阪神・淡路大震災により被災した建物に代わる建物を取得する場合の登録免許税の特例(平成7年法律第48号第37条)について

これは、阪神・淡路大震災により被災した建物に代わる建物の所有権保存登記・所有権移転登記・抵当権設定登記を受ける場合に登録免許税を免税とするというものであるが、申請人がこれを知らずに通常の登録免許税を納付してしまうケースがあるようです。原則、納めた登録免許税の返還は認められないということで、注意をする必要があります。

阪神淡路大震災により滅失した建物又は当該震災により損壊したため取り壊した建物(被災建物)に代わるものとして新築又は取得した建物が対象。

1、所有権保存・所有権移転

阪神・淡路大震災(以下「大震災」といいます)により住宅、工場又は事務所等の建物に被害を受けた方が新築又は取得した建物で一定のものの所有権の保存又は移転の登記で、平成7年4月1日から平成17年3月31日までの間に行うものについては、登録免許税が免税とされます。

<免税対象者>

・大震災により所有する建物に被害を受けた個人又は法人(以下「建物被災者」といいます)で、建物に被害を受けた者であることについての当該建物の所在地の市町村長の証明書(以下「建物被災証明書」といいます)の交付を受けた者

・建物被災者である個人が死亡している場合におけるその相続人

・建物被災者である法人が合併により消滅した場合における当該合併にかかる合併法人

<免税対象建物> 代替建物

・災害救助法適用地域内に所在する建物(建物の種類等は問わない)

・災害救助法適用地域外に所在する建物で、個人が新築又は取得した住宅用の建物(登記の表題部に記載された主たる建物の種類が、「居宅」「寄宿舎」又は「共同住宅」(社宅などこれらの種類に類するもの及びこれらの種類以外の種類が共に記載されているものを含む)とされているものに限る)。

・災害救助法適用地域外に所在する建物で、大震災により滅失した建物又は損壊したため取り壊した建物に代わるものとして新築又は取得をするものであることにつき、その者が行う事業のうち主たるものを所管する主務大臣の証明を受けたもの

災害救助法適用地域

神戸市、尼崎市、明石市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、川西市、三木市、洲本市、豊中市、大阪市、池田市、吹田市、箕面市、津名郡津名町、淡路町、北淡町、一宮町、五色町、東浦町、三原郡西淡町、三原町、緑町、南淡町

<免税手続>

免税措置の適用を受けるためには、登記の申請書に、建物被災証明書を添付しなければなりません。また、上記所管する主務大臣の証明をうけた建物については、主務大臣の証明書を添付する必要があります。

なお、建物被災者の相続人又は合併法人が免税措置の適用を受けようとする場合には、上記の証明書のほか、その相続人の戸籍謄本又はその合併法人の登記簿謄本など免税対象者に該当することを証する書類を添付する必要があります(相続人・合併法人が自ら被災証明を申請し、その名で証明書を取得している場合は、不要)。

「建物被災証明書」とは、建物被災者(相続人・合併法人を含む)の氏名又は名称及び住所又は本店若しくは主たる事務所の所在地並びに当該建物の所在地の記載があるものをいい、被災した建物の所在地の市町村に交付申請を行います。

各市町村で取扱がちがうようなので、申請の際には、問い合わせて下さい。被災の届出をしている場合は、とくに書類は要らないようですが、届出の際の所有者と、申請の際の所有者がちがう場合は、所有者であることを証する登記簿謄本等を要求される場合があります。

災害救助法適用地域外に所在する建物(個人の住宅用建物以外のもの)で被災した建物に代替するものである旨を証する「主務大臣の証明」は、建物被災者が行う事業のうち主たるものを所管する省庁に、建物被災証明書の写し及び登記を受ける建物の詳細を明らかにする書類を添付して、交付申請を行います。

2、抵当権設定

上記の所有権保存・所有権移転の登記の免税の特例の適用を受ける建物の新築又は取得のための資金の貸付け(貸付けにかかる債務の保証を含む)が行われるとき又は賦払の方法によりその対価の支払いが行われるときにおける、その貸付けにかかる債権(当該保証にかかる求償権を含む)又はその賦払金にかかる債権、を担保するために受ける当該建物を目的とする抵当権設定の登記については、当該建物の所有権の保存又は移転の登記と同時に受けるものに限り、登録免許税が免税とされます。「同時に受ける」とは、適用を受ける建物の所有権保存又は移転の登記と連続して(連件で)抵当権の設定登記を申請することをいいます。

追加

阪神淡路大震災により滅失した区分所有建物又は損壊したため取壊した区分所有建物(以下「滅失建物等」という)の区分所有者であった者で、その敷地の用に供されていた土地に関する権利を有していた者が、当該権利を第三者に譲渡し、譲渡を受けた第三者等がその土地の上に新たな区分所有建物を新築した場合において、滅失建物等の区分所有者であった者が新規建物の区分所有権とともにその敷地の用に供されている土地に関する権利を取得した時は、その土地に関する権利の取得に係る所有権又は地上権若しくは賃借権の移転の登記に係る登録免許税が免除されます。(平成17年3月31日まで)

例えば、Aさんが、マンション101号室を所有していたところ、そのマンションが震災で、全壊もしくは損壊して取壊すことになってしまった。そこで、その敷地をB建設会社に売却し、同社がその敷地の上に区分所有建物を新築し(建替え)、その新築したマンションの201号室を、Aさんが取得した場合、その取得したマンションについては、建物の登記のみならず、敷地の移転登記についても登録免許税が免除されることになります。

追加(平成14年5月)

この特例が適用されるためには、被災建物のある役所で発行される被災証明書(阪神・淡路大震災に係る被災証明書)が必要となりますが、この特例ができた当初は、比較的安易に証明がなされ、厳密には当てはまらないケースでも、非課税の適用を受けたケースがあるようです。最近(平成14年)は、証明が厳しくなっているようで、震災により、所有建物に一定の被害は受けたが、住むには支障がなく、取壊し予定のない現在存在している建物については、証明されません(と思われます?)。

(役所で、免税のための被災証明書が取得でき、登記申請でそれを添付すれば、法務局の方では書類審査のみですので免税となります)

阪神淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律 37条には、「阪神・淡路大震災の被災者であって政令で定める者又はその者の相続人その他の政令で定める者が阪神淡路大震災により滅失した建物又は当該震災により損壊したため取り壊した建物に代わるものとして新築又は取得した建物(以下省略)」とあります。

司法書士として、取引の前、買主に、「震災で、所有していた建物に被害を受けたことがありますか?ご両親が所有していた建物で、被害を受け、震災後亡くなられていることはないですか?」など、聞く必要がある。