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・司法書士が公証人に(平成17年6月1日) click9

・司法書士・弁理士等に弁護士業務を一部開放(政府の規制改革委員会の見解案)click8

・最高裁判所、特許訴訟迅速化検討(平成11年10月24日朝日新聞)click7

・破産者の免責確定前に給与差押、給与返還訴訟(平成11年5月18日日経新聞)click6

・時の流れか、判決文すべて横書きに(平成11年2月9日朝日新聞)click5

・システム金融役員らを起訴(平成11年2月3日朝日新聞)click4

・サービサー法施行(平成11年2月2日朝日新聞)click3

・抵当権者の物件明渡し請求、最高裁認める可能性(平成11年1月28日朝日新聞)click2

・成年後見制度要綱案決定(平成11年1月27日)click1

司法書士が公募で民間初の公証人に(京都の司法書士)

公証人の公募制導入後、初めての民間出身の公証人として、司法書士の加地誠氏が任命された。司法書士としての長年の実績が評価されたようだ。加地氏は京都府舞鶴市の舞鶴公証役場に勤務する。公証人は、裁判官や検察官出身が多く、その他、法曹資格はないが、それに準じる「特任公証人」というものがあり、検察庁、法務局、裁判所の事務官出身者で占められている。

朝日新聞に加地氏の言葉として「民間第一号として、信頼を失わないようにがんばりますわ」と載っていた。

政府の行政改革推進本部の規制改革委員会がまとめた「公的な業務独占の見直し」に関する見解案(平成11年11月24日日本経済新聞掲載)

・司法書士に簡易裁判所における通常訴訟、調停・和解事件の代理権を認めるべき

・司法書士に家事審判・家事調停における代理権を認めるべき

・司法書士に民事執行事件における代理権を認めるべき

・弁理士に特許訴訟(侵害訴訟)における代理権を認めるべき

・税理士に税務訴訟における出廷陳述権を認めるべき

弁護士が都市部に集中し、地域的偏在が生じているため、弁護士過疎の地域では、十分な法的サービスが受けられないという問題がある。司法書士は、現状、業務として裁判所への提出書類の作成ができるが、それを通じて本人訴訟を支援してきたという実績があり(弁護士過疎地域においては法的サービスの担い手として)、また不動産の相続登記に関連して、家庭裁判所への特別代理人の選任手続(未成年者の相続人のため)や遺言執行者の選任手続など―家事事件―は日常的にアドバイス・書類作成を行ってきたところである。今回の案は、これらの実績や国民の利便性などを考慮して、弁護士の独占業務である訴訟の代理などの一部を司法書士に開放するとしたものである。

弁護士会などでは、行政機関との関係(独立性がない)や能力の点で、反対しているようである。訴訟代理権の獲得は「代書」という性質からの脱却という点で画期的だと思うが、ただ、現状の「裁判所への提出書類の作成」という業務範囲でも十分対処できているという意見や、逆に地方裁判所以上の裁判所での活躍の場が狭くなるのではないかという危惧、簡易裁判所から控訴審へ移行した場合、代理権がなくなるという不自然さはどうするかなどの疑問点はある。

日本全国の3374市町村のうち、司法書士の事務所は2187市町村に設けられている(弁護士事務所は501市町村)。

特許訴訟を迅速化

特許の侵害による損害は、訴訟が長引けば損害が膨らんでいくため、産業界などから迅速化の声が高まっていた。最高裁判所は、特許訴訟について、迅速化の検討に入った。審理日程を事前に定めて裁判を計画的に進めることや、訴えを受付ける裁判所を絞ることなどを検討。

特許訴訟は、時間が勝負。日本の裁判は時間がかかるということで、わざわざ米国で提起するケースもあるようだ。

特許訴訟以外に、医療過誤訴訟や建築関連の訴訟については、それに関する専門的な知識が必要となるため、「鑑定」という証拠方法が用いられるが、現在、鑑定人が不足しており、またその鑑定には、時間がかかる場合が多く、裁判が長期化するケースが多い。

