取締役の地位を辞任
取締役Bの代表権が当然復活するかどうかは、定款の規定により異なるため、株主総会でBに代表権付与の決議をする
株主総会議事録
内容 Aより取締役及び代表取締役の辞任の申し出があったので、Bに代表権を付与する
議長 A
出席取締役 B
議長及び出席取締役が記名押印
議長 A 押印(法務局への届出印)
出席取締役 B 押印(認印でもかまわない−Aが届出印を押印しているから)
就任承諾は不要(すでに取締役としては就任承諾しているから)
Bの印鑑証明書は不要
<添付書類>
株主総会議事録(代表権付与のもの)
辞任届
委任状
Bの印鑑届(Bの個人の印鑑証明書添付、この印鑑証明書は原本還付可)
事例5)有限会社ゴオウ
取締役 A
取締役 B
代表取締役 A
代表取締役Aが代表取締役の地位のみを辞任
@ この代表取締役が株主総会(社員総会)で選任されている場合、辞任につき株主総会の承認決議が必要
(この代表取締役が設立時定款で当初の代表取締役として選任されている場合も同様か?)
A この代表取締役が、定款の規定に基づき取締役の互選で選任されている場合、株主総会の承認なく辞任可能
定款で「取締役2名以上置いた場合は代表取締役1名を置き、取締役の互選によって定めるものとする」とあり、
取締役AとBの互選によりBを代表取締役に選任
<添付書類>
株主総会議事録(辞任の承認決議)
辞任届(不要?)
取締役の互選書
就任承諾書(互選だから必要)
定款(互選だから必要)
委任状
Bの印鑑届(Bの個人の印鑑証明書添付、この印鑑証明書は原本還付可)
事例6)有限会社ゴオウ2
取締役 A
取締役 B
代表取締役 A
取締役Bが辞任
原則、取締役Bの辞任の登記と取締役が1名となったため代表取締役Aの氏名抹消の登記をする
その後、取締役Cが選任され、代表取締役Aが選任される
上記、取締役Bの辞任の登記と取締役が1名となったため代表取締役の氏名抹消の登記をし、
Cの就任登記、代表取締役Aの就任登記をする
例外、代表取締役Aが、取締役の互選で選ばれており(地位分離)、取締役の定員が2名以上の場合は、
BはCが就任するまでは権利義務承継するので取締役1名になることがなく、また互選で地位が分離しているため
(代表取締役の地位が維持されている)、
代表取締役Aの氏名抹消の登記は不要(代表取締役Aの選任も不要)で、Bの退任登記とCの就任登記をすればよい
また、定員が1名以上であっても、Bが株主総会終結をもって辞任する場合で、その株主総会でCが選任されている場合
(平取として即時就任)、取締役が1名になる瞬間がないので、代表取締役Aの氏名抹消の登記は不要
メルクマールは、互選(地位分離)と取締役1名になる瞬間があるかないか かな?(この辺はむずかしい)
CがBの後任の平取締役として選任されているのであれば、代表取締役の氏名抹消の登記をするのはおかしいように思う
定款の添付は不要
(定款の添付が不要であれば登記官には定款内容がわからないから、代表取締役の氏名抹消の登記をせずBの退任登記とCの就任登記のみを申請した場合、補正・却下はなく登記はされるのであろう)
注)
特例有限会社の場合、株式会社と異なり、取締役及び監査役の住所・氏名、代表取締役の氏名が登記事項となっており、代表取締役の氏名を登記する場合は、代表しない取締役がある場合に限られます。
株式会社の場合は、取締役及び監査役の氏名、代表取締役の住所・氏名が登記事項となっており、取締役が1名でも、その人につき、別に代表取締役として住所・氏名が登記されます。株式会社の場合は、代表者につき、代表取締役の登記が必須ですので、(取締役会がなく)取締役の代表権が復活したような場合、「代表権付与」の登記が必要となります(もっとも、取締役が1名となり、定款の規定(取締役が2名以上ある場合は、株主総会の決議で代表取締役1名を選定する)により代表権が復活するような場合でも、あらためて株主総会決議でその一人を代表取締役に選任することは妨げられず、むしろきちんと選任し就任承諾まで得ておいた方が、定款の添付を要せず、疑義がないようにも思われます。ただ、この場合、株主総会議事録や就任承諾書に係る印鑑証明の問題が生じると思われます)。