朝日新聞(平成101122日)抜粋

道路が消えた

大阪府河内長野市で4年前、10戸の建売住宅が売り出された。約3000万円〜4000万円という手ごろな価格もあってすぐに完売。ところが、まもなく分譲業者が市道から住宅地に通じる幅5mの進入路の撤去を告げてきた。

「もともと工事用の仮設道路で、完成後は地主に返す約束になっていたと」という。

残されるのは、軽乗用車が通るのがやっとという狭い道だけ。資産価値が下がったと怒った住民が業者を相手取って損害賠償訴訟を起こす準備を始めたところ、意外な事実が明らかになった。

住民はまず、住宅地の建築確認申請を調べた。驚いたことに、住宅地内を通る道は、行政の道路指定などを受けておらず、法律上は道路ではなかった。建築基準法は、1戸建ての場合、敷地が2m以上道路に接していることを義務づけている。この結果、10戸中8戸が違法建築となってしまった。

なぜ、建築時に市の審査を通ったのか。そのからくりは、パズルのような敷地の組み合わせにあった。「違法」の8戸の敷地は、北側5戸分と南側3戸分に分かれた「長屋」として申請されていた。「長屋」の場合、一部でも道路に2m以上接していれば、敷地内に通路を確保することで合法になる。業者は許可を得た後、1戸建ての敷地として造成したのだった。

9月に私道新設で和解。