平成11年5月18日日経新聞より抜粋

破産者の免責確定前に給与差押、給与返還訴訟

自己破産の宣告から負債を免除する免責決定が確定するまでの間に、給与を差押さえられ経済的な立ち直りを妨げられたとして、大阪府内の運転手ら二人が消費者金融会社に給与の返還などを求めた訴訟で、裁判所は請求を棄却したが、現行破産法の限界を指摘し、「破産、免責手続を一体化した個人破産の法律が早期に制定されるよう望む」と異例の言及をした。

裁判所に自己破産の申立をして、債務者が支払不能の状態であると認められれば、破産が宣告される。そして債務者の資産が少なく(おおむね50万円以下)、破産手続の費用すらまかなえず、清算する意味がないときは、同時廃止決定がなされ、破産手続は終了。そして、次の手続である免責の申立をすることになる。(通常、同時廃止の決定が出たときに免責の申立をする)この免責が認められ、免責許可決定が出てはじめて債務から解放されるということになる。

自己破産の申立をした場合、サラ金業者などは正当な理由なく取立てはできなくなるが、これは裁判外での取立てのことで、裁判上の取立て−訴え提起、強制執行などは、免責許可決定が出るまで特に禁止されていないということで、できてしまうというのが現状である。「破産の申立をするような人から取立てができるの?」ということであるが、問題となるのが給料債権である。なんとか立ち直りのために破産・免責の手続を進めているのに、その間に債権者が、訴え提起をし、そして判決を取り(または公正証書を利用して)、給料債権を差押さえてしまうという事例が増えている(全額差押さえられるというわけではない)。給料債権を差押さえられてしまうというのは債務者にとって非常に痛手となる。

これは、破産宣告がなされ免責決定が出るまでの期間が、半年から1年以上あるため、こういうことが現状可能となっている。

平成11年2月9日朝日新聞より抜粋

時の流れか、判決文すべて横書きに

21世紀から判決文の体裁が変わります。国際化やOA化などの流れを受けて、最高裁は、判決文や訴状、準備書面、供述調書など裁判で取扱う文書を2001年1月から一斉にA4判横書きとする方針を決めた。A4判の導入について、最高裁は「社会全体としてA4判横書きが標準規格化してきた。横書きで書証を提出する裁判の当事者も増えてきており、国民に利用しやすい裁判をめざす試みの1つとして取組むことにした」と説明する。

訴状や判決文は現在、B4サイズの用紙に縦書きし、それを二つ折りにしてB5サイズにしているものが多いが、簡易裁判所での支払督促や強制執行の申立書などは、B5サイズの用紙(またはB4の二つ折り)を縦長に使用して(縦置き)横書きするというものが採用されていたり、破産の申立書でB5サイズ縦置き・横書きを採用するところが増えてきており、また家事審判(家庭裁判所)では、B5サイズ横置き・横書き(またはB4サイズ縦置き・横書き−二つ折りにする)ということで、現状、各裁判所で統一されていない。もっとも用紙サイズが多少違うからといって、裁判所は受付けないというわけではなく、その辺りは柔軟に対応しているようである(国民の裁判を受ける権利からいって当然か)。

(登記申請書もコンピュータ化が進む中、横書きを検討してほしいところである−個人的な要望(私は、書類作成にワードを使用しており、横書きで作成し、それを印刷の段階で縦書きに直して印字する)。コンピュータ化されている場合は、横書きの申請書の方が法務局側も便利だと思うのだが)

平成11年2月3日朝日新聞より抜粋

システム金融役員らを起訴

顧客データを共有するシステム金融業者が超高金利による融資を続け、中小・零細企業を多重債務に追い込んだとされる事件で、大阪地検は2日、金融会社「北洋リース」役員2名を出資法違反で大阪地検に起訴し、事件への関与が低いとして、同社の男性社員を起訴猶予処分とした。

