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・平成181月「印鑑について(ハンコ社会「日本」)」clickD

・平成177月「不動産担保(リバースモーゲージ等)」clickC

・平成172月「不動産登記法の改正で権利証の保管ストレスがなくなる??」clickB

・平成1610月「相続についてのワンポイント(子供がいない夫婦)」clickA

甲子園不動産コンサルティング協議会

 

平成181

印鑑について(ハンコ社会「日本」)

日本では、役所への印鑑登録制度があり、印鑑がさまざまな契約の際、重要な役割をはたします。不動産の売買、賃貸借、お金の貸し借り、住宅ローンの設定等、重要な契約をする場合、必ず契約書を作成し、そこに署名・押印が求められ、多くの場合、登録された実印での押印が求められます。署名は、記名押印(例えば名前はワープロで印字されており、そこに押印するだけ)でも通用しますので、その場合、押印がポイントになります。

他人が勝手に本人の印鑑を使って契約をしてしまった場合どうなるか。「おれの印鑑が押されているけど、そんな契約した覚えはないよ」というのが通用するかということです。

もし、その契約書について争いとなった場合、裁判所は、その争いとなっている契約書について、どのように判断するのでしょうか。

実は、裁判実務では、署名とともに「押印」が非常に重要な判断材料とされています。

その契約書に印が押してある場合、その押印されている印鑑が、本人のものであれば、「本人が自分の意思で押印した」と推定されます。そして、さらに、本人が自分の意思で押印したのであれば、その契約書に書いてあることは、本人の意思に基づくものであると推定されてしまうのです。

したがって、他人が押印した場合でも、その印鑑が本人のものであれば、なんと「その契約書の内容は、本人の意思に基づくものである」というところまで推定されてしまうということになります。その印鑑が実印であれば、印鑑証明書により簡単に本人の印鑑であるということは立証できます。あくまで推定ですので、反対の証拠等を出せば、くつがえることはありますが、前記の「おれの印鑑が押されているけど、そんな契約した覚えはないよ」という主張はそう簡単には認められないということです。

このように日本では印鑑というものは非常に重要で恐ろしいものであるということになります。他人に印鑑を貸すというのはもちろん、よくわからず安易に押印すると、とんでもないトラブルにまきこまれる恐れがあるので注意が必要です。

平成177

「不動産担保(リバースモーゲージ等)」

不動産を担保にお金を借りる。

典型的なものとして、「住宅ローン」があります。自宅(土地・建物)購入のため、その購入資金を金融機関から借りるのに、その自宅を担保にする。自宅には「抵当権」が設定され、住宅金融公庫若しくは銀行等の保証会社などが抵当権者となり、その旨の登記がなされます。

また、不動産を担保にして事業資金を借りる場合があります。不動産には、住宅ローンと同様、「抵当権」が設定される場合、若しくは「根抵当権」が設定される場合があります。「根抵当権」という担保は、1回限りのお金の借入ではなく、今後、何度か借入がある場合(事業の場合、繰返し借入をする場合が多いですので)、その都度、抵当権を設定するのは煩雑であるということで、極度額(金額の上限)・債権の範囲等を決め、その範囲内で、何度借入しても、その不動産で担保されるようにしておくというものです。

生活資金を借入するのに不動産を担保にするというケースはあまりありません。

しかし、一般的に「リバースモーゲージ」と呼ばれるもので、老後の生活資金を借入するために、自宅を担保にするというものがあります。「リバースモーゲージ」と外来語で表されるので、複雑で理解しがたいイメージがありますが、仕組み自体はそんなにむずかしくはありません。「リバース」=「逆」、「モーゲージ」=「抵当」という意味で、逆ローンと言えます。どういうことかというと、自宅を担保にして、毎月一定額(老後の必要な生活資金)を死亡するまで借り続け、死亡したら、自宅を売却することにより、その借入れた合計額を一括返済するというものです。住宅ローンの場合は、借入れ、返済を続け、最後、借金がなくなる(晴れて担保のない自宅を取得する)となりますが、「リバースモーゲージ」の場合は、毎月借入れ続けるので、借金が増え続け、最後(死亡時)に、自宅を手放し、一括返済となります。ですから「リバース(逆)」と呼ばれています。

