九谷焼赤絵・・・福島武山先生


個展会場での武山先生

 赤絵とは?

 簡単にいうと、赤い色調を基調とした磁器(焼き物)のことです。12世紀頃中国ではじめられたと考えられています。15世紀ころに、中国から日本に伝わり、九州で作られるようになりました。最初に作ったのは、有田の酒井田柿右衛門です。それ以降、佐賀県鍋島藩では、藩の御用窯に指定するなど、盛んになりました。
 17世紀には京都に伝わり、野々村仁清(にんせい)により、茶道具として赤絵が完成されはじめました。この時代の九谷を古九谷(こくたに)といいます。 
 19世紀になると、大聖寺藩(石川県)では産業奨励、失業者救済の目的で藩営の春日山窯を開設しました。この藩窯は10年くらいで廃窯になりましたが、これが現在の九谷陶業の源となりました。
 春日山窯の開窯後に民窯の吉田屋窯や若杉窯などが、九谷村に開かれ、江戸から明治にかけて多くの民窯が開設されました。この時代の九谷焼きは、古九谷の再興を願って開かれたので、再興九谷(さいこうくたに)とよばれています。
 現在では、九谷赤江の絵付けができる人は限られてしまいました。福島武山先生の絵付けを見せて頂いたときには、感動し、即、大ファンになってしまいました。

 

 福島武山先生との出会い

 今から5年前の1月のことでした。休日にデパートに行き、何気なく画廊に入りました。画廊では「九谷焼 福島武山 赤絵展」が開催されていました。私は、使うための陶磁器が大好きなので中を覗いてみたら、武山先生がいらっしゃいました。先生から九谷赤絵のお話などを伺っているうちに、絵付けを見せてくれることになりました。
 テーブルに向かい合って座り、目の前で私一人のために、白い皿に絵付けをしてくれました。下書きもないのに、同じ文様を寸分違わずスラスラと描くんですから、びっくりしました。今まで私の中にはなかった世界でした。それは感動しますよ。
 
 武山先生は独学で絵付けの勉強をしたそうです。最初は絵の具の溶き方もままならず試行錯誤を繰り返したそうです。細かい文様なので、筆のことを聞いたら、面相筆の毛を抜いてさらに細くして使用しているそうです。あまりにも細かく、じーっと座って絵付けをするので、根気がない人が多い時勢で、弟子が育たないのが悩みの種だそうです。
 九谷赤絵の知識を得たので、これを頭にいれてもう一度作品を鑑賞することにしました。今度は武山先生の解説付きの鑑賞です。 大きな壷の前に来たときに、武山先生はにこにこして「これ、うちのビーグルなんだよ」と。南蛮人の子供とビーグルが遊んでいる図柄の壷でした。骨董が好きで、古伊万里など普段使いにしている私でも、ビーグルの図柄は見たことありません。犬といえば、日本犬の子犬や狆が主流ですよね。花鳥風月にこだわらず、さっすがー、斬新、かつ、遊び心がいっぱい。またまた好感度がアップしました。

小人文壷 小人文壷の拡大・ビーグル 南蛮手花瓶 南蛮手花瓶の拡大・狆


 

蓋のモデルの珪太郎  phot井川

 香炉のふた
 

 展示作品を見て回っていたら、ふっくらした香炉が気になりました。日頃陶磁器を見るときは、何に使うか?と考えてしまい、鑑賞することは全く考えていません。これに、イチゴやサクランボウを盛ったら美味しそうだ、という考えのもとに古伊万里の杯洗を購入したりします。
 いつも、アロマセラピー代わりに香木を焚いてリラクゼーションをはかっています。展示作品の香炉はお茶道具の飾り香炉でした。使ってみたくなりました。香木を薫蒸すると火が消えてしまいそうな、小さな空気穴のある蓋でした。悩んでいたら、武山先生が、「別蓋を作りましょう」と提案してくれました。別蓋には、私の大好きな猫を描いてくれるとのことで、天にも昇る思いでした。
 できあがった蓋には、伝統工芸の巨匠でも遊び心いっぱいの武山先生は、日本猫ではなく私の伴侶であるオリエンタル・ショート・ヘアーの珪太郎を描いてくれました。お宝ゲット!!

赤繪山水紋香炉 猫の文様の別蓋 つまみ部分虫眼鏡で確認 蓋の外縁


 魚籃観音(ぎょらんかんのん)

魚籃観音 画面左の拡大

 去年の2月に、また同じデパートで武山先生の個展が開かれました。今度は行く気満々で、会場に赴きました。先生とは4年ぶりの再開でしたが、お元気でした。今度は、芸術談義ではなくてスキーなど趣味の話で盛り上がりました。先生は、毎年何回も山スキーにでかけるそうです。座り続ける仕事ですもの、体を動かさなくってはねぇ。
  
 会場を見て周り、今回はお茶碗をゲットしました。お茶をやっているわけではないので、おひたしを入れるとおいしそうなお茶碗をみつけました。「これで、おひたしを食べるんだ」と話たら「えっ!!おひたしぃー?」と先生は目をシロクロさせていました。普段、夏茶碗でお新香を食べていますが、味は格別です。高麗古渡り井戸茶碗だって、李朝初期の侘(わび)や寂(さび)とは無縁の名もない陶工が作った庶民の雑器だったんですもの。別に変じゃあないと思うんだけど。たぶん、当時庶民は井戸茶碗にキムチやナムルやクッパを盛って食べていたのではないかしら?
 
 今年の春に、先生から「慈愛」という題の色紙をプレゼントしていただきました。魚籃観音(ぎょらんかんのん)の慈愛に満ちた眼差しが猫に注がれている構図です。魚籃観音は、漁船の航海安全・大漁祈願の、安産祈願等女性の悩みを取り除くとして、古来からあがめられてきました。魚籃(びく)を手に持ったり、大きな鯉に乗っている観音像などがあります。

古伊万里の杯洗
波乗りうさぎ
杯洗にいちご
美味しいですよ
夏茶碗にお新香
美味しいですよ

 猫好きの私にとって、またお宝が増えました。 猫たちの保護者として、また普段の食生活でお世話になっている魚籃観音に感謝しなければ・・・などと思いはじめました。


 5日前に、関東で武山先生の個展があったので訪問しました。大きな会場でしたが、細密な作品なのに迫力充分で、会場いっぱい自己主張していました。先生と近況を話し合いました。モデルになったビーグルは13才で亡なってしまったとのことでした。 先生の愛犬は小人文画の中では、生き生きといつまでも生き続けることでしょう。

 武山先生、これからも遊び心いっぱいで、人の心を揺さぶる作品を作り続けてください。


 ※注 ・・観音・・ 如来(さとりを開いた者)になるための修行段階の呼び名で、観音菩薩・地蔵菩薩・弥勒菩薩があり、観音菩薩は33ある。民衆を助ける役目があり、良く目にするのは千手観音など 

 ※注・・作品並びに画像は、福島武山先生のご厚意により掲載しています。