システム金融というのは、明確な定義があるわけではないが、おおむね、集めた顧客データにもとづき、ダイレクトメールなどで融資をもちかけ、手形を振出すかわりに、指定銀行への振込みという形で、融資をする(かなりの高金利―出資法違反)というものである。その特徴は、郵送やFAXでのやりとりになるため、相手(システム金融業者)の顔が見えない、手形を利用するので、実質、取立ては当座預金のある金融機関がすることになり、借り手は、手形が不渡りにならないようになんとか資金繰りをつけようとするため、回収が比較的しやすい、などがあげられる。また、手形決済の日などの情報が他のシステム金融業者(同グループ内)に流され、骨までしゃぶりつくされてしまう。システム金融に手を出した者は、短期間で破産に追いやられてしまうと言われている。

平成11年2月2日朝日新聞より抜粋

サービサー法施行、「借金取立て」弁護士以外も可

貸金の回収代行業を初めて弁護士以外に認める「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」が1日、施行された。景気の向上には、ふくらんだ不良債権の処理が不可欠」と業務を民間業者に解禁した。「借金取立て」業に暴力団が入り込まないよう、開業には5億円以上の資本金と法相の許可を必要とする。これまで「業界」とは無縁だった法務省が今回、初めて許認可権をもつことになる。法律は、金融再生の関連法の1つとして昨年10月に成立した。新たに認められる債権回収会社(サービサー)は、銀行などから委託を受けたり、債権を買取ったりして回収にあたる。サービサーの許可に当たっては、取締役の中に必ず弁護士を参加させ、内部から監督させることを条件にした。「悪徳弁護士」は排除するよう、法務省は許可前に弁護士会に対して素行を照会する。警察も必要に応じ立ち入り検査でき、「おどし」「すかし」の取立てがあれば、業務の取消の対象になる。

弁護士法72条で、弁護士でない者は、訴訟事件等その他の法律事務の取扱を業とすることができないとなっている。大量の不良債権の処理を、迅速に行うためには、それ専門の会社が必要であるということで、この法律が成立した。

この話題とは関係ないが、司法書士の業務に「裁判所へ提出する書類の作成」というものがあるが、弁護士法72条は、それと関連して弁護士と司法書士の業務範囲についてよく取上げられる条文である。司法書士が裁判業務にどこまでたずさわれるのか。司法書士法10条には、「司法書士は、その業務の範囲を越えて他人間の訴訟その他の事件に関与してはならない」とある。しかし、書類の作成の前段階においてコンサルタント的なものは当然必要となり、また書類の作成で終りということはまれで、クライアントは、その後の段階でもアドバイスを求めてくる。足かせをされての業務ということになる。

平成11年1月28日朝日新聞より抜粋

抵当権者の物件明渡し請求、最高裁認める可能性

土地や建物の抵当権者が直接、物件を不法占拠している人に明渡しを求めることができるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷は27日、審理を大法廷に回付することを決め、関係者に通知した。「第三者の不法占拠は抵当権者を害するものではなく、明渡しを求めることができない」とした1991年3月の最高裁判例が変更される可能性があり、結論次第では社会問題化している競売妨害などへの有効な「対抗策」となりうる。バブル経済の崩壊による不動産市況の低迷に伴い、競売事件が急増する一方で、暴力団関係者をはじめとする物件の占有者が短期賃貸借権の主張を乱用して居座り、買い手がつかないことが社会問題化した。このため民事執行法が改正されるなどして、競売妨害対策が進められてきたものの、学説の中では「手続を変えるだけでは限界があり、抵当権を根拠とした明け渡しなども認めていくべきだ」として、91年の最高裁判例を批判する見解も有力となっていた。

判例変更がおこなわれる場合は、大法廷での審理となるため、このような可能性を示唆した。不法占拠者に対して、「出て行け」といえるのは、原則所有者のみで、抵当権者は、いえないというのが最高裁の判例である。抵当権というものは、担保であり、その抵当目的物から優先的に弁済を受けることができるというのが主な効力であるため、このように消極的に考えられてきた。しかし、所有者と結託して競売妨害のため不法占拠する場合も多く、所有者に明渡し請求を期待できない以上、また実際、占拠されれば、買い手がつかないか、かなり安価での売却しか期待できなくなる(担保価値が下がる)のであるから、抵当権者に明渡し請求を認めてもいいかと思われる。