この制度は、高齢者の生活資金を融資するということで、福祉政策の一環として一部の自治体が行っており、また、国としても、低所得者に絞ったものを始めています(窓口は、地元市町村の社会福祉協議会)。今後は、銀行等も参入してくると思われます。核家族化が進み、将来の年金減少等で、老後の生活に不安をもっている人は多くいます。この制度は、不動産時価の下落や長寿による担保割れなど、いろいろな問題点(利用する場合でも、要件があり、事前費用が必要)をもっていますが、自宅を所有している人にとって、今後、その自宅を利用して、生活資金を確保する一手段となるかもしれません。担保としては、毎月一定額、繰返し借入れしますので、「根抵当権」など(その他、代物弁済予約・所有権移転請求権仮登記)が利用されると思われます。

平成172

「不動産登記法の改正で権利証の保管ストレスがなくなる??(新しい不動産登記法についての豆知識)」

不動産の権利証(所有権の登記済証)を盗まれたということで、顔を真っ青にして目に涙を浮かべ「不動産を取られました」と相談にこられる方がいます。このように、権利証の盗難を、あたかも不動産自体を取られたかのように心配する方がいます。権利証を紛失もしくは盗まれたからといって、所有者でなくなるわけではありませんので、そこまで過度に心配する必要はありません。権利証のみでその不動産を処分することはできず、また不動産の取引には、通常、仲介業者や司法書士が関与し、なんらかのかたちで本人確認をしますので、不動産の処分は、簡単にはできないようになっています。とは言っても権利証は大切で、唯一のものです(再発行はされません)ので、その保管するストレスは人によっては相当なものになると思います。

今年、37日施行の改正不動産登記法で、オンライン指定された法務局(順次拡大)に限ってですが、紙ベースでの権利証が廃止され、権利証に代わるものとして、数字とアルファベットの組み合わせである情報(登記識別情報といいます)が通知されるようになります。すなわち、従来の権利証(紙ベースで原本性があるもの)が発行されなくなるということです。登記識別情報(例えば「AASSKK1238L0」といったパスワードのようなもの)は、記号情報ですので、原本性がなく、紙ベースの権利証より保管が困難といわれています(情報は見られただけでも盗まれたと同じになる)。しかし、この登記識別情報については、不発行や失効制度が設けられており、「なくしてしまう」ことができます。権利証に代わるものとして設けられた登記識別情報ですが、それをなくしてしまえば、管理する必要がなくなります。盗まれても失効させれば安心です。3月施行後、オンライン指定庁で発行された登記識別情報は、管理するのが嫌だと思えば、不発行や失効制度を使いなくしてしまえば、その管理ストレスから解放されます。

ただ、この不発行や失効制度を使った場合、次、売却等、その不動産を処分するときは、その登記識別情報を提出できませんので、これも新しい不動産登記法で定められたものですが、「事前通知制度」というものが適用されるなど、厳格な手続で本人の意思確認がなされるということを申し添えておきます。

平成1610

「相続についてのワンポイント(子供がいない夫婦)−なぜ、甥姪が相続人に?」

子供がいない夫婦で、両親もすでに他界しており、夫婦水入らずの生活をしている人にとって、遺産相続には何の問題も起こらないと思いがちですが、法律(民法)では、相続人として、子供や孫(直系卑属といいます)がなく、両親等(直系尊属といいます)もいない場合、配偶者(妻又は夫)とともに、「兄弟姉妹」も相続人になるとなっています。

例えば、夫が死亡し、当然、配偶者の妻が遺産を相続するものであると思っていても、いざ遺産相続となると相続人として「夫の兄弟姉妹」がでてきて、もめることがあります。妻としては、夫の財産については内助の功などで貢献しており、子供がおらず、夫の財産はすべて相続すると思っていたところ、そういう訳にもいかないということになります。さらに、夫の兄弟姉妹がすでに死亡している場合は、なんと、その子供(甥、姪)が相続人としてでてきます。特に夫婦で暮らしていた自宅などの「不動産」のみが遺産の場合、金銭と異なり分けることが困難なため、争いとなる確率が高くなると思われます。

このような場合、妻へ相続させる旨の「遺言書(特に公正証書遺言)を作成」しておくことを薦めます(もちろん、妻へ相続させたいと思うのであればですが)。

兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書の作成で、確実に妻へ相続させることができます。遺言があれば、「不動産の相続登記」も、他の相続人(兄弟姉妹等)の関与なしにすることができます。

韓国の民法では、上記のような例で、被相続人(死亡した人)に配偶者がいる場合、被相続人の兄弟姉妹は相続人としてでてきません。日本の民法では、そうなっていないため、これで相続争いが生じるケースがあります。