エキノコックス


 エキノコックスは『サナダムシ(条虫)』の仲間で、このエキノコックス属には4種(単包条虫、多包条虫、フォーゲル包条虫、ヤマネコ包条虫)ありますが、国内で現在話題にあがっているのは、このうち多包条虫という寄生虫です。

 エキノコックスは、本来、犬やキツネとネズミ類の間で伝播する寄生虫ですが、人へ感染すると重篤な疾病を引き起こします。幼虫は人や野ネズミの肝臓に寄生し、強い病原性を発揮します。成虫は野ネズミを補食した犬やキツネなどの小腸内に寄生し、ほとんど症状は示しません。

 エキノコックス症は感染症法という法律で指定されており、医師も獣医師も発見した場合届け出の義務があります。


 世界におけるエキノコックス症の患者数は推定10万〜30万人といわれています。国内でも、北海道を中心に毎年患者数が増加しています。これまで、主にキタキツネと野ネズミの間で伝播していたエキノコックスですが、最近、国内でも室内犬が感染していた例が報告されました。旅行で犬を連れて北海道に行く人が増えていることからも、感染地域はさらに南下する可能性があります。

※関東でも、「犬におけるエキノコックスの実態調査」(2005年・5月〜8月)において、2005年5月に保護された犬1頭からエキノコックスの虫卵が検出されました。関東はエキノコックスの流行地ではないので、感染を心配する必要はありませんが、この事は感染地域が本州へも広がる可能性があることを示しています。


※猫でも2007年8月に北海道でエキノコックス卵が国内初検出されました。 詳細は後述


 エキノコックスの成虫は体長1〜4mmで、多数の小さな鉤(カギ)と、4つの吸盤のある頭(頭節)と、それに続く3〜5つの節(片節)から成っています。この片節の中に卵(平均約300個)を作ります。
 口などはなく、体の表面から鉤と吸盤のある頭で小腸にくっつき、体表から栄養を吸収しています。 

《どうやって感染するの?》


《症状は?》

犬は感染していても元気にみえます

 犬、キツネなどの終宿主では小型の成虫が小腸粘膜に吸着するだけで、通常症状は示しません。しばしば通常の便とともに少量の血液を含んだ粘液を排泄することがあります。


《診断》
 糞便検査や、抗原検査で診断します。
 

《犬の治療と予防》
 主な発生地域である北海道では野ネズミを補食させない、野ネズミや、キタキツネの糞などに接触させないように、放し飼いをしないように指導されています。夜間の放し飼いで、エゾヤチネズミを補食したために感染したケースが判明しています。また、飼い犬が感染した場合は、飼い主へ感染する危険があるので獣医師による治療を完全にしてください。


《人に感染するとどうなるの?》
症状:
 人への感染はキツネや犬などから排泄された糞の中の虫卵に汚染された水、食べ物、ホコリなどを口から摂取したときに起こります。エキノコックス病巣の拡大は極めてゆっくりで、初期症状が現れるまで、成人では通常10年以上かかります。(子供は経過が早く、5年ほどで症状が出ると言われています。)
 長い間無症状の時期を経過すると、病気の進行につれてエキノコックスの病巣が大きくなり周囲の肝臓の機能が悪くなります。さらに進行すると肝機能不全に陥る事もあります。

診断:
 早期診断された患者の治癒率は非常に高く、一方エキノコックスがかなり発育した後の治療では治癒率が低いので、早期診断が重要となっています。
 血液検査、超音波診断、レントゲン検査、CTスキャン、などが診断に用いられます。
 ※感染のひろがっている北海道では、保健所において無料で住民検診が行われています。

《エキノコックス症を予防するために》
発生地域(北海道のみ:2004年末現在)
●ヒトの生活圏にキツネを近づけない(キツネの餌になるようなものを家の周りに置かない)
●キツネ・野良犬・野良猫にさわらない
●ペットに触ったら手を洗う
●井戸水・沢水を口にしない
●管理されていない生野菜や山野草を食べない
●ヒトは定期的に検査を受ける(特に森林や畑で作業する人)
●犬は野ネズミとの接触を断つために放し飼いにしない
●犬の散歩の時には、犬が野ネズミを補食しないように気を付ける
●犬の定期的な糞便検査や駆虫を行う
●転出者の犬は、糞便、シャンプー、駆虫を行う

その他の地域
●過去に発生地域にいた人、または発生地域由来の犬を飼った経験がある人は病院で検査を受ける
●発生地域に犬を連れて旅行したら、犬の糞便検査、シャンプー、駆虫を行う
●発生地域に隣接する地域では、犬の定期的な糞便検査を行う


参考資料:日本小動物獣医師会パンフレット、mvmNo48


エキノコックスについての詳しい情報は次のホームページでも入手できます
・厚生労働省  http://www.forth.go.jp/mhlw/animal/page_i/i04-2.html
・国立感染症研究所 http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/



※猫からエキノコックス卵(北海道で国内初検出)  2007年8月29日 神奈川新聞抜粋
 エキノコックス卵が国内で初めて、飼い猫の糞から検出されていたことが北海道大学の研究でわかった。エキノコックスは、北海道を中心に、ネズミなどを介してキツネや犬に広がっているが、猫は感染しにくいと考えられていた。
 研究によると、2006年12月に北海道内の飼い猫が獣医師にかかり、糞から見つかった卵をDNA検査してエキノコックスとわかった。この猫は放し飼いで、ネズミを捕まえている様子が目撃されていたことから、「ネズミを食べて感染したか、卵の含まれていたキツネの糞を食べ、感染せずに卵だけ排泄された可能性がある」としている。