不法占拠者というものは、どのようなものか。

1例)債務を支払えなくなった場合、債権者(無担保)もしくは債権者がらみの暴力団員が債務者のところへやってきて担保物件について、短期賃借権の設定をせまり、そして、むりやり占拠してしまう(短期賃借権については抵当権より遅れるものでも、抵当権に対抗できるとされているが、競売妨害のための短期賃借権は本来の賃借権ではなく、このような場合は不法占拠となる)。もしそれで競売手続に移った場合、物件明細書に短期賃借権あり(正当なものかどうかも含めて)、現況調査報告書に第三者の占有ありということが記載され、買い手がつかないか、かなり安価での売却しか期待できなくなる。落札しても、その後「立退き交渉」や「引渡命令の申立」(引渡命令が出る場合はまだいい方で、でない場合は、裁判で明渡しの判決を取る必要がでてくる)が必要になってくるためである(占拠者にいくらか支払い出ていってもらうということになるのだが、その費用がばかにならない−占拠者はそれを期待して居座るのだが)。

抵当権者としては、競売手続前にそのような不法占拠者を排除しておきたいと考えても、できない状態であった。

追)平成11年11月24日、最高裁判所は「抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難な状態であれば、抵当権者は所有者の権利を代わりに行使して、(不法占拠者に対して)明け渡しを求めることができる」と判断。「請求できない」としていた、1991年の最高裁判例を変更した。

平成11年1月27日朝日新聞より抜粋

成年後見制度要綱案決定

法制審議会の民法部会は26日、現行の禁治産制度を抜本的に見直し、痴ほうや知的障害や精神的な障害がある人たちを法的に保護する「成年後見制度」の要綱案を正式にまとめた。暗い印象が伴う「禁治産者」「準禁治産者」という用語を民法からなくし、比較的軽い人にも後見役をつけられるようにする。また、判断力があるうちに自分で後見役を選べるようにし、氏名などが明らかとなることから制度の利用をためらわせている官報公告や戸籍への記載は廃止する。

要綱案は、「禁治産者」「準禁治産者」という用語を、それぞれ、「被後見人」「被保佐人」と改めた。さらに、それらより症状が軽い「被補助者」という新しい類型を設け、本人の同意を要件として、あらかじめ定める特定の行為に限り、後見役が代行したり本人の契約を後で取り消したりする権限を与える。

現行制度では、禁治産宣告などの宣告を受けた本人に配偶者がいる場合には自動的に後見役に充てられ、いなければ家裁が適任者を選ぶ。これに対して、要綱案では、前もって後見役を指名できる「任意後見」という制度が打ち出され、依頼したい相手と後見内容を定め、公正証書で契約を結んでおく仕組みが示された。

成年後見制度が必要とされるようなった社会的背景の一つに高齢社会の到来があげられる。痴ほうなど意思能力に問題のある人が増えてくると、その人たちをサポートする社会的な仕組みが必要とされるようになる。

現行の(準)禁治産制度については、問題点が多々あり、例えば、禁治産制度は、本人を保護するための制度という建前であっても、実態は、後見人の権限を利用して、後見人の利益のために利用される場合がある。その人の土地を売りたいと考えた人が、禁治産宣告をして後見人となり、土地を売り、そのお金を後見人が使ってしまう。後見人は配偶者がいない場合その他の親族がなるが、親族間の財産争いの道具に使われたりするケースもある。現行は、能力がなくなったら、誰かが家庭裁判所に申請して裁判所が後見人を選任する仕組みしかないが、「任意後見」というのは、痴ほうになる前に本人がこの人に頼むという契約をし、そして能力が落ちてきたら事前に本人の意図どおりの後見をしてもらうというものである。これは、自己決定権の尊重という理念からでてきた制